循環器トライアルデータベース

ISAR-TEST 5
Intracoronary Stenting and Angiographic Results: Test Efficacy of Sirolimus- and Probucol-Eluting versus Zotarolimus-Eluting Stents

目的 薬剤溶出性ステント植込み後の中・長期有害事象には,耐久性ポリマーコーティングに対する炎症反応の関与が指摘されている。ISARステントプロジェクトでは,市販の微小孔性金属ステントを用いて,sirolimusと脂質低下薬probucolの2剤を溶出するポリマーフリーステントを新たに開発した。
ISAR-TEST 5は,sirolimus+probucol溶出ステントの有効性および安全性を,新世代のzotarolimus溶出耐久性ポリマーステントと比較する非劣性試験。
一次エンドポイントは,1年後の心臓死+標的血管関連心筋梗塞(MI)+標的病変再血行再建術の複合エンドポイント。
コメント ISAR-TEST 5試験は3002例のPCI施行予定患者において,German Heart Center自家製のポリマーフリーのsirolimus/ probucol溶出性ステント (2002例) のdurable ポリマーのzotarolimus溶出性ステント ( RESOLUTETM ) (1000例)に対する非劣性を検証する試験である。プライマリーエンドポイントである12ヵ月のtarget-lesion failureは13.1%と13.5%でsirolimus/ probucol溶出性ステントのzotarolimus溶出性ステントに対する非劣性が証明された。本試験では76%-77%の患者に追跡造影が施行されており,再狭窄率やin-stent late lossなどの造影上のパラメーターにも差が見られず,1年の時点でのポリマーフリーのsirolimus/ probucol溶出性ステントの再狭窄抑制効果はdurable ポリマーのzotarolimus溶出性ステントと同等であると言える。すでに報告されているISAR-TEST 2試験ともよく一致する結果である。
第一世代の薬剤溶出性ステント ( DES ) の問題点として,1年以降の超遅発性ステント血栓症や遅発性再狭窄などの遅発性の有害事象が挙げられ,その原因としてdurable ポリマーの問題点を解決する方法として生体吸収性ポリマーDESや完全生体吸収性DESの開発が進められ,その長期成績が評価されつつある。ポリマーフリーのsirolimus/ probucol溶出性ステントもDESの長期成績改善を目的とした,新たなカテゴリーのDESに属するものであるが,今後の長期追跡結果の報告が待たれるところである。(木村
デザイン 無作為割付け,多施設(ドイツの2施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は1年。
登録期間は2008年2月~2009年8月。
対象患者 3,002例。>18歳,固有冠動脈に新規の≧50%狭窄があり,虚血症状もしくは心筋虚血(誘発または自然発症)を認める患者。
除外基準:左主幹部病変,心原性ショックなど。
■患者背景:年齢(sirolimus+probucol溶出ステント群67.7歳,zotarolimus溶出ステント群68.1歳),女性(23.5%, 23.7%),糖尿病(28.7%, 29.5%),高血圧(66.7%, 66.6%),高コレステロール血症(62.8%, 65.0%),MI既往(29.3%, 29.9%),多枝病変(82.3%, 85.5%),臨床所見:不安定狭心症(29.8%, 32.5%);安定狭心症:(59.5%, 57.9%),EF(52.6%, 52.4%)。
冠動脈造影(CAG)背景:標的血管:左前下行枝(45.2%, 45.0%);右冠動脈(30.4%, 28.9%);左回旋枝(24.4%, 26.1%);分岐部病変(27.4%, 28.9%);入口部病変(20.0%, 20.6%), B2/C病変(74.3%, 73.6%),病変長(16.4mm, 16.9mm),血管径(2.78mm, 2.80mm),ステント長(25.9mm, 26.8mm;p=0.01)。
治療法 sirolimus+probucol溶出ステント群(2,002例),zotarolimus溶出ステント群(1,000例)。
2本(/病変)以上のステント使用を可とし,追跡CAGを6~8か月後に実施した。
結果 1年追跡完遂者は57例(1.9%)を除く全例。非完遂者における追跡期間(中央値)は6.0か月。
追跡CAG実施例:sirolimus+probucol溶出ステント群1,536例(77%),zotarolimus溶出ステント群756例(76%)。
治療病変数はそれぞれ2,912,1,479,2病変以上の治療例はそれぞれ35.7%, 37.8%。
最小血管径:手技前;sirolimus+probucol溶出ステント群0.91mm,zotarolimus溶出ステント0.90mm→手技後;2.54mm, 2.58mm;p=0.04)。

