循環器トライアルデータベース

SPS3
Secondary Prevention of Small Subcortical Strokes

目的 発症から180日以内のラクナ梗塞患者において,下記2種類の治療法による二次予防効果を検討する。
(1) 抗血小板療法。
(2) 降圧治療(目標収縮期血圧[SBP]<130mmHg vs 130~149mmHg)。
背景:虚血性脳卒中の1/4を占めるラクナ梗塞については,再発予防における至適血圧レベルが確立されていない。

一次エンドポイントは全脳卒中(虚血性脳卒中と頭蓋内出血)の再発。
コメント ■コメント(抗血小板療法試験) 後藤 信哉
■コメント(降圧治療試験) 内山真一郎

(1) 抗血小板療法試験(N Engl J Med. 2012; 367: 817-25.
脳梗塞は病型により病態が異なり,また薬剤の効果も異なる。ラクナ梗塞でも抗血小板薬併用療法の有用性が否定され,脳と心臓の差異を明らかにした。(後藤


(2) 降圧治療試験(Lancet. 2013; 382: 507-15.
ラクナ梗塞患者は脳出血を併発しやすく,脳微小出血も多いことが知られている。一般に,抗血栓療法を施行している脳梗塞患者では脳出血を回避するため血圧の厳格な管理が求められるが,ラクナ梗塞患者では特に血圧管理の厳格化が必要である。本研究結果はラクナ梗塞患者において積極的な降圧療法が通常の降圧療法と比べて脳出血を減少させることにより全脳卒中の再発を減らすことを示唆しており,抗血小板療法施行中のラクナ梗塞患者では収縮期血圧130mmHg未満の積極的な降圧療法が推奨される。日本人は白人よりラクナ梗塞が多いので,本研究結果は日本人の脳卒中患者の診療にも大いに参考になる。(内山
デザイン 無作為割付け,二重盲検((2)はオープン),2☓2 factorial,多施設(北米,中南米,スペインの82施設[(2)は81施設]),intention-to-treat解析。
期間 (1) 平均追跡期間は3.4年。
(2) 平均追跡期間は3.7年。
(1),(2)とも登録期間は2003~2011年。
対象患者 3,020例。30歳以上;症候性ラクナ梗塞発症後180日以内;MRI画像で直径≦2.0cm;(2)は正常血圧または高血圧。
除外基準:手術に適した同側の頸動脈疾患,心原性脳塞栓症の主要な危険因子保有例,MRIで確認された最近のまたは陳旧性の皮質梗塞,直径>1.5cmの皮質下梗塞,脳内出血の既往,障害の残る脳卒中(modified Rankin score≧4)など。
■(1) 患者背景:平均年齢63歳,非ヒスパニック系白人52%,ヒスパニック系31%,北米在住65%,男性(aspirin+clopidogrel群62%, aspirin群64%),高血圧既往(76%, 74%),平均血圧(両群とも143/78mmHg),糖尿病(35%, 38%),喫煙(20%, 21%)。
ラクナ症候群タイプ:片麻痺(31%, 35%),半身感覚障害(両群とも10%),片麻痺+半身感覚障害(32%, 30%)。発症時のaspirin使用(両群とも28%)。
■(2) 患者背景:平均年齢63歳,高血圧既往75%,男性(目標SBP<130mmHg群61%, 130~149mmHg群65%),血圧(142/78mmHg, 144/79mmHg),糖尿病(37%, 36%),人種(白人:52%, 50%;ヒスパニック:30%, 31%)。
治療法 (1) 発症後2週以降に,aspirin+clopidogrel併用群(1,517例):aspirin腸溶錠325mg/日+clopidogrel 75mg/日,aspirin単独群(1,503例)にランダム化。
(2) 脳卒中急性期の血圧低下を避けるため,2週間以上経過してから,目標SBP<130mmHg群(1,501例)と,目標SBP 130~149mmHg群(1,519例)にオープンでランダム化。
降圧薬の選択は試験担当医師に一任した。
結果 (1)抗血小板療法試験
脳卒中発症からランダム化までの時間は62日(中央値)。
SBPは試験開始時143→終了時131mmHg。
試験薬中止はaspirin+clopidogrel群30%,aspirin群27%(p=0.02)。
[一次エンドポイント]
2剤併用療法による二次予防効果は認められなかった。
aspirin+clopidogrel群125件(2.5%/年) vs aspirin群138件(2.7%/年);ハザード比0.92(95%信頼区間0.72~1.16, p=0.48),うち脳梗塞:100件(2.0%/年)vs 124件(2.4%/年);0.82(0.63~1.09, p=0.13),頭蓋内出血:21件(0.42%/年)vs 13件(0.25%/年);1.65(0.83~3.31, p=0.15)。障害の残る/致死的脳卒中:42件(0.84%/年)vs 40件(0.78%/年);1.06(0.69~1.64, p=0.79)。
臨床評価および画像評価により確認された脳梗塞の再発例のうち71%(133/187件)がラクナ梗塞であり,2剤併用療法による抑制はみられなかった(66件 vs 67件)。
[主要な血管イベント]
脳卒中+心筋梗塞+血管イベントによる死亡:153件(3.1%/年) vs 174件(3.4%/年);0.89(0.72~1.11, p=0.29)と,2剤併用療法によるリスクの低下はみられなかった。
[死亡]
全死亡:113件(2.1%/年)vs 77件(1.4%/年);1.52(1.14~2.04, p=0.004),と2剤併用療法群で増加した。
[出血]
重大な出血:105件(2.1%/年)vs 56件(1.1%/年);1.97(1.41~2.71, p<0.001)と,2剤併用療法群でほぼ2倍となった。頭蓋外出血:87件(1.7%/年) vs 42件(0.79%/年);2.15(1.49~3.11, p<0.001)も同群で有意に増加。致死的出血:9件(0.17%/年) vs 4件(0.07%/年);2.29(0.70~7.42, p=0.17)。
★結論★最近発症したラクナ梗塞患者において,2剤併用抗血小板療法(aspirinにclopidogrelを追加)による再発リスクの有意な低下は認められず,出血・死亡リスクが有意に増大した。

