循環器トライアルデータベース

Look AHEAD
Look Action for Health in Diabetes

目的 過体重または肥満の2型糖尿病患者において,減量を目標とした長期の生活習慣強化介入により心血管イベントが減少するかを検討する。

一次エンドポイントは,心血管死,非致死的心筋梗塞(MI),非致死的脳卒中,狭心症による入院*の複合エンドポイント。
* 最初の2年間で発生イベント数が少なかったため,狭心症による入院が追加された。
コメント 減量を主体とした生活習慣介入が心血管イベントを抑制するか否かを検討した試験。この試験の結果発表の前に4年(中央値)の解析期間で発表された中間解析では生活習慣強化介入群で可動性喪失リスクやほとんどの心血管疾患危険因子の改善が報告されていたため(N Engl J Med. 2012; 366: 1209-17.),9.6年(中央値)の観察期間の本研究での結果が期待されていた。しかし,イベントそのものの抑制という結果には至らなかった。ただし,これをもって減量を主体とする生活習慣介入に効果がないと結論付けるのは早計であろう。9.6年を経ても中間解析で認められた心血管疾患の危険因子の改善が維持されているのだ。例えば血糖値の改善がイベント抑制につながるためには最低でも10年は必要である。検出感度という意味では年数だけでなく介入数が少なかった可能性も考えられる。さらにリスクが介入群で有意に減ったために心保護的な薬剤介入が減少した可能性も考えられる。また,editorialは狭心症での入院に群間差がなく,これが結果に影響している可能性を挙げている。狭心症の診断がいささか信用できないからである。いずれにしても平均BMI 36kg/m²程度の患者を対象とした白人主体の本研究の結果を,少しの肥満でインスリン抵抗性が惹起される日本人に当てはめることも危険であり,冷静な解釈が必要であろう。(弘世
デザイン PROBE(prospective, randomized, open-labeled, blinded-endpoint),多施設(米国の16施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は9.6年(中央値)**
登録期間は2001年8月~’04年4月。
** 予定追跡期間は最長13.5年だったが,2012年9月14日,無益性解析(futility analysis)の結果をうけて早期に終了。
対象患者 5,145例。45~75歳,過体重/肥満(BMI≧25.0kg/m²;インスリン使用例は≧27.0kg/m²)の2型糖尿病患者(糖尿病治療薬/医師の報告/血糖値により確認)で,HbA1c≦11%,血圧<160/100mmHg,トリグリセライド(TG)<600mg/dL,最大運動負荷テストが可能,プライマリケア医の協力が得られるもの。
■患者背景:平均年齢(生活習慣強化介入群58.6歳,対照群58.9歳),女性(59.4%, 59.7%),白人(63.1%, 63.3%),心血管疾患既往(14.2%, 13.5%),糖尿病罹病期間(両群とも5.0年[中央値]),体重(両群とも101kg),BMI(35.9kg/m², 6.0kg/m²),腹囲(両群とも114cm),HbA1c(7.2%, 7.3%),血圧(128/69.9mmHg, 129/70.4mmHg),HDL-C(43.4mg/dL, 43.5mg/dL),LDL-C(両群112mg/dL),TG(155mg/dL, 152mg/dL[中央値])。
治療法 生活習慣強化介入群(2,570例):摂取カロリーの減少(1,200~1,800kcal/日),食事代替食の使用,身体活動量の増加(適度な運動≧175分/週)による7%以上の体重減少を目標として,グループ/個人カウンセリングを週1回☓6か月,その後は頻度を減らしながら試験期間中実施。目標達成が困難な患者向けにさまざまな戦略ツールボックスを用意。
対照群(2,575例):食事,運動,社会的支援に重点を置いたグループセッションを年3回☓4年間,その後年1回実施。
結果 追跡不能例は<4%。
[一次エンドポイント]
有意な群間差を認めなかった(生活習慣強化介入群403例 vs 対照群418例;1.83/100人・年vs 1.92/100人・年:介入群のハザード比0.95;95%信頼区間0.83~1.09, p=0.51)。
個々のイベントについても有意な群間差はみられなかった。
[二次エンドポイント]
心血管死+非致死的MI+非致死的脳卒中(0.93;0.79~1.10),全死亡+非致死的MI+非致死的脳卒中(0.93;0.82~1.05),全死亡+非致死的MI+非致死的脳卒中+狭心症による入院+CABG+PCI+心不全による入院+頸動脈内膜剥離術+末梢血管疾患(0.94;0.84~1.05)にも有意な群間差は認められなかった。
[その他]
全死亡は174例(0.73/100人・年)vs 202例(0.86/100人・年),心血管死は52例(0.22/100人・年)vs 57例(0.24/100人・年)。
体重減少は生活習慣強化介入群のほうが大きかった(1年後:8.6% vs. 0.7%,試験終了時:6.0% vs. 3.5%;p<0.001)。HbA1cの低下,フィットネスの改善,心血管危険因子(LDL-C除く)の低下も生活習慣強化介入群のほうが大きかった。
[有害事象]
骨折の発生率に差はなかった(1.66/100人・年 vs 1.64/100人・年)。
★結論★過体重または肥満を有する2型糖尿病患者において,減量に焦点を置いた生活習慣強化介入による心血管イベントの減少は認められなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00017953
文献
  • [main]
  • The Look AHEAD research group: Cardiovascular effects of intensive lifestyle intervention in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2013; 369: 145-54. PubMed
