循環器トライアルデータベース

MADIT-RIT
Multicenter Automatic Defibrillator Implantation Trial - Reduce Inappropriate Therapy

目的 植込み型除細動器(ICD)/両室ペーシング機能付きICD(CRT-D)による治療の8-40%は不適切作動(治療すべき心室頻拍以外の不整脈に対してペーシング,ショック治療が行われること)とされているが,この不適切作動を安全に減らすプログラミングは明らかでない。
一次予防としてICD/CRT-Dが植込まれた患者において,ICD作動プログラミングのハイレートカットオフ,ロングディレイ設定は標準プログラミングにくらべ,合併症,死亡増加を伴わずにICDの不適切作動を抑制するという仮説を検証する日本参加の国際共同試験。

一次エンドポイントは,ICDの不適切な作動(抗頻拍ペーシング[ATP],ショック)。
コメント N Engl J Med. 2012; 367: 2275-83. へのコメント
ICDが頻脈性心室性不整脈による突然死を抑制することは疑いが残らない。しかし,不適切作動(ことにショック)は患者のQOLを損なうばかりでなく,生命予後にも悪影響を与える。従来は,頻脈性心室性不整脈を検出したらすぐにこれを停止させることが適切と考えられてきた。頻脈性心室性不整脈による心事故を抑制し,なおかつ作動,ひいては死亡率を減らすプログラミングを検討するため,MADIT-RITが企画された。その結果,作動するのを遅らせる対応(より速い頻拍で作動,あるいは作動までに長い観察期間を設ける)は標準的設定に優ることが示された。
現行のICDの設定は見直しが必要であろう。(井上
デザイン 無作為割付け,多施設(98施設,うち日本6施設,米国61施設,カナダ2施設,欧州23施設,イスラエル6施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は1.4年。
試験(追跡)終了は2012年7月10日。
登録期間は2009年9月15日~2011年10月10日。
対象患者 1,500例(うち日本人は68例)。21歳以上;虚血性あるいは非虚血性心疾患で洞調律のもので,ICD/CRT-D植込み一次予防適応例。
除外基準:ペースメーカー・ICD・心臓再同期療法デバイス植込み例,永続性心房細動,登録前の3か月以内のCABG,PCIあるいは心筋梗塞など。
■患者背景:平均年齢(ハイレートカットオフ群63歳,ロングディレイ群62歳,標準プログラミング群63歳),男性(70.8%, 72.6%, 69.5%),虚血性心疾患(53.7%, 52.0%, 52.7%),高血圧(72.2%, 66.8%, 67.4%),糖尿病(32.4%, 33.2%, 32.5%),喫煙率(17.6%, 16.8%, 17.8%),心房細動(11.5%, 10.1%, 9.3%),BMI(28.9, 29.5, 29.4kg/m²),安静時心拍数(72, 73, 72bpm)。
ICD植込み(49.7%, 48.6%, 50.2%),CRT-D植込み(50.3%, 51.4%, 49.8%)。
薬物治療:ACE阻害薬(67.9%, 67.4%, 67.7%),アルドステロン受容体拮抗薬(38.1%, 34.0%, 36.6%),aspirin(66.9%, 66.2%, 61.7%),β遮断薬(93.6%, 94.8%, 92.6%),digitalis(13.0%, 13.6%, 12.1%),利尿薬(71.1%, 65.2%, 65.4%),スタチン(61.7%, 56.7%, 57.4%)。
治療法 標準プログラミング群(514例):2つの頻拍検出ゾーンを設定;
心拍数(HR)170~199bpmの心室頻拍には2.5秒ディレイで,HR≧200bpmには1.0秒ディレイで治療(ATPあるいはショック)を開始,
ハイレートカットオフ群(500例):HR 170~199bpmの心室頻拍はモニターのみで,HR≧200bpmは2.5秒ディレイで治療開始,
ロングディレイ群(486例):3つの検出ゾーンを設定;HR 170~199bpmの心室頻拍にはディレイ60秒で,≧200bpmは12秒ディレイで,≧250bpmはディレイ2.5秒で治療を開始。
結果 最初の30日間の植込み関連有害イベント(感染,ポケット内血腫,静脈解離など)の頻度は少なく3群間に差はみられなかった。脱落あるいは追跡不能は168例(ハイレートカットオフ群66例,ロングディレイ群50例,標準プログラミング群52例)。
