循環器トライアルデータベース

ACCOAST
Comparison of Prasugrel at the Time of Percutaneous Coronary Intervention (PCI) or as Pretreatment at the Time of Diagnosis in Patients with Non-ST Elevation Myocardial Infarction

目的 抗血小板薬のP2Y12拮抗薬は非ST上昇型(NSTE)急性冠症候群に有効であるが,投与のタイミングの影響は明らかでない。現行のガイドラインはPCI施行予定のNSTE急性冠症候群患者に対しclopidogrelの前投与を推奨しているものの,ルーチンの前投与を支持しない報告もある。
PCI施行予定のNSTE急性冠症候群患者において,P2Y12拮抗薬prasugrelの前投与(血管造影前+PCI施行時)と非前投与(PCI施行時のみ)の有効性を比較する。

有効性の一次エンドポイントは,7日後の心血管死,心筋梗塞(MI),脳卒中,緊急再血行再建術,GP IIb/IIIa阻害薬の投与の複合エンドポイント。
安全性のエンドポイントは,CABG関連・非関連TIMI大・小出血。
コメント N Engl J Med. 2013; 369: 999-1010.へのコメント
多くの場合,非ST上昇心筋梗塞(NSTEMI)の病態はST上昇心筋梗塞(STEMI)に類似し,病変局所の血栓の動向次第でSTEMIに移行する場合もあれば,良好な再開通に至ることにもなる。その意味で,NSTEMIは抗血小板剤のパフォーマンスを量るに格好の対象と言える。一方,診断から治療に至るどのタイミングで投与開始すべきかの検証は不十分であった。
ACCOAST trialはNSTEMIと診断した症例に対し,prasugrelをCAG前(30mg)とPCI前(30mg)に分割してloading(ローディング)する方法と,PCI時にのみ60mgをローディングした場合の有効性・安全性を比較検討した研究である。prasugrelはclopidogrelよりも効果発現が速く,poor responderが少ないため安定した効果が実証されている(Am Heart J 2007; 153; 66. e9-16. PubMed)。さらに抗血小板作用が強いため急性冠症候群に対する有効性が高い反面,出血性合併症も多いことが知られている (TRITON-TIMI 38)。最新のNSTEMIガイドライン(ESC 2011)では,aspirinのパートナーとして位置付けはprasugrelのほうがclopidogrelよりも上位である。
CAG前の半量ローディングは,薬力学的に抗血小板作用が証明されたにも関わらず待機中の一次エンドポイントやPCIに至る症例を減らすことはなかった。有効性においてNSTEMIの運命を変えるほどのインパクトはなかったことになる。一方,穿刺部出血を中心としたCABG非関連大出血を有意に増やし,本試験は中断となった。
CURE/PCI-CUREではclopidogrelの早期ローディングが有効とされ,ガイドラインでも推奨されているが,この相違は両者のパフォーマンスの違いとCAGからPCIまでの期間が大幅に短縮された戦略の変遷が影響していると考えられる。CAG後に治療戦略を確定してからのローディングで十分だとすれば,無用な出血を増やすこともなく,またCABGに移行した場合の出血性合併症への懸念がなくなり,実臨床にとっては朗報である。
しかし,今回のコントロール群と同様,PCI前に60mgが投与され10mgを維持量としたTRITON-TIMI 38では,出血性合併症は3日以降のlate phaseのみで有意に多かった。
本邦に導入された際には,ローディングdoseおよび維持量が適正かどうかを見極める必要がある。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(19か国171施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は30日。
登録期間は2009年12月6日~’12年11月16日。
対象患者 4,033例。PCI施行予定のトロポニン陽性NSTE急性冠症候群患者。
■患者背景:平均年齢(prasugrel前投与群63.8歳,prasugrel非前投与群63.6歳),女性(27.1%, 28.0%),BMI≧30kg/m²(29.0%, 28.2%),糖尿病(20.3%, 20.4%),高コレステロール血症(44.9%, 45.1%),高血圧(62.8%, 61.4%),現喫煙(34.1%, 32.5%),GRACEスコア*≧140(24.2%, 21.6%),発症~初回ローディング投与までの時間**(14.6時間,15.2時間),初回ローディング~血管造影開始までの時間**(4.4時間,4.2時間),7日後までの併用薬(aspirin:98.2%, 98.0%,未分画heparin:65.4%, 65.5%,低分子量heparin:29.1%, 30.6%,プロトンポンプ阻害薬:54.8%, 55.8%,β遮断薬:84.4%, 84.3%,スタチン:両群とも89.5%,ACE阻害薬:69.0%, 71.8%)。
* Global Registry of Acute Coronary Eventsリスクスコア。スコアは1~372で,高スコアほどリスクが高い。
** 中央値
治療法 prasugrel前投与群(2,037例):診断直後(血管造影前48時間以内)に30mgローディング投与,血管造影でPCI適応が確認されたらPCI施行時に30mgをローディング投与。
prasugrel非前投与群(1,996例):診断直後(血管造影前48時間以内)にプラセボ投与,PCI施行時にprasugrel 60mgをローディング投与。
血管造影によりCABGまたは内科治療が適切と判断された場合は,両群ともに2回目(PCI施行時)の投与はなし。内科治療例,CABG施行例におけるチエノピリジン系薬の使用は担当医師に一任。全例にaspirinを含む標準ケアを実施した。
結果 中間解析においてprasugrel前投与群で大出血リスクが増加し,心血管イベントの抑制がみられなかったため,本試験は早期に中止された。
30日後までの追跡不能は3例。PCIは2,770例(68.7%)に対し初回ローディング後4.3時間(中央値)に施行。7日後までのCABG施行は249例(6.2%),内科治療例は1,014例(25.1%)。

