循環器トライアルデータベース

ADOPT
Apixaban Dosing to Optimize Protection from Thrombosis Trial

目的 内科的疾患にて入院中患者における入院期間および退院後長期の静脈血栓塞栓症(VTE)予防投与として,経口直接第Xa因子阻害薬apixabanの延長投与と低分子量heparin(enoxaparin)短期投与とを比較する。
有効性の一次エンドポイントは,30日の治療期間中のVTE関連死+全VTE(致死的・非致死的肺塞栓症,症候性深部静脈血栓症[DVT],標準化された下肢圧迫による血栓のエコー診断により検出された非症候性下肢近位DVT)の複合エンドポイント。
安全性の主要エンドポイントは大出血/臨床的に重要な非大出血/担当医の報告による全出血,心筋梗塞,脳卒中,血小板減少症,全死亡。
コメント 深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症は欧米では院内死因の上位に相応する重要な疾患である。整形外科における股関節手術,膝関節手術など血管損傷と安静を必要とする病態では30-40%の症例に深部静脈血栓が認められる。内科的疾患にて入院した症例でも安静の影響により深部静脈血栓が形成されることが危惧された。本邦では内科疾患にて入院中の症例に,深部静脈血栓予防を行うとの発想もないので,欧米と日本の差異を感じさせる。
本試験では心不全,呼吸不全などの内科疾患にて入院した6,528例を,入院後72時間以内に低分子ヘパリンエノキサパリンの皮下注群と新規経口抗Xa薬アピキサバン30日経口服用群にランダム化した。30日間の治療期間内の静脈血栓塞栓症の発症が,低分子へパリンを初期に使用した症例であっても3%以上あったことは日本と欧米の差異を浮き出させる。アピキサバン服用例であっても2.7%の症例において静脈血栓症を認めた。重篤な出血性合併症はアピキサバン群にて0.5%近い症例に起こっている。観察期間が1ヵ月であることを考えると,この重篤な出血イベントの発症リスクは無視し得ない。本試験にて使用されたアピキサバンは心房細動症例の脳卒中発症予防試験にて使用された用量の半量である。やはり,経口抗Xa薬であっても重篤な出血イベントの増加は避けられないことが明らかにされた。(後藤
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(35か国302施設)。
期間 追跡期間は90日。
登録期間は2007年6月~2011年2月。
対象患者 6,528例。40歳以上。次による入院患者:うっ血性心不全,急性呼吸不全,感染症(敗血性ショックを除く),急性リウマチ障害,炎症性大腸炎で3日以上の入院が予想されるもの;1つ以上のリスク因子(75歳以上,VTEの記録のあるもの/6週以上の抗凝固薬治療を要したVTEの既往,癌,BMI 30kg/m²以上,エストロゲン補充療法,慢性心不全または呼吸不全)を有し(うっ血性心不全/急性呼吸不全による入院患者を除く),中等度~重度の運動制限のあるもの。
除外基準:VTE,非経口・経口抗凝固薬治療の継続を要する疾患,肝疾患,貧血/血小板減少症,重度の腎疾患,enoxaparinアレルギーまたはその疑い,heparin起因性血小板減少症の既往,2剤以上の抗血小板薬または>165mg/日のaspirin服用,出血リスクに関連し得る外科手術から30日以内,VTEの予防のための抗凝固薬投与から14日以内,出血中または出血の高リスクなど。
■患者背景:平均年齢(apixaban群66.8歳,enoxaparin群66.7歳),男性(50.0%, 48.2%),白人(76.0%, 75.6%),入院理由:うっ血性心不全(39.0%, 38.1%);急性呼吸不全(両群とも37.1%);感染症(21.5%, 22.8%),NYHA心機能分類III度(26.2%, 25.5%);IV度(11.7%, 12.6%),慢性呼吸不全(51.7%, 52.0%),BMI 30kg/m²以上(44.5%, 44.3%),中等度の運動制限(73.4%, 71.0%)。
治療法 入院後72時間以内に下記2群にランダム化。
apixaban群(3,255例):apixaban 2.5mg×2回/日経口投与を30日間+enoxaparinプラセボ皮下投与を6日以上,enoxaparin群(3,273例):enoxaparin 40mg/日皮下投与を入院期間中(6~14日)+apixabanプラセボの経口投与を30日間。
投与開始から6日後に担当医の判断で試験薬投与中止を決定した。
165mg/日を超えるaspirinの併用は禁止。退院時(5~14日目)および30日目に圧迫超音波検査を実施した。
結果 一次エンドポイントの評価例は4,495例(apixaban群2,211例,enoxaparin群2,284例)。
[有効性の一次エンドポイント]
30日の治療期間中のVTE関連死+全VTEは,apixaban群60/2,211例(2.71%)vs enoxaparin群70/2,284例(3.06%):相対リスク0.87;95%信頼区間0.62~1.23(p=0.44)。
[有効性の二次エンドポイント]
ランダム化時から非経口治療終了時までのVTE関連死+全VTEは,43/2,485例(1.73%) vs enoxaparin群40/2,488例(1.61%):1.06;0.69~1.63。
[安全性のエンドポイント]
30日の治療期間中の大出血は,15/3,184例(0.47%) vs 6/3,217例(0.19%):2.58;1.02~7.24(p=0.04)。
死亡率は両群とも4.1%であり,心筋梗塞,脳卒中,血小板減少症の発症率にも両群間に有意差はみられなかった。
★結論★急性疾患患者においてapixabanの血栓予防延長投与のenoxaparin短期間投与に比べた優位性は認められず,大出血イベント増加と有意に関連した。
ClinicalTrials. gov No: NCT00457002
文献
  • [main]
  • Goldhaber SZ et al for the ADOPT trial investigators: Apixaban versus enoxaparin for thromboprophylaxis in medically ill patients. N Engl J Med. 2011; 365: 2167-77. PubMed

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収載年月2012.02