(2)降圧治療試験
[降圧治療]
服用降圧剤数(ベースライン:両群1.7剤→ 1年後:目標SBP<130mmHg群;2.4剤,130~149mmHg群;1.8剤[p<0.0001]→最終受診時:2.4剤,1.8剤[p<0.0001])。1年後の降圧治療(ACE阻害薬/ARB:80%, 63%;サイアザイド系利尿薬:58%, 43%;Ca拮抗薬:43%, 30%[すべてp<0.0001];β遮断薬31%, 25%[p=0.0008]),追跡期間中のスタチン投与(85%, 84%)。
[達成血圧]
1年後の平均SBPは,目標SBP<130mmHg群:127mmHg, 130~149mmHg群:138mmHg,目標達成率はそれぞれ976例(65%),1,139例(75%)で,両群間の血圧差(11mmHg)は追跡終了まで持続した。
[一次エンドポイント]
脳卒中再発は虚血性脳卒中243例(86%,うちラクナ梗塞173例[71%]),頭蓋内出血34例。
脳卒中発生率は<130mmHg群が130~149mmHg群よりも低かったが,有意な群間差は認められなかった(125例[2.25%/人・年] vs 152例[2.77%/人・年]:<130mmHg群のハザード比0.81;95%信頼区間0.64~1.03, p=0.08)。
障害を伴う脳卒中または致死的脳卒中(0.81;0.53~1.23, p=0.32),心筋梗塞+血管死(0.84;0.68~1.04, p=0.10)の結果も同様であった。
脳出血の発生率は<130mmHg群が有意に低かった(6例 vs 16 例:0.37;0.15~0.95, p=0.03)。
[有害事象]
治療に関連する重篤な有害事象はほとんどみられなかった。
★結論★発症から180日以内のラクナ梗塞患者において,SBP<130mmHgを目標とした降圧治療は脳卒中の減少には有意ではなかったものの有益である可能性が示された。
PMID:23726159
ClinicalTrials.gov No.:NCT00059306
文献
  • [main]
  • (1) SPS3 Investigators: Effects of clopidogrel added to aspirin in patients with recent lacunar stroke. N Engl J Med. 2012; 367: 817-25. PubMed
  • (2) The SPS3 Study Group: Blood-pressure targets in patients with recent lacunar stroke: the SPS3 randomised trial. Lancet. 2013; 382: 507-15. PubMed

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収載年月2012.11
更新年月2013.06