循環器トライアルデータベース

EchoCRT
Echocardiography Guided Cardiac Resynchronization Therapy

目的 心臓再同期治療(CRT)はガイドラインで心電図上のQRS幅≧120msecの患者に推奨されている。しかし心不全患者の多くはQRS幅<120msecで,その約半数が心エコー上の心室同期不全を有することから,CRTが有効な可能性がある。複数の単施設研究で心エコー上の同期不全の評価によりCRT有効例を特定できると報告されてから,CRTはQRS幅が狭い患者にも頻繁に適応外使用されるようになった。その後,小規模なランダム化比較試験が行われたが結果は拮抗しており,信頼性の高いアウトカム試験を実施すべき段階にある。
心エコー上の心室同期不全を有するQRS幅が狭い症候性心不全患者において,CRTの死亡または心不全増悪に対する有効性と安全性を検討する。

有効性の一次エンドポイントは,全死亡,心不全の増悪による初回入院の複合エンドポイント。
安全性の一次エンドポイントは,CRT-D植込み例における6か月後のCRT-Dシステムに関連する合併症。
コメント QRS幅が広くはないが心エコー上心室同期不全がある例にもCRTが有効であれば,治療の選択肢が拡大することになる。この仮説を検討した本研究では,その妥当性が証明されなかった上に有害である可能性が示された。心エコーによる心室同期不全診断の妥当性の問題は残るが,Yancyらのeditorialにもあるように,CRTの適応決定にあたっては心電図のQRS幅が最も重要であり,QRS幅<120msecの例では心エコーで心室同期不全が認められてもCRTの適応としないほうがよい。(井上
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(北米,オーストラリア,イスラエル,欧州の115施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は19.4か月。
登録期間は2008年8月~’13年3月13日。
対象患者 809例。18歳以上,NYHA心機能分類III~IV度の心不全,EF≦35%,植込み型除細動器(ICD)の適応,ガイドライン推奨の内科治療で安定,QRS幅<130msec,左室拡張末期径≧55mm,心エコー上の左室同期不全の患者。
除外基準:急性非代償性心不全,強心薬の静注,過去1か月以内の心房細動,ペーシングを要する徐脈など。
■患者背景:平均年齢(CRT-on群57.6歳,CRT-off群58.3歳),男性(72.8%, 71.9%),各施設の評価によるQRS幅(105.0msec, 105.4msec),6分間歩行距離(328.3m, 322.6m),NYHA心機能分類III度(95.3%, 92.3%),BNP中央値(241pg/mL, 275pg/mL),座位血圧(117.5/72.6mmHg, 120.1/73.0mmHg),BMI(30.6kg/m², 31.2kg/m²),虚血性心筋症(54.0%, 53.0%),心筋梗塞既往*(41.3%, 38.3%),PCI歴*(38.9%, 32.3%),CABG歴*(19.1%, 18.3%),高血圧(65.5%, 67.4%),糖尿病(41.5%, 37.9%),EF(両群とも27.0%),左室拡張末期径(66.7mm, 66.1mm),服薬状況(ACE阻害薬/ARB:両群とも94.8%,アルドステロン拮抗薬:61.1%, 58.8%,β遮断薬:95.8%, 97.5%,利尿薬:85.6%, 86.9%)。
* >3か月前の既往。
治療法 全例に両室ペーシング機能付きICD(CRT-D)を植込み,ガイドラインに準じた薬物治療を調整後にランダム化。
CRT-on群(404例):CRT機能on。
CRT-off群(405例):CRT機能off。
CRT-D植込み不成功例にはICDを植込み,30日間の安全性解析のみを実施。
結果 独立データ安全性モニタリング委員会が無益と判断し,さらに害をもたらす可能性の懸念から中止を勧告し,試験は早期中止された。
追跡評価の遵守率は95.5%。
[一次エンドポイント]
有意な群間差を認めなかった(CRT-on群116例[28.7%] vs CRT-off群102例[25.2%]:ハザード比1.20;95%信頼区間0.92~1.57, p=0.15)。
[二次エンドポイント]
CRT-on群は全死亡(45例[11.1%] vs. 26例[6.4%]:1.81;1.11~2.93, p=0.02),心血管死(37例[9.2%] vs 17例[4.2%]:2.26;1.27~4.01, p=0.004)が多かった。
心不全増悪による入院(24.5% vs 22.2%, p=0.25),心血管イベントによる入院(36.4% vs 33.8%;p=0.36),心不全死(4.2% vs 2.5%, p=0.15)には差を認めなかった。
[安全性]
CRT-Dシステムに関連する重篤な合併症はCRT-on群のほうが有意に多かった(74件・55例[13.6%] vs 32件・29例[7.2%], p=0.003)。
デバイスまたは植込みに関連する重篤な有害事象はCRT-on群93件・70例,CRT-off群50件・45例であった(p=0.01)。
★結論★QRS幅<130msecの収縮性心不全患者において,CRT-onはCRT-offにくらべ全死亡または心不全の増悪による入院を抑制しなかった。全死亡はCRT-on群のほうが多かった。
ClinicalTrials. gov No.:NCT00683696
文献
  • [main]
  • Ruschitzka F et al for the EchoCRT study group: Cardiac-resynchronization therapy in heart failure with a narrow QRS complex. N Engl J Med. 2013; 369: 1395-405. (Epub 2013 Sep 2.) PubMed
    Yancy CW and McMurray JJ: ECG - Still the best for selecting patients for CRT. N Engl J Med. 2013; 369: 1463-4. (Epub 2013 Sep 2.) PubMed

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収載年月2013.09