循環器トライアルデータベース

PALLAS
Permanent Atrial Fibrillation Outcome Study Using Dronedarone on Top of Standard Therapy

目的 III群抗不整脈薬dronedaroneは間欠性心房細動(AF)患者において洞調律を回復し,入院,死亡を抑制する。さらに,心拍数,血圧を下げ,抗アドレナリン作用を有し,心室性不整脈を予防する可能性がある。
高リスクの永続性AF患者において,標準治療に追加したdronedaroneの主要血管イベント抑制効果を検証する。
一次エンドポイントは2つから成る:脳卒中,心筋梗塞(MI),全身性塞栓症,心血管死の複合エンドポイント;心血管疾患による予定外の入院あるいは死亡。
コメント アミオダロン(amiodarone)は心機能低下例の生命予後を改善することが示されてきたが,ヨードを含むことによる副作用が問題であった。amiodaroneからヨードを除いたdronedaroneは,ATHENA研究で心不全例の心不全増悪による入院を抑制することが示された。しかし,ANDROMEDA研究では,心不全例において主に心不全死増加による心死亡率悪化をきたした。
これらの相反する研究結果に決着をつけるべく計画された本研究の結果は,dronedaroneは洞調律化に勝るといってもその効果はわずかであり(3.7%対1.4%),心血管リスクの高い永続性心房細動例にはdronedaroneは使用すべきではないことを示した。(井上
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(37か国489施設),intention-to-treat解析。
期間 2010年7月19日登録開始,2011年7月5日,データモニタリング委員会は安全性の点から試験中止を勧告し,7月15日,試験中止。
追跡期間は3.5か月(中央値)。
対象患者 3,236例。>65歳の永続性AFあるいは心房粗動で,次の危険因子を複数有するもの:冠動脈疾患(CAD);脳卒中,一過性脳虚血発作(TIA)既往;症候性心不全(NYHA II~III度,前の年に心不全による入院);EF≦40%;末梢動脈疾患(PAD);75歳以上の高血圧または糖尿病。
除外基準:発作性あるいは持続性AF;ICD植込み例;昼間の持続性徐脈<50拍/分;心拍数による補正QT間隔>500msec(ペースメーカー植込み例の場合>530msec)。
■患者背景:平均年齢75歳,AF 98%,男性(dronedarone群64.9%,プラセボ群64.3%)。
登録基準:CAD(40.8%, 41.2%);症候性心不全(14.4%, 14.8%);EF≦40%(21.3%, 20.7%);脳卒中あるいはTIA(26.9%, 28.3%);PAD(11.6%, 13.2%);75歳以上の高血圧または糖尿病(18.2%, 17.1%)。
CHADS2スコア:平均(2.8, 2.9);≧2(88.1%, 89.3%),永続性AF罹病期間>2年(69.1%, 69.5%),心不全:既往なし(31.6%, 33.1%);NYHA I度(14.5%, 12.9%);II度(45.2%, 46.3%),その他の危険因子:MI既往(24.2%, 26.0%);CABG既往(14.6%, 12.7%);恒久性ペースメーカー(14.1%, 13.5%);高血圧(83.5%, 85.7%),糖尿病(35.4%, 37.0%)。
治療法 dronedarone群(1,619例):400mg×2回/日,プラセボ群(1,617例)。
digoxinの慎重投与,血清値のモニターを勧めた。QT間隔を延長する薬剤は投与禁止とした。
結果 2011年7月15日,試験中止。
心拍数(dronedarone群77拍/分,プラセボ群78拍/分)→ 1か月後:-7.6拍/分,+0.1拍/分(p<0.001)
収縮期血圧(両群とも133mmHg)→ 1か月後:-3.5mmHg, -1.7mmHg(p=0.003)。
補正QT間隔(426msec, 425msec)→ 1か月後:+8msec, +2msec(p<0.001)。
digoxin投与例(dronedarone群447例,プラセボ群438例)の7日後の血清値:1.2ng/mL, 0.9ng/mL(p<0.001)。
ビタミンK拮抗薬投与例の治療域内(INR 2.0~3.0)にあった期間(TTR)は55.6%, 58.6%(p=0.02)。
4か月後の洞調律はdronedarone群23/621例(3.7%),プラセボ群9/638例(1.4%);p=0.01。除細動は4例(0.2%),2例(0.1%)に実施。
[治療中止]
dronedarone群348例(21%),プラセボ群178例(11%)(p<0.001)。

[一次エンドポイント]
・脳卒中,MI,全身性塞栓症,心血管死の複合エンドポイントは,dronedarone群43例(8.2%/年) vs プラセボ群19例(3.6%/年):dronedarone群のプラセボ群に比べたハザード比2.29;95%信頼区間1.34~3.94(p=0.002)。
心血管疾患による予定外の入院あるいは死亡は,127例(25.3%/年) vs 67例(12.9%/年):1.95;1.45~2.62(p<0.001)。
[その他の結果]
全死亡:25例(4.7%/年) vs 13例(2.4%/年):1.94;0.99~3.79(p=0.049),うち心血管死が21例(4.0%/年) vs 10例(1.9%/年):2.11;1.00~4.49(p=0.046),不整脈死が13例(2.5%/年) vs 4例(0.8%/年):3.26;1.06~10.0(p=0.03)。
脳卒中:23例(4.4%/年) vs 10例(1.9%/年):2.32;1.11~4.88(p=0.02),うち脳梗塞が18例(3.4%/年) vs 9例(1.7%/年):2.01;0.90~4.48(p=0.08)。
MI,不安定狭心症:15例(2.9%/年) vs 8例(1.5%/年):1.89;0.80~4.45(p=0.14)。
心血管イベントによる予定外の入院:113例(22.5%/年) vs 59例(11.4%/年):1.97;1.44~2.70(p<0.001)。
心不全による入院:43例(8.3%/年) vs 24例(4.6%/年):1.81;1.10~2.99(p=0.02)。
心不全,入院:115例(23.2%/年) vs 55例(10.7%/年):2.16;1.57~2.98(p<0.001)。
[有害事象]
多かったのは下痢,無力症,悪心,嘔吐,めまい,呼吸困難,徐脈。
アラニン・アミノトランスフェラーゼの正常上限値の3倍以上の上昇(1.5% vs 0.5%, p=0.02)。
★結論★主要血管イベント高リスクの永続性心房細動患者において,dronedaroneにより心不全,脳卒中,心血管死リスクが増大した。
ClinicalTrials.gov No: NCT01151137
文献
  • [main]
  • Connolly SJ et al for the PALLAS investigators: Dronedarone in high-risk permanent atrial fibrillation. N Engl J Med. 2011; 365: 2268-76. PubMed
    Nattel S: Dronedarone in atrial fibrillation - Jekyll and Hyde? N Engl J Med. 2011; 365: 2321-2. PubMed

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収載年月2012.01