[一次エンドポイント]
有効性の複合エンドポイントの発生率は両群で同等であった(prasugrel前投与群203例[10.0%] vs 非前投与群195例[9.8%]:ハザード比1.02;95%信頼区間0.84~1.25, p=0.81)。なお,この複合エンドポイントの結果は30日後も変わらなかった(10.8% vs 10.8%:0.997;0.83~1.20, p=0.98)。
また治療法によって層別化しても同様で,例えばPCI施行群の7日後,30日後の複合エンドポイントは13.1% vs 13.1%(1.01;0.82~1.24, p=0.93),14.1% vs 13.8%(1.03;0.84~1.26, p=0.77)だった。
[二次エンドポイント:心血管死+MI+脳卒中,全死亡,ステント血栓症]
総死亡率(7日後:0.4% vs 0.5%, p=0.61),心血管死+MI+脳卒中(30日後:7.1% vs 7.2%, p=0.86)には有意な群間差を認めなかった。
definite/probableステント血栓症は両群ともに少なかった(30日後:0.1% vs 0.4%, p=0.25)。
[安全性]
7日後のCABG関連または非関連TIMI大出血は,prasugrel前投与群のほうが有意に多かった(2.6% vs 1.4%:1.90;1.19~3.02, p=0.006)。有意差は非関連大出血でみられた(1.3% vs 0.5%[2.95;1.39~6.28], p=0.003)が,関連大出血ではみられなかった(20.7%[25例/CABG施行121例] vs 13.7%[16例/117例],p=0.14)。
[その他]
prasugrel前投与による血管造影待機中の一次エンドポイント抑制は認められなかった(0.8% vs 0.9%, p=0.93)。
薬力学的サブスタディ:初回ローディング4.8時間後(中央値)の動脈穿刺時に血小板凝集抑制が前投与群で大であり,二度目のローディング2時間後には両群に差は認められなかった。
★結論★PCI施行予定の非ST上昇型急性冠症候群患者において,prasugrelの前投与では非前投与にくらべ7日後のTIMI大出血リスクが増加し,心血管イベントの抑制も認められなかった。
ClinicalTrials.gov No.:NCT01015287
文献
  • [main]
  • Montalescot G et al for the ACCOAST investigators: Pretreatment with prasugrel in non-ST-segment elevation acute coronary syndromes. N Engl J Med. 2013; 369: 999-1010. PubMed
    Keaney JF Jr: P2Y12 Inhibition in patients with NSTEMI - Can later be better? N Engl J Med. 2013; 369: 1056-7. PubMed
  • [substudy]
  • PCI施行例でのprasugrel前投与-主結果と同様に7日後の心血管イベント抑制は認められず,出血リスク増加。
    [ACCOAST-PCI]PCI施行例のサブグループ解析結果(2,770例;prasugrel前投与群1,394例,非前投与群1,376例):PCI施行までの時間は4.25時間(中央値),橈骨アクセス43%,多枝PCI 38%,ステント長≧30mm 13%で,ほとんどが薬剤溶出性ステントを使用。
    7日後の一次エンドポイント発生率は両群13.1%,複合エンドポイント構成各イベントにも差はなかった。全死亡は両群4例,ステント血栓症はそれぞれ1例,3例。PCI前の冠動脈造影で血栓を認めた患者(20%, 22%)は認めなかった患者より一次エンドポイントリスクが高く,多変量解析で冠動脈造影上の血栓は一次エンドポイントを有意に予測した(ハザード比2.61)。
    前投与群は,CABG関連・非関連TIMI大出血(2.69),CABG非関連の生命を脅かす出血(5.93),CABG非関連TIMI大・小出血(2.94)のリスクが有意に高かった。この傾向は橈骨,大腿アクセスを問わず認められ,多変量解析で大腿アクセス(3.01)と治療群(2.77)はTIMI大出血と最も強く独立して関連した:J Am Coll Cardiol 2014; 64: 2563-71. PubMed

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収載年月2013.10
更新年月2015.02