循環器トライアルデータベース

ACT
Acetylcysteine for Contrast-induced Nephropathy Trial

目的 造影剤による急性腎機能障害は透析の導入,入院期間延長を要する重大な合併症である。抗酸化作用を有し腎血行動態を改善する安全,安価なアセチルシステインが期待されているが,臨床試験の結果は一致せず,現行ガイドラインはその使用を認めていない。
血管造影を実施する造影剤腎症リスク患者において,アセチルシステインの有効性の有無を明らかにする。
一次エンドポイントは,急性造影剤腎症(造影後48~96時間の血清クレアチニン≧25%上昇)。
コメント 造影剤腎症に対するN-アセチルシステインの効果については,長年議論されてきた。2000年のTepelらによる無作為化試験のN Engl J Med誌における発表(N Engl J Med. 2000; 343: 180-4. PubMed)以来,約40件の臨床試験が実施されているとのことである。一方,慢性腎臓病(CKD)の考え方が定着して以来,糸球体濾過率のわずかな低下でも長期予後に影響することも意識されるようになった。造影剤検査による糸球体濾過率の減少は軽度であっても,心腎連関の視点からは,心血管病の予後に影響することも考えられる。検査実施における慎重な症例選択と,造影剤腎症の予防法の開発は極めて重要である。
ACT試験ではN-アセチルシステインの有効性を示すことは出来なかった。一次エンドポイントを血清クレアチニンの25%上昇としていることは,診療上は妥当なものと思える。しかしながら,血清クレアチニンの上昇が25%未満であっても,CKDのステージが進んでしまった症例では,心血管病の長期予後を悪化させていることも考慮されるべきである。(中村中野永井
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(ブラジルの46施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は30日。
登録期間は2008年9月~2010年7月。
対象患者 2,308例。危険因子(>70歳;慢性腎不全〔クレアチニン>1.5mg/dL〕;糖尿病;うっ血性心不全;EF<0.45;低血圧)の1つ以上を有する血管造影,PCI施行例。
除外基準:透析例;primary 血管形成術を施行するST上昇型心筋梗塞;<45歳など。
■患者背景:平均年齢(アセチルシステイン群68.0歳,プラセボ群68.1歳),女性(38.0%, 39.3%),登録基準:クレアチニン>1.5mg/dL(15.4%, 16.0%);糖尿病(61.2%, 59.7%);心不全(9.9%, 9.2%);低血圧(0.3%, 0.2%);>70歳(51.3%, 52.9%)。
急性冠症候群(35.8%, 34.9%),高血圧既往(86.5%, 85.9%),クレアチニン(両群とも1.2mg/dL),推定クレアチニンクリアランス(67.6mL/分,67.7mL/分),推定糸球体濾過量(69.3mL/分/1.73m², 69.0mL/分/1.73m²)。
薬物治療:非ステロイド性抗炎症薬>7日(5.4%, 5.2%),ACE阻害薬(59.6%, 58.2%),利尿薬(37.7%, 35.3%),metformin(30.9%, 29.6%)。
治療法 アセチルシステイン群(1,172例):血管造影の前後に1,200mgを12時間ごとに経口投与,プラセボ群(1,136例)。
データはベースライン時,血管造影施行時,血管造影の48~96時間後,30日後に入手。
結果 診断のための冠動脈造影は67.2%,PCIは28.8%,末梢血管造影は2.8%。
ランダム化後の造影取り消しは27例(1.2%)。低浸透圧造影剤の使用が最も多く(74.7%),およそ半数が>100mL使用。
コンプライアンスは>95%。
造影からクレアチニン測定までの時間はアセチルシステイン群57.6時間,プラセボ群58.2時間,大半の患者(76.4%)が造影後48~72時間に測定。
血管造影前ハイドレーション:NaCl 0.9%(1mL/kg/時)6時間(47.1%, 47.5%),スキームにかかわらないNaCl 0.9%(93.0%, 94.3%),重炭酸塩(5.1%, 4.6%)。 血管造影後ハイドレーション:NaCl 0.9%(1mL/kg/時)6時間(69.4%, 69.7%),スキームにかかわらないNaCl 0.9%(96.3%, 96.8%),重炭酸塩(5.6%, 5.5%)。
[一次エンドポイント]
アセチルシステイン群12.7% vs プラセボ群12.7%:相対リスク1.00;95%信頼区間0.81~1.25(p=0.97)。
[その他]
クレアチニン≧0.5mg/dLの上昇*:3.9% vs 3.8%:相対リスク1.04;0.69~1.57(p=0.85)。
クレアチニン値倍化:1.1% vs 1.5%:0.74;0.36~1.52(p=0.41)。
・30日後の転帰:死亡,透析の必要*の複合エンドポイント(2.2% vs 2.3%:0.97;0.56~1.69, p=0.92),総死亡*(2.0% vs 2.1%:0.97;0.54~1.73, p=0.92),透析の必要(0.3% vs 0.3%;0.87:0.17~4.35, p=0.86),心血管死*(1.5% vs 1.6%:0.99;0.51~1.90, p=0.97)。
有害事象:アセチルシステイン群で有意に少なかったのは嘔吐(0.3% vs 1.2%, p=0.02),重篤な有害イベントは1.3% vs 2.2%(p=0.09)。
* 二次エンドポイント。
★結論★冠動脈・末梢血管造影実施リスク例において,アセチルシステインの急性造影剤腎症,転帰の抑制効果は認められなかった。
ClinicalTrials Gov No: NCT00736866
文献
  • [main]
  • ACT investigators: Acetylcysteine for prevention of renal outcomes in patients undergoing coronary and peripheral vascular angiography: main results from the randomized acetylcysteine for contrast-induced nephropathy trial (ACT). Circulation. 2011; 124: 1250-9. PubMed

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収載年月2011.12