    Gerstein HC: Do lifestyle changes reduce serious outcomes in diabetes? N Engl J Med. 2013; 369: 189-90. PubMed
  • [substudy]
  • 減量によるfitness(健康状態;フィットネス)改善とmobility(身体可動性)-可動性喪失が減速。
    生活習慣への強化介入により減量し,フィットネスを改善することにより,身体可動性の喪失を遅延できるかを5,016例で検証した結果:■患者背景:心血管フィットネス*(生活習慣強化介入群7.20, 対照群7.18),心血管疾患既往(14.2, 13.4%),膝痛(43.0, 43.2%)。糖尿病治療薬:経口薬(76.5, 75.3%),インスリン(18.7, 19.1%),非投与(12.8, 12.2%)(経口薬とインスリンの併用も含む)。  * 運動強度を示す代謝等量(metabolic-equivalents [METs]:3.3-16.7のスコアがあり,数値の大きいほうが心血管フィットネス良好)で推定。
    生活習慣強化介入群(2,514例):(1) 体重>7%の減量,(2) >175分/週の運動を目標とした。対照群(2,502例):糖尿病患者サポート・教育プログラム。栄養,身体活動,サポートにフォーカスしたグループセッションを年間3回実施。
    可動性の評価:SF-36の身体機能のサブスケールの11項目中6項目(ランニングや重量挙げのような強度の活動;掃除機の操作,ゴルフのような中等度の活動;階段を登る;屈伸,膝立ち,前かがみ;>1マイルの歩行;1ブロックの歩行)をもとに,1年ごとに評価。
    体重とフィットネス:年に1回体重測定を行い,ベースライン時,1年後,4年後に段階的なトレッドミル負荷により最大MET能で推定。
    2年目と3年目のデータはcarry-forward methodで,METsは標準的な式を使用し,トレッドミルのスピードと傾斜から推定した。
    [エネルギー消費量,体重減量]
    生活習慣強化介入群でエネルギー消費量増加,体重の減量も大きい。
    ・1年後の平均エネルギー消費量の増加は,生活習慣強化介入群:881.0kcal/週 vs 対照群99.2kcal/週(p<0.001)。
    ・4年後の消費エネルギー増加量(/週)は,357.7kcal/週 vs 95.9kcal/週 (p<0.001)。
    ・体重の減量は,生活習慣強化介入群のほうが有意に大きかった(6.15% vs 0.88%, p<0.001)。
    生活習慣強化介入群で可動性喪失のリスクが48%有意に低下。
    可動性に関連する重大な障害は,生活習慣強化介入群は1年後308例(12.3%)→4年後517例(20.6%) vs 対照群は474例(18.9%)→656例(26.2%):ハザード比0.52;95%信頼区間0.44~0.63(p<0.001)。
    [その他の結果]
    ・可動性良好例(強度の運動は不可):38.5% vs 31.9%。
    ・体重1%減量ごとに可動性喪失リスクは7.3%,フィットネスが1%改善するごとに1.4%それぞれ低下した。
    ・有害事象:肉離れ,筋をちがえたものは,生活習慣強化介入群のほうがやや多かった(18.6% vs 15.7%, p=0.006)が,これは1年目のみであった:N Engl J Med. 2012; 366: 1209-17. PubMed
  • 長期生活習慣への介入と寛解-生活習慣強化介入群で大きいが,絶対的な寛解はわずか。
    長期にわたる生活習慣への介入と2型糖尿病からの寛解頻度の関連を検討した副次的観察解析の結果:4,503例(平均年齢59歳,BMI 35.8kg/m²,罹病期間中央値5年,HbA1c[生活習慣強化介入群7.34%,対照群7.37%],空腹時血糖値[154.4mg/dL, 155.6mg/dL],経口血糖降下薬のみ[74.1%, 73.3%])を4年追跡。部分寛解は糖尿病から前糖尿病への移行(血糖降下薬非投与下で空腹時血糖値:100~126mg/dL, HbA1c:5.7~6.5%),完全寛解は糖尿病から正常状態への移行(血糖降下薬非投与下で<100mg/dL,<5.7%)と定義。
    1・4年後の減量は生活習慣強化介入群のほうが有意に大きく,フィットネスの増加も有意に大きかった。
    部分+完全寛解は同群で有意に多かった:1年後;11.5% vs 2.0%,4年後;7.3% vs 2.0%(いずれもp<0.001)。さらに同群では寛解の持続期間が2年以上,3年以上,4年間の患者の割合も高かった。しかし,2~4年後の絶対寛解率は診断から2年以内の症例であっても低かった(3.6% vs 1.9%):JAMA 2012; 308: 2489-96. PubMed
  • 軽度の体重減量により1年後のCVD危険因子が有意に改善。
    1年後の体重減少は血糖,血圧,トリグリセライド(TG),HDL-Cの改善と強く関連した(p<0.0001)が,LDL-Cとは関連しなかった(p=0.79)。体重安定例と比べ,体重が5~<10%減量したものはHbA1cの0.5%低下達成のオッズ比が上昇(3.52;95%信頼区間2.81~4.40),拡張期血圧5mmHg低下,収縮期血圧5mmHg低下,HDL-C 5mg/dL増加,TG 40mg/dL低下。10~15%減量したものでは,ほとんどの危険因子の改善オッズ比はより大きかった:Diabetes Care. 2011; 34: 1481-6. PubMed

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収載年月2012.09
更新年月2013.07