循環器トライアルデータベース

TACT
Trial to Assess Chelation Therapy

目的 disodium EDTAにより血中の重金属を除去するキレーション療法は,十分な根拠がないにもかかわらずアテローム性動脈硬化症に対して1950年代から使用されてきた。米国での実施数は増加しており,2007年には約11万人の成人に実施されたとの報告があるが,明確な適応症はなく,心血管疾患の治療にどの程度用いられているかも明らかでない。また,とくに急速静注では低カルシウム血症や死亡の危険性もある。
この公衆衛生の問題を解決するため,心筋梗塞(MI)既往例において,キレーション療法により心血管イベントが減少するかを検証する。
TACTはキレーション療法 vs プラセボ,高用量経口ビタミン+ミネラル vs プラセボの2☓2 factorialデザインの試験で,今回はキレーション療法 vs プラセボの報告。

一次エンドポイントは,全死亡,MI再発,脳卒中,冠動脈再血行再建術,不安定狭心症による入院の複合エンドポイント。
コメント 日本国内ではEDTAをキレート剤として心不全に用いることは馴染みの薄い治療法と思える。TACTにおいては,60%を超える患者がcomplementary and alternative medicine sitesで登録された。全死亡,心筋梗塞の再発,脳卒中,冠動脈血行再建術,狭心症による入院の複合エンドポイントに差が認められたとしている。冠動脈疾患において初めて実施されたTACTは検出力も十分な症例数で,盲検化で実施された。いわゆる補完代替医療と呼ばれる治療だが,心筋梗塞発症から6週間以上の患者に無作為化盲検でEDTAとプラセボとに割付けるという,挑戦的な試験といえる。動脈硬化性疾患に50年前から米国で行われていた治療法に,初めてエビデンスを与えた意義は十分あるといえる。NIHがスポンサーだったことも評価できる。(中村佐藤永井
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,2×2 factorial,多施設(米国とカナダの134施設,うち81施設はキレーション療法経験のある施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は55か月(中央値)。
登録期間は2003年9月10日~’10年10月4日。
対象患者 1,708例。50歳以上,MI発症後6週間以上の患者。
除外基準:妊娠可能な女性,血清クレアチニン>2.0mg/dL,血小板数<100,000/μL,肝機能検査異常,血圧>160/100mmHg,過去5年以内のキレーション療法,冠・頸動脈血行再建術の予定/施行後6か月以内,3か月以内の喫煙,顕在性の心不全/6か月以内の心不全による入院など。
■患者背景:年齢65歳*,白人94%,女性18%,BMI 30kg/m²,血圧130/76mmHg*,MI後4.6年*,糖尿病31%,冠動脈血行再建術既往83%,β遮断薬使用72%,スタチン使用73%,空腹時血糖値102mg/dL*,LDL-C 89mg/dL*。aspirin使用(キレーション群85%,プラセボ群82%;p<0.05),クレアチニン(1.06mg/dL,1.10mg/dL;p<0.05)*
* 中央値。
治療法 キレーション群(839例):キレーション溶液500mL(disodium EDTA 3g[腎機能に基づき減量],アスコルビン酸7g,ビタミンB群,電解質,procaine,heparinなど10成分を含む)を週1回3時間かけて静注☓30回,その後2~8週ごとに1回☓10回静注(計40回)。
プラセボ群(869例):生理食塩水+デキストロース1.2%を静注。
キレーション療法による不足を補うため,全例に低用量ビタミン(B6,亜鉛,銅,マンガン,クロム)を処方。
結果 [キレーション療法の結果]
総注入数は55,222,30回の注入を終了した患者は76%,40回注入は65%。治療中止はキレーション群233例(28%),プラセボ群281例(32%),有害事象による治療中止はそれぞれ38例(16%),41例(15%)。
[一次エンドポイント]
複合エンドポイントの発生率はキレーション群でプラセボ群にくらべて有意に低かった(222例[26%] vs 261例[30%]:ハザード比0.82;95%信頼区間0.69~0.99, p=0.035)。このうち半数以上を血行再建術が占めていた(130例[15%] vs 157例[18%])。個別のイベントには差を認めなかった。
[二次エンドポイント:心血管死,MI再発,脳卒中の複合エンドポイント]
有意な群間差は認められなかった(11% vs 13%:0.84;0.64~1.11)。
[サブグループ]
キレーション療法による有意な一次エンドポイント抑制効果が認められたのは,糖尿病例(0.61;0.45~0.83, p=0.02)と前壁MI既往例(0.63;0.47~0.86, p=0.003)。
factorialデザインの高用量経口ビタミンとキレーション療法の交互作用は認められなかった(p=0.94)。
[安全性]
治療が原因と考えられる重篤な有害事象は各群2例で,うち各群 1例が死亡。
低カルシウム血症はキレーション群のほうが多かった(6.2% vs 3.5%;p=0.008)。
★結論★MI既往のある安定患者において,disodium EDTAキレーション療法によりプラセボにくらべて有害心血管イベントリスクがある程度低下した。イベントの半数以上は血行再建術であった。
ClinicalTrials gov. No: NCT00044213
文献
  • [main]
  • Lamas GA et sl for the TACT investigators: Effect of disodium EDTA chelation regimen on cardiovascular events in patients with previous myocardial infarction: the TACT randomized trial. JAMA. 2013; 309: 1241-50. PubMed
    Bauchner H, et al. Evaluation of the trial to assess chelation therapy (TACT): the scientific process, peer review, and editorial scrutiny. JAMA. 2013; 309: 1291-2. PubMed
    Nissen SE Concerns about reliability in the trial to assess chelation therapy (TACT). JAMA. 2013; 309: 1293-4. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2013.07