[一次エンドポイント:1年後の心臓死+標的血管関連MI+標的病変再血行再建術の複合エンドポイント]
sirolimus+probucol溶出ステントはzotarolimus溶出ステントに対して非劣性であった。
258例(13.1%)vs 132例(13.5%),非劣性p=0.006:ハザード比0.97;95%信頼区間0.78~1.19:優越性p=0.74)。
[二次エンドポイント:全死亡,ステント血栓症,CAGによる再狭窄など]
いずれの項目も両群間は同等であった。
全死亡:3.6% vs 4.7%:0.75;0.52~1.08(p=0.13)。
心臓死+標的血管関連MI:4.1% vs 4.3%:0.94;0.65~1.36(p=0.72)。
definite/probableステント血栓症:1.1% vs 1.2%:0.91;0.45~1.84(p=0.80)。
セグメント内binary再狭窄:13.3% vs 13.4%(p=0.95)。
ステント内遠隔期損失径:0.31mm vs 0.30mm(p=0.50)。
★結論★12か月後の臨床転帰において,ポリマーフリーのsirolimus+probucol溶出ステントの新世代zotarolimus溶出耐久性ポリマーステントに対する非劣性が認められた。
ClinicalTrials gov. No: NCT 00598533
文献
  • [main]
  • Massberg S et al on behalf of the intracoronay stenting and angiographic results: test efficacy of sirolimus- and probucol-eluting versus zotarolimus- eluting stents (ISAR-TEST 5) investigators: Polymer-free sirolimus- and probucol-eluting versus new generation zotarolimus-eluting stents in coronary artery disease: the intracoronary stenting and angiographic results: test efficacy of sirolimus- and probucol-eluting versus zotarolimus-eluting stents (ISAR-TEST 5) trial. Circulation. 2011; 124: 624-32. PubMed
  • [substudy]
  • 10年後の臨床転帰においても,ポリマーフリーのsirolimus/probucol溶出ステントとzotarolimus溶出ステントに大きな違いは認められず,ステント血栓症発症率はいずれも同様に低かった。
    10年後の生存率は,63.9%。追跡期間中央値は,10.3年。本解析の一次エンドポイントは,10年後のデバイス指向複合エンドポイント[DOCE:心臓死,標的血管関連MI,標的病変再血行再建]。追加エンドポイントは10年後の患者指向複合エンドポイント[POCE:全死亡,MI,再血行再建およびそれらの各項目,definite/probableステント血栓症]。
    [一次エンドポイント:10年後のDOCE発生率の比較]
    • sirolimus/probucol溶出ステント 43.8% vs. zotarolimus溶出ステント 43.0%(HR 1.01; 95%CI 0.89~1.14; P =0.90)で,群間差は認められなかった。
    • 一次エンドポイントの項目ごとの発生率も同等。
    [10年後のPOCE発生率の比較]
    • sirolimus/probucol溶出ステント 66.2% vs. zotarolimus溶出ステント 67.7%(HR 0.94; 95%CI 0.86~1.04; P =0.22)。
    • POCEの項目ごとの発生率についても差は認められず。
    [10年後のdefinite/probableステント血栓症発生率の比較]
    • 安全性の評価項目であるステント血栓症の発生率についても,sirolimus/probucol溶出ステントとzotarolimus溶出ステントに差は認められなかった(1.6% vs. 1.9%; HR 0.85; 95%CI 0.46~1.54; P =0.58)。

    <ランドマーク解析>
    指標となるPCI施行後1年~10年のランドマーク解析におけるdefinite/probableステント血栓症の発生率は同等かつ両群とも低かった(0.5% vs. 0.7%; HR 0.69; 95%CI 0.22~2.16; P =0.52)。
    これらの結果から,ステント留置後のDAPT期間の検討において,ポリマーの有無を考慮する必要はないことが示唆された。
    Kufner S, et al for the ISAR-TEST-5 Investigators: 10-Year Outcomes From a Randomized Trial of Polymer-Free Versus Durable Polymer Drug-Eluting Coronary Stents. J Am Coll Cardiol. 2020; 76: 146-58. PubMed

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収載年月2011.10
更新年月2020.08