循環器トライアルデータベース

AIM-HIGH
Atherothrombosis Intervention in Metabolic Syndrome with Low HDL/High Triglycerides and Impact on Global Health Outcomes

目的 スタチンによりLDL-Cを目標値まで低下しても,心血管残存リスクがある。
脂質異常症を合併したアテローム性動脈硬化患者において,スタチン(simvastatin)によるLDL-C強力低下治療へ徐放性ナイアシンを追加投与した場合の心血管イベント抑制効果をsimvastatin単剤投与と比較する。

一次エンドポイントは,冠動脈疾患(CAD)死,非致死的心筋梗塞(MI),脳梗塞,急性冠症候群(ACS)による23時間以上の入院,症候性のCADまたは脳血管疾患に対する血行再建術の複合エンドポイント。
コメント N Engl J Med. 2011; 365: 2255-67. へのコメント
HDL-C上昇による効果をみた試験としてARBITER-6-HALTSという試験が2年前に発表されている。本試験ではナイアシンによるHDL-C上昇が,エゼチミブによるLDL-C低下に勝って頸動脈内膜-中膜(IMT)肥厚を改善したとする結論を導いている。しかし,IMTはいわばサロゲートマーカーであり,真のエンドポイントである総死亡や心血管イベントに対する有効性を示し得ているわけではなかった。本試験はこの点について検討を加えた大規模臨床試験である。本試験は3000名以上の低HDL-C血症を示す患者を3年間フォローした試験であり,約25%のHDL-Cの上昇を示したにかかわらず,心血管疾患の発症抑制は認められず,むしろ脳梗塞リスクが増加したことから予定より早く試験が中止された。脳梗塞リスクは必ずしも有意に増加したのではないので,むしろ心血管イベントの抑制効果が全く期待できなかったためと考えられる。この点については新規ナイアシンによる大規模臨床試験が別途進行中であり,結論は待ちたいところである。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(アメリカ,カナダの92施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は36か月。
対象患者 3,414例。45歳以上の心血管疾患患者(安定CAD,脳血管疾患あるいは頸動脈疾患,末梢動脈疾患[PAD]),スタチンを投与していない場合の脂質値:HDL-C:男性は<40mg/dL,女性は<50mg/dL;トリグリセライド (TG)150~400mg/dL;LDL-C<180mg/dL。
除外基準:4週間以内のACSによる入院例;血行再建術予定例;8週間以内の脳卒中。
■患者背景:平均年齢63.7歳,男性(simvastatin+niacin群85.3%,simvastatin+プラセボ群85.2%),白人(91.5%, 92.9%),既往:MI(両群とも56.3%);高血圧(72.8%, 70.1%);糖尿病(34.2%, 33.6%),診断:CABG(34.9%, 37.0%);PCI(61.5%, 61.6%);脳卒中,脳血管疾患(20.8%, 21.3%);PAD(両群とも13.6%);メタボリックシンドローム(82.3%, 79.8%)。
糖尿病既往例の血糖値(126.9mg/dL, 126.4mg/dL),HbA1c値(6.70%, 6.68%),インスリン(25.32μU/mL, 25.63μU/mL)。
スタチン治療例(92.8%, 94.4%):治療期間;<1年(11.8%, 11.2%);1~5年(36.5%, 37.1%);>5年(38.9%, 40.3%),niacinあるいはNiaspan投与歴(18.9%, 19.9%:登録の30日前に投与中止),β遮断薬(80.2%, 79.1%),ACE阻害薬,ARB(73.2%, 74.9%),aspirin,その他の抗血小板薬,抗凝固薬(97.8%, 97.5%)。
治療法 登録の4週間以上前に,スタチンとコレステロールトランスポーター阻害薬ezetimibe以外の脂質治療薬は投与を中止した。
オープンラベルによる4~8週間のrun-inにsimvastatin 40mg/日+niacin 500mg~2000mgを週ごとに増量投与。
LDL-C 40~80mg/dLを維持するためにsimvastatinの用量を調整し,目標LDL-Cを達成するためにezetimibe 10mg/日を併用することとした。
simvastatin+niacin群(1,718例):simvastatin+ezetimibeに,niacin 1500~2000mg/日を追加投与。
simvastaitn+プラセボ群(1,696例):simvastatin+ezetimibeに,プラセボ(50mgのniacinを含む)を追加。
結果 2012年12月まで追跡予定であったが,2011年4月25日データ安全モニタリング委員会は,niacinの有効性が確認できないことと,予測外の脳梗塞リスク増大のため試験の中止を勧告し,試験を実施していたNHLBIはその勧告を受け入れた。
[脂質値の変化]
LDL-C:simvastatin+niacin群(ベースライン時76.2→ 1年後66.4→ 2年後65.0→ 3年後65.2mg/dL), simvastaitn+プラセボ群(75.8→ 70.4→ 69.5→ 68.3mg/dL),
TG(中央値):164→ 121→ 122→ 120mg/dL, 162→ 155→ 153→ 152mg/dL,
