循環器トライアルデータベース

APPRAISE-2
Apixaban for Prevention of Acute Ischemic Events 2

目的 急性冠症候群(ACS)後の高リスク患者において,経口直接第Xa因子阻害薬apixabanを標準的抗血小板療法(aspirin,P2Y12受容体拮抗薬)に追加した場合,虚血イベント再発抑制効果が出血リスクを上回るかを検証する。
有効性の一次エンドポイントは心血管死+心筋梗塞(MI)+脳梗塞の複合エンドポイント。
安全性の一次エンドポイントはTIMI基準による大出血。
コメント 心筋梗塞を惹起する冠動脈の塞栓血栓の主成分はフィブリンである。血栓形成の初期段階を阻害する抗血小板薬に抗凝固薬を加えれば効率的な心筋梗塞予防効果が期待された。しかし,発症7日以内の急性冠症候群7,392例のランダム化比較試験では抗Xa薬であるapixabanを追加しても出血イベントリスクを上回る血栓イベントリスクの低減を期待できないとデータモニタリング委員会が判断して本試験は中止された。抗凝固薬が阻害するのは冠動脈を閉塞する大きな血栓によるQ波性の心筋梗塞である。論文では心筋梗塞がイベントとして多く起こっているのは分かるが,このうちバイオマーカーにて認識された心筋梗塞とQ波性心筋梗塞の差異は分からない。商業的には広い適応を狙った試験がいいのであろうが,真の意味での抗Xa薬の有用性は,抗血小板薬を何らかの理由にて十分に使用できない症例におけるQ波性心筋梗塞の発症率の低下では示せるかもしれない。(後藤
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(日本を含む39か国858施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は241日(中央値)。
登録期間は2009年3月17日~’10年11月18日。
対象患者 7,392例。ACS発症後7日以内(ST上昇を問わないMIまたは不安定狭心症;心筋虚血症状が安静時に10分以上持続,かつ心筋バイオマーカー上昇または動的ST下降あるいは0.1mV以上の上昇)の患者のうち,状態が安定し,ACS後にaspirinまたはaspirin+P2Y12受容体拮抗薬による治療を受けており,さらに下記の危険因子の2つ以上を保有するもの:≧65歳,糖尿病,過去5年以内のMI,脳血管疾患,末梢血管疾患(PAD),ACSに伴う心不全またはEF<40%,クレアチニンクリアランス<60mL/分の腎機能障害,ACS後の血行再建術非施行。
■患者背景:年齢(中央値)67歳,女性(apixaban群32.6%,プラセボ群31.7%),危険因子:≧65歳(58.8%, 59.0%),糖尿病(48.7%, 47.0%);MI(24.9%, 27.5%);脳血管疾患(10.2%, 9.9%);PAD(17.9%, 18.3%);心不全/EF<40%(40.2%, 40.1%);腎機能障害(28.3%, 29.5%);ACS後の血行再建術非施行(55.6%, 55.2%),ACS:ST上昇型MI(39.8%, 39.4%);非ST上昇型MI(41.4%, 41.8%);不安定狭心症(18.2%, 18.1%),ACSの治療:冠動脈造影(51.9%, 52.3%);PCI(43.8%, 44.2%);薬物治療のみ(55.6%, 55.2%)。
ACS発症~ランダム化までの時間(中央値)は6.0日,aspirin服用者97%,aspirin+P2Y12受容体拮抗薬(おもにclopidogrel)併用者81%。
治療法 apixaban群(3,705例):5mg×2回/日(クレアチニンクリアランス<40mL/分の患者は2.5mg×2回/日)。
プラセボ群(3,687例)。
結果 apixaban群で臨床的に重要な出血イベントが増加し,そのリスクを相殺する虚血イベント抑制効果が認められなかったため, 本試験は早期に中止された。
[服薬状況]
試験期間中にapixaban群の23.5%,プラセボ群の20.5%が試験薬の投与を中止(p=0.002)。有害事象による投与中止は8.5% vs 6.5%。
ランダム化時,aspirin+P2Y12受容体拮抗薬併用投与例のうち1,310例(21.5%)がP2Y12受容体拮抗薬の投与を中止し,aspirin投与例のうち135例(11.1%)がP2Y12受容体拮抗薬の投与を開始した。
[一次エンドポイント]
・心血管死+MI+脳梗塞の複合エンドポイントの発生率に有意な群間差は認められなかった。
apixaban群279例(7.5%;13.2イベント/100人・年) vs プラセボ群293例(7.9%;14.0イベント/100人・年):ハザード比0.95;95%信頼区間0.80~1.11(p=0.51)。
・TIMI基準による大出血(on-treatment解析)は,apixaban群がプラセボ群に比べて有意に多かった。
46/3,673例(1.3%;2.4イベント/100人・年) vs 18/3,642例(0.5%;0.9イベント/100人・年):2.59;1.50~4.46(p=0.001)。
[二次エンドポイント]
・心血管死+MI+脳梗塞+不安定狭心症の複合エンドポイントに有意な群間差はなかった。
9.5% vs 10.0%:0.94;0.82~1.09(p=0.43)。
・複合エンドポイントの各構成イベントも有意な群間差はみられなかった。
心血管死(2.8% vs 3.0%),MI(4.9% vs 5.3%),脳梗塞(0.6% vs 0.9%),不安定狭心症(2.3% vs 2.4%)。
・ISTH基準による大出血(2.48;1.72~3.58, p<0.001),GUSTO基準による重度の出血(3.05;1.59~5.86, p=0.001)もapixaban群がプラセボ群に比べ有意に多かった。
apixaban群では頭蓋内出血(0.3% vs 0.1%:4.06;1.15~14.38, p=0.03),致死的出血(5例vs 0例)も多かった。
[サブグループ]
aspirin投与例とaspirin+P2Y12受容体拮抗薬併用投与例の結果は,一次エンドポイントについては同様(交互作用のp=0.87)。出血イベントについても結果は変わらなかったが(2剤併用投与例1.3% vs 0.6%:2.27;1.28~4.02,aspirin投与例 1.1% vs 0.1%),大出血イベントはaspirin単剤投与のほうが少なかった。
★結論★ACS後の高リスク患者において,標準的抗血小板療法へのapixaban 5mg×2回/日の追加投与はプラセボに比べて大出血イベントを増加し,虚血イベントの再発抑制効果も認められなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00831441
文献
  • [main]
  • Alexander JH et al for the APPRAISE-2 investigators: Apixaban with antiplatelet therapy after acute coronary syndrome. N Engl J Med. 2011; 365: 699-708. PubMed

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収載年月2011.08