循環器トライアルデータベース

UKPDS 79
UK Prospective Diabetes Study 79

目的 新規診断2型糖尿病患者において,診断時の無症候性心筋梗塞(silent myocardial infarction:SMI)の有病率を調査し,SMIとその後の心筋梗塞(MI)発症および全死亡との関係を検証する。
デザイン 観察研究,多施設(英国の23施設)。
期間 追跡期間は17年(中央値)。
登録期間は1977~’91年。
対象 1,967例。UKPDS*に参加した新規診断2型糖尿病患者のうち,ベースライン時のリスク因子データが揃っているもの。
除外基準:重度の血管病,過去1年間のMIまたは脳卒中,全身性疾患。
* 新規に診断された2型糖尿病患者5,102例を登録し,ベースライン時の評価ののち3~4か月の食事療法によるrun-in後,食事療法群(空腹時血糖<15mmol/Lの場合),SU薬群,インスリン群,metoformin群(理想体重の>120%の場合),にランダム化し,3か月ごとにUKPDSのクリニックで検査し,1997年9月まで10年間(中央値)追跡。試験終了後,生存例3,277例を通常外来で10年間モニタリングした。
調査方法 試験期間中3年ごとに取得した心電図を,ミネソタコードを用いてコード化。SMIは,心電図上にdefinite/probable Q波MI(ミネソタコード1.1,1.2)を認めるが,冠動脈疾患(CAD)の既往または典型症状(自己申告による狭心症/MI,または担当医が判断できる症状)がない場合と定義。
ベースライン時のSMIを加えることにより,UKPDS Risk Engine(診断時年齢,性別,人種,喫煙,HbA1c,収縮期血圧,総コレステロール/HDL-C比を用いたリスク推定モデル)によるCADのリスク分類能が改善するかを,ROC曲線下面積,net reclassification indexとintegrated discrimination indexにより評価。
結果 [ベースライン時のSMI有病率と患者背景]
SMIの有病率は16.6%(326例)。
SMI例は非SMI例にくらべて高齢で(SMI例55歳,非SMI例52歳;p<0.0001),男性が少なく(50%, 62%;p=0.0001),座位中心の生活者が多く(27%, 18%;p=0.0004),喫煙者が少なかった(現喫煙:39%, 31%;過去喫煙:37%, 34%;非喫煙:24%, 35%;p=0.02。数値は表1の通り)。また降圧薬治療率が高かったにもかかわらず(降圧薬:31%, 18%;p<0.0001;利尿薬:25%, 12%;p<0.0001),平均血圧が高く(143/85mmHg, 132/81mmHg;p<0.0001),aspirin(2.5%, 0.7%;p=0.011)と脂質低下薬(1.2%, 0.18%;p=0.017)の服用率が高く,網膜症(25%, 18%;p=0.0080)とアルブミン尿(尿中アルブミン:9mg/L, 8mg/L;p=0.00080;アルブミン/クレアチニン比1.22, 0.83;p<0.0001)のが多かった。
[MI発症と死亡]
SMI例は非SMI例にくらべて,初発の致死的・非致死的MI(19.4 vs 13.6/1,000人・年),致死的MI(15.2 vs 8.3/1,000人・年),全死亡(32.6 vs 21.3/1,000人・年)の発生率が高かった。初発の非致死的MI(6.5 vs 6.6/1,000人・年)には差を認めなかった。
UKPDS Risk Engineの変数を加えた多変量モデルでは,SMI例は非SMI例にくらべて致死的MI(調整後ハザード比1.58;95%信頼区間1.22~2.05)と全死亡(1.31;1.10~1.56)のリスクが有意に高かった。
Risk Engineの変数にSMIを加えても,ROC曲線下面積は増加せず,net reclassification indexは改善しなかったが(すべてp≧0.11),integrated discrimination indexからはSMI追加によりわずかながら致死的MI(p=0.002)と全死亡(p<0.001)の予測リスクが改善する可能性が示された。
★結論★無症候性MIは新規診断2型糖尿病患者の6人に1人認められ,その後の致死的MIおよび全死亡と独立して関連した。ただし,無症候性MIをUKPDS Risk Engineの変数に加えてもリスク予測能の大きな改善はなかった。
ISRCTN No: 75451837
文献
  • [main]
  • Davis TM et al for the UKPDS group: Prognostic significance of silent myocardial infarction in newly diagnosed type 2 diabetes mellitus: United Kingdom Prospective Diabetes Study (UKPDS) 79. Circulation. 2013; 127: 980-7. PubMed
    Scirica BM: Prevalence, incidence, and implications of silent myocardial infarctions in patients with diabetes mellitus. Circulation. 2013; 127: 965-7. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2013.07