[適切,不適切作動]
いずれも,標準プログラミング群はハイレートカットオフ群,ロングディレイ群より有意に多かった。
適切作動:ハイレートカットオフ群45例(9%);ショック22例,ATP23例,ロングディレイ群27例(6%);17例,10例,標準プログラミング群114例(22%);20例,94例。
不適切作動:ハイレートカットオフ群21例(4%);11例,10例,ロングディレイ群26例(5%);13例,13例,標準プログラミング群105例(20%);20例,85例。
[一次エンドポイント]
標準プログラミング群にくらべ,ハイレートカットオフ群,ロングディレイ群でICD初回不適切作動が有意に抑制された。
ハイレートカットオフ群21例 vs ロングディレイ群26例 vs 標準治療群105例:ハイレートカットオフ群のハザード比(HR)0.21;95%信頼区間0.13~0.34(p<0.001 vs 標準プログラミング群),ロングディレイ群のHR 0.24;95%信頼区間0.15~0.40(p<0.001 vs 標準プログラミング群)。
[その他の結果]
・全死亡:16例 vs 21例 vs 34例:ハイレートカットオフ群のHR 0.45;0.24~0.85(p=0.01),ロングディレイ群のHR 0.56;0.30~1.02(p=0.06)。
・失神初発:22例 vs 22例 vs 23例:ハイレートカットオフ群のHR 1.32;0.71~2.47(p=0.39),ロングディレイ群のHR 1.09;0.58~2.05(p=0.80)。
★結論★抗頻拍ICD標準プログラミングにくらべ,ハイレート(≧200bpm),≧170bpmでのディレイプログラミングは長期の不適切なICD作動,全死亡を抑制する。
ClinicalTrials. gov No: NCT00947310
文献
  • [main]
  • Moss AJ et al for the MADIT-RIT trial investigators: Reduction in inappropriate therapy and mortality through ICD programming. N Engl J Med. 2012; 367: 2275-83. (Epub 2012 Nov 6.) PubMed
    Wilkoff BL: Improved programming of ICDs. N Engl J Med. 2012; 367: 2348-9. (Epub 2012 Nov 6.) PubMed
  • [substudy]
  • 糖尿病の影響-ICD不適切作動の抑制には影響しなかったが,非糖尿病例よりも不適切作動のリスクが低い一方,適切な作動が多く,ICD関連死亡リスクが高かった。
    一次エンドポイント,不適切・適切な作動,不適切・適切な作動と全死亡の関係に,糖尿病が及ぼす影響を評価した結果(平均追跡期間17.4か月):糖尿病患者(485例[33%];薬物治療例,食事療法のみの例は含まず)は,非糖尿病者(998例)にくらべ,虚血性心筋症(64%, 48%),高血圧(80%, 63%),スタチン投与例(66%, 55%)が多く,SBP(126.4, 122.3mmHg),安静時心拍数(73.3, 71.5拍/分)が高かった。
    標準プログラミング群と比較した不適切作動の抑制は,ハイレートカットオフ群(糖尿病例:ハザード比0.32;95%信頼区間0.14~0.77,非糖尿病例:0.12;0.06~0.22),ロングディレイ群(0.39;0.17~0.88, 0.19;0.12~0.32)で糖尿病,非糖尿病を問わず認められたが,ハイレートカットオフ群のほうが糖尿病の影響が大きい傾向が示された(糖尿病×治療効果の交互作用p=0.06;ロングディレイ群p=0.16)。また,糖尿病例は非糖尿病例にくらべて不適切な作動のリスクが低く(0.54;0.36~0.80;p=0.002),適切な作動が多かった(1.58;1.17~2.14;p=0.003)。糖尿病例では,不適切・適切作動例における全死亡リスクが非作動例にくらべて有意に高かったが(不適切作動:4.17;1.52~11.40[p=0.005],適切作動:2.49;1.06~5.87[p=0.037]),非糖尿病例ではこの関係は認められなかった:Circulation. 2013; 128: 649-701. PubMed

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収載年月2012.11
更新年月2013.10