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ALTITUDE
Aliskiren Trial in Type 2 Diabetes Using Cardiorenal Endpoints

目的 ACE阻害薬/ARB(RAS阻害薬)による標準治療を受けている心血管・腎イベント高リスクの2型糖尿病患者において,直接的レニン阻害薬aliskiren追加による有効性および安全性を検証する。

一次エンドポイントは,心血管疾患(CVD)死,突然死からの蘇生,致死的・非致死的心筋梗塞(MI),致死的・非致死的脳卒中,心不全による予定外の入院,腎イベント*初発の複合エンドポイント。
* 末期腎疾患(ESRD)発症,腎疾患死,透析あるいは腎移植を伴わない腎置換療法,1か月以上持続する血清クレアチニンのベースライン値からの倍加以上,あるいは標準値を超える(女性;>0.9mg/dL,男性;>1.2mg/dL)上昇。
コメント すでに学会で発表になり,話題になったALTITUDEの論文である。ACE阻害薬あるいはARBに直接的レニン阻害薬aliskirenを追加することは心血管イベントや腎臓イベントの抑制につながらず,むしろ高カリウム血症などの有害事象を増やすだけであったという結論である。
ACE阻害薬にARBを上乗するいわゆるdual blocking therapyに関して,さらなる心血管イベント抑制はみられず,有害事象を増加させるということはすでにONTARGET試験などで報告されている。そして本試験のようにACE阻害薬/ARBと直接的レニン阻害薬の上乗せも同様な結果となったが,RA系の強力な抑制は好ましくないことを決定づけるエビデンスとなった。とくに突然死からの蘇生がaliskiren併用群に有意に多いことは血清カリウム値の上昇に関連した重症不整脈による可能性も考えられ,臨床上非常に重要である。
基本的には,本製剤はRA系抑制薬との併用により,RA系のより完全な抑制が動脈硬化性疾患の予防につながることを期待して開発された薬剤だけに,この結果は予想外といえよう。
この結果が速やかに臨床現場に反映され,2型糖尿病患者への併用投与はやむを得ない場合を除き避けることが有害事象を防ぐ意味で重要である。(桑島
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(36か国853施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は32.9か月(中央値)。
対象患者 8,561例。35歳以上の2型糖尿病患者で微量アルブミン尿,蛋白尿,CVDが確認されているもの。
■患者背景:糖尿病罹病期間が5年以上のもの82%,高血圧と診断されたもの94.5%,高血圧以外のCVDは42.3%でおもに冠動脈疾患。慢性腎臓病(CKD)が98.0%,蛋白尿が84.1%。
平均年齢64歳,喫煙率13.0%,BMI 29.9kg/m²,HbA1c 7.8% ,推定糸球体濾過量(eGFR)57.0mL/分/1.73 m²,女性(aliskiren追加群32.6%,プラセボ群31.3%),血圧(137.3/74.1, 137.3/ 74.3mmHg):SBP>140mmHgが40.8%;DBP>85mmHgが12.2%, eGFR:30~<45mL/分/1.73 m²(29.1%, 30.2%);45~<60 mL/分/1.73 m²(35.9%, 34.8%);≧60 mL/分/1.73m²(32.8%, 32.2%),尿中アルブミン-クレアチニン比(206mg/g, 208mg/g):<20 mg/g (14.4%, 14.5%);20 ~<200 mg/g (25.9%, 25.4%);≧200 mg/g (58.2%, 58.7%)。
薬物治療背景:利尿薬71.2%(非CVD例では57.3%),抗血小板薬80.5%(48.1%),β遮断薬69.5%(35.9%),スタチン79.6%(54.6%),Ca拮抗薬55.7%(65.5%),インスリン56.7%。
治療法 4~12週間のスクリーニング期間後,ランダム化。
aliskiren追加群(4,274例):ACE阻害薬/ARB+aliskiren 150mg/日で投与を開始し4週後に300mg/日,プラセボ群(4,287例)。
結果 2011年12月14日の2回目の有効性解析,7回目の安全性解析の結果を受け,追跡期間32.9か月(中央値)で試験は予定より早く中止され,2012年1月6日までに試験薬投与は中止した。本報は2012年1月31日までに発症したイベント解析の結果。
aliskiren群の300mg/日投与例は2か月後84.1%,プラセボ群86.3%,1年後の試験薬投与率はそれぞれ84.6%, 87.3%(p<0.001),2年後はそれぞれ74.1%, 78.1%(p<0.001),3年後は65.7%, 70.1%(p=0.009)。
SBP,DBPはaliskiren群のほうがそれぞれ1.3, 0.6mmHg低下し,尿中アルブミン-クレアチニン比の低下は14%大きかった。
[一次エンドポイント]
両群間に有意差は認められなかった。
aliskiren群783例(18.3%),プラセボ群732例(17.1%):ハザード比1.08;95%信頼区間0.98~1.20(p=0.12)。
複合エンドポイントそれぞれの結果は下記の通り。
心血管死は246例 (5.8%) vs 215例 (5.0%):1.16;0.96~1.39(p=0.12)。
突然死からの蘇生は19例 (0.4%) vs 8 例(0.2%):2.40;1.05~5.48(p=0.04)。
致死的・非致死的MIは147例 (3.4%) vs 142例 (3.3%):1.04 ;0.83~1.31(p=0.72)。
致死的・非致死的脳卒中は147 例(3.4%) vs 122例 (2.8%):1.22;0.96~1.55(p= 0.11)。
心不全による予定外の入院は205例 (4.8% ) vs 219 例(5.1%) :0.95 ;0.78~1.14(p=0.56)。
ESRD,腎疾患死,腎機能喪失は121例 (2.8%) vs 113 例(2.6%) :1.08 ;0.84~1.40(p=0.56)。
血清クレアチニンのベースライン値からの倍加は210例 (4.9%) vs 217例 (5.1%):0.97;0.80~1.17(p=0.75)。
[有害事象]
死亡以外の理由による試験薬投与中止は,aliskiren群1,445例(33.8%),プラセボ群1,218例(28.4%)で(p=0.001),うち有害事象による中止はそれぞれ563例(13.2%),プラセボ群437例(10.2%)であった(p<0.001)。
もっとも頻度の高かった有害事象は,高カリウム血症(39.1% vs 29.0%:試験薬投与中止例4.8% vs 2.6%;血清カリウム値≧6mmol/Lの発生率は11.2% vs 7.2%),次いで末梢浮腫(16.1% vs 16.5%),低血圧(12.1% vs 8.3%),高血圧(10.0% vs 10.9%)。
★結論★心血管・腎イベント高リスクの2型糖尿病患者に対するRAS阻害薬による標準治療にaliskiren追加投与は支持されず,むしろ有害の可能性が示された。
ClinicalTrials gov No: NCT00549757
文献
  • [main]
  • Parving HH et al for the ALTITUDE investigators: Cardiorenal end points in a trial of aliskiren for type 2 diabetes. N Engl J Med. 2012; 367: 2204-13. PubMed

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収載年月2012.12