循環器トライアルデータベース

Flec-SL
Flecainide Short-Long trial

目的 心房細動(AF)により発生した電気的リモデリングは,心房の活動電位持続時間を短縮し,電気的除細動後の再発に関連する。この電気的リモデリングから心房が回復するまでには,2~4週間の洞調律維持が必要で,この期間はAFの再発がもっとも多い。抗不整脈薬は心房の活動電位持続時間を延長することにより除細動後の再発を予防するが,活動電位が正常化すれば投与の継続は必要ないのではないかと考えられる。
持続性AFの除細動後の患者において,抗不整脈薬の投与期間を4週間に短縮した場合,再発予防効果は長期投与と変わらないかを検証する(非劣性試験)。

一次エンドポイントは持続性AFの再発または死亡。
コメント 抗不整脈薬(例えばフレカイニド)の長期投与は除細動後の再発を多くの例で抑制できる。除細動後2~4週間で電気的リモデリングは改善する可能性があるので,短期投与(4週間)は抗不整脈薬の合併症リスクが高い例や再発リスクの低い例に試みてもよい。(井上
デザイン PROBE(prospective, randomised, open-label, blinded-endpoints),多施設(ドイツの44施設)。
期間 追跡期間は6か月。
登録期間は2007年5月4日~’10年3月12日。
対象患者 635例。18歳以上,電気的除細動が予定されている持続性AF患者(ホルター心電図[ECG]により診断)。
除外基準:登録前にflecainide 以外の抗不整脈薬を半減期の5倍の期間投与(過去6か月間のamiodarone投与)など。
■患者背景:年齢63.7歳,男性65.8%,血圧130.4/80.3mmHg,糖尿病9.0%,冠動脈疾患6.0%,高血圧67.2%,弁膜症13.5%,BMI 28.3kg/m²,心拍数88.4拍/分,QRS間隔95.8ms,NYHA心機能分類(0度:70.9%,I度:11.7%,II度:15.7%,III度:1.8%),CHADS2スコア(0:26.1%, 1:45.2%, 2:20.5%, 3:6.3%, 4:1.9%),AF罹病期間27.5か月,心血管治療(β遮断薬:77.5%,ジギタリス配糖体:12.5%,利尿薬:31.8%,ACE阻害薬・ARB:46.2%,スタチン:14.8%,抗血小板薬(aspirin, clopidogrel):7.1%,経口抗凝固薬・heparin・低分子量heparin:75.4%),心エコー所見(左室機能正常・軽度低下:97.3%,左室収縮末期径:33.2mm,左室拡張末期径:49.5mm)。
治療法 電気的除細動前にflecainide 100mg×2回/日(100mg×3回/日への増量可)を48時間以上投与。除細動成功直後に下記3群にランダム化。
短期群(273例):flecainide 4週間投与。
長期群(281例):6か月間投与。
対照群(81例):抗不整脈薬非投与。
テレメトリーECGを毎日実施。ECG上に2回連続して心房細動を認めた場合は,ホルターECGを中央で確認。QOLはベースライン時と追跡終了時にSF-12およびKarnofskyスコアにより評価。
4週後の中間解析で,flecainide(短期+長期)群(161例)の対照群(81例)に対する優越性が認められたため(Kaplan-Meier 28日生存率:70.2% vs 52.5%, p=0.0160),対照群の登録を終了し,flecainide短期群と長期群の比較のみを継続。
結果 薬理学的除細動成功率は,短期群21%,長期群19%,対照群20%。
flecainide の投与量は,100mg×2回/日が86.5%, 89.0%, 86.4%,100mg×3回/日が8.4%, 7.8%, 7.4%,除細動までの投与量は454.8mg, 443.0mg, 478.4mg。
[一次エンドポイント]
per-protocol解析集団での持続性AFの再発は,短期群120/261例(46%) vs 長期群103/263例(39%)で,短期治療の長期治療に対する非劣性は示されなかった(イベント回避生存率48.4%[95%信頼区間41.9~55.0]vs 56.4%[49.1~63.6];Kaplan-Meier推定による群間差:7.9%[-1.9~17.7],非劣性のp=0.2081;非劣性マージン12%)。intention-to-treat解析の結果も同様であった(群間差6.3%[-2.6~15.3], p=0.1073)。死亡例はなかった。
[post-hoc ランドマーク解析]
1か月以内にAFを再発しなかった患者における事後のランドマーク解析で,長期治療は短期治療よりも一次エンドポイントの抑制に優れていた(Kaplan-Meier推定による群間差:14.3%[5.1~23.6];ハザード比0.31[0.18~0.56], p=0.0001)。
[その他]
QOLは短期群,長期群ともにベースライン時から有意に改善した。対照群ではSF-12の身体機能スコアのみ改善。重篤な有害事象の発生率は全群で低く,群間差も認められなかった。
★結論★持続性心房細動の除細動後の患者において,抗不整脈薬flecainide による短期投与の再発予防効果は長期治療には及ばなかった。ただし,大半の再発は短期治療で予防できる。
ISRCTN62728742, ClinicalTrials. gov No: NCT00215774
文献
  • [main]
  • Kirchhof P et al: Short-term versus long-term antiarrhythmic drug treatment after cardioversion of atrial fibrillation (Flec-SL): a prospective, randomised, open-label, blinded endpoint assessment trial. Lancet. 2012; 380: 238-46. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2012.12