HDL-C:34.8→ 43.6→ 43.9→ 44.1mg/dL, 35.3→ 38.4→ 38.7→ 39.1mg/dL。
[有害事象,アドヒアランス]
simvastatin+niacin群 vs simvastaitn+プラセボ群
試験薬(niacin)用量減量:109例(6.3%),58例(3.4%);p<0.001。
おもな減量の理由:紅潮,そう痒(57例,23例),患者の希望(13例,11例),その他の臨床上の理由(21例,10例)。
投与中止:436例(25.4%),341例(20.1%);p<0.001。
中止時期:568.1日後,579.6日後。
おもな中止理由:紅潮,そう痒(104例,43例),患者の希望(126例,137例),その他の臨床上の理由(96例,95例)。
全体のアドヒアランス:≧75%(90.0%, 93.3%);50~<75%(8.1%, 5.4%);<50%(1.9%, 1.3%)。
調整後のスタチン用量:20mg/日(13.3%, 8.0%);40mg/日(49.5%, 50.2%);80mg/日(17.5%, 24.7%),ezetimibe使用(9.5%, 21.5%)。
[一次エンドポイント:CAD死,非致死的MI,脳梗塞,ACSによる23時間以上の入院,症候性のCADまたは脳血管疾患に対する血行再建術の複合エンドポイント]
simvastatin+niacin群282例(16.4%) vs simvastaitn+プラセボ群274例(16.2%):niacin群のハザード比1.02;95%信頼区間0.87~1.21(p=0.80 for the superiority of niacin therapy, p=0.79 by the log-rank test)。
複合エンドポイント構成エンドポイントの結果:
CAD死:20例 vs 26例,非致死的MI:92例 vs 80例,脳梗塞:27例 vs 15例,ACSによる入院:63例 vs 67例,症状による血行再建術:80例 vs 86例。
★結論★LDL-C<70mg/dLのアテローム性動脈硬化患者において,36か月間のniacinのスタチンへの追加によりHDL-CおよびTGは改善したが,転帰に対する上乗せ効果は認められなかった。
ClinicalTrials gov: NCT00120289
文献
  • [main]
  • AIM-HIGH investigators: Niacin in patients with low HDL cholesterol levels receiving intensive statin therapy.N Engl J Med. 2011; 365: 2255-67. PubMed
    Giugliano RP: Niacin at 56 years of age — time for an early retirement? N Engl J Med. 2011; 365: 2318-20. PubMed
  • [substudy]
  • niacin+LDL-C低下治療とリポ蛋白,CVD-リポ蛋白はniacin上乗せ治療の有効性も有害性も予測せず。
    niacin治療とリポ蛋白,心血管イベント(CVD)の関連を検討した結果:ベースライン時の,HDL-C(第1三分位:<33mg/dL)を除くいずれのリポ蛋白,脂質の三分位の第3三分位(LDL-C:≧82mg/dL,トリグリセライド[TG]:≧198mg/dL,non-HDL-C:≧198mg/dL,総コレステロール(TC)/HDL-C:≧4.5,TG/HDL-C:≧1.8)においても,CVDとniacinの関連はみられなかった。対照(simvastatin+プラセボ)群ではLDL-C,non-HDL-C,TC/HDL-CとCVDとは正の関係にあった。
    高TG(第3三分位)+低HDL-C(第1三分位)例でniacin上乗せ群の有効な傾向がみられた(ハザード比0.74;95%信頼区間0.50~1.09, p=0.073):J Am Coll Cardiol. 2013; 62: 1580-4. PubMed
  • リポ蛋白と心血管転帰-リポ蛋白(a)は心血管イベントリスクと関連。simvastatin+niacinはリポ蛋白を改善するもイベントリスクは低下せず。
    アポリポ蛋白A-1(apo-A1),B(apo-B),リポ蛋白(a)(Lp(a))と心血管イベントの関係を検討した結果:ベースライン時のapoB, apoB/ apo-A1はsimvastaitn+プラセボ群のみで心血管イベントを有意に予測した(それぞれのハザード比[HR]:1.17[p=0.018], 1.19[p=0.016])。ベースライン時および追跡期間中のLp(a)は両群で心血管イベントを予測した(simvastatin+niacin群:ベースライン時値;1.25[p=0.001],追跡期間値;1.18[p=0.028]),simvastaitn+プラセボ群:1.24[p=0.002], 1.21[p=0.017])。
    simvastatin+niacin群では1年後のリポ蛋白が改善した(apo-A1:+7%, apo-B:-13%, apoB/ apo-A1:-19%, Lp(a):-21%)が,心血管イベントは低下しなかった(それぞれのHR:1.03, 1.04, 1.06, 1.18):J Am Coll Cardiol. 2013; 62: 1575-9. PubMed

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収載年月2012.01
更新年月2013.12