循環器トライアルデータベース

Early ACTID
Early Activity in Diabetes

目的 2型糖尿病の初期治療において,医療従事者の指導による身体活動量の増加と食事管理はきわめて重要だが,それらが血糖および血圧コントロールにもたらす効果を比較検討した大規模試験はない。英国では,新規診断2型糖尿病患者に対して個別の食事指導は行われるが,身体活動については訓練を受けた医療者が少なく,個々の患者に必要な情報を提供できているとは言い難い。そのため,ケアの見直しと医療者の訓練が必要と考えられるが,身体活動と食事療法を合わせて行うことの有効性を明確に示す必要がある。
新規発症2型糖尿病患者において,強化食事療法に身体活動介入を加えることにより,血糖,血圧,脂質,およびインスリン抵抗性がより改善するかを検証した。
一次エンドポイントは,6か月後のHbA1cおよび血圧の改善。
コメント 食事療法に運動療法を加えることが果たして血糖コントロールにどれほどの良い影響があるのか?HbA1cと血圧値をプライマリーエンドポイントとしたこの検討では通常療法と強化食事療法の間には有意差があったが,身体活動を追加してもさらなる改善は見いだせなかった。しかし,あくまで,HbA1cおよび血圧値に改善がなかったのである。個々の臨床マーカーに着目すると強化食事療法群と強化食事療法+身体活動の間に差が見いだされたのは身体活動度のみであり,傾向が認められたのはHOMA-IR(P=0.084),空腹時血糖値(P=0.06)のみで,体重には有意差は認められなかった。あくまでコントロール値に関する短期間のエンドポイントを見ているのであって,すぐさま運動療法不要論に移行することがないように心がけておきたい。(弘世
デザイン 無作為割付け,多施設(英国の保健サービス[NHS]トラスト5団体の二次医療施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間12か月。
登録期間は2005年12月~’08年9月,追跡終了は2009年9月。
対象患者 593例。30~80歳,2型糖尿病の診断から5~8か月後の患者。
除外基準:HbA1c>10%,血圧>180/100mmHg,LDL-C>155mg/dL,BMI<25kg/m²,体重>180kg,減量薬を使用,最大用量のSU薬を使用,不安定狭心症,過去3か月以内の心筋梗塞など。
■患者背景:平均年齢(通常治療群59.5歳,強化食事療法群60.1歳,強化食事療法+身体活動群60.0歳),男性(63%, 64%, 66%),白人(97%, 96%, 94%),既婚あるいは長期間のパートナーがいる(72%, 76%, 78%),診断後の日数(中央値)(185日,186日,194日),血圧(135/80mmHg, 133/79mmHg, 133/79mmHg),HDL-C(52mg/dL, 50mg/dL, 50mg/dL),LDL-C(91mg/dL, 89mg/dL, 89mg/dL),トリグリセライド(TG:149mg/dL, 151mg/dL, 150mg/dL),体重(93.9kg, 90.2kg, 91.1kg),腹囲(108cm, 106cm, 107cm)。
治療状況:metformin(32%, 37%, 34%),SU薬(7%, 8%, 9%),RA系阻害薬(47%, 53%, 46%),サイアザイド系利尿薬(24%, 23%, 21%),β遮断薬(20%, 19%, 16%),Ca拮抗薬(14%, 21%, 19%),スタチン(64%, 63%, 60%)。
治療法 下記3群に2:5:5にランダム化。
対照(通常治療)群(99例):割付け時に標準的な食事および運動に関するアドバイスを行い,6か月ごとに試験担当医師および看護師が調査。
強化食事療法群(248例):5~10%の体重減とその維持を目指す。最初に患者と相談して目標を設定し,3か月ごとに栄養士との面談を実施。さらに6週ごとの看護師面談で,食事指導と目標を強化。
強化食事療法+身体活動群(246例):強化食事療法に加えて,現在の身体活動量+≧30分の速歩を≧週5日実施。運動量を5週間かけて徐々に増やし,以後維持。看護師との面談時に日誌の記録についてのカウンセリングを実施。
割付けを知らされていない医師が,下記のプロトコールに従って血糖,血圧,脂質の治療を変更:最初の6か月間は,血糖値>216mg/dL,有症状,もしくは血圧>160/90mmHgの場合にのみ治療を変更;次の6か月間は目標値(HbA1c<7.4%,血圧<140/85mmHg,総コレステロール<155mg/dL,HDL-C>39mg/dL,LDL-C<77mg/dL,TG<177mg/dL)を維持するよう適宜治療を実施。
結果 転帰データが得られたのは,6か月後587例(99%),12か月後579例(98%)。
[一次エンドポイント:6か月後のHbA1c,血圧]
血糖コントロールは,6か月後に通常治療群で悪化したが(ベースライン時;6.72%→ 6か月後;6.86%→ 12か月後;6.81%),強化食事療法群(6.64%→ 6.57%→ 6.55%),強化食事療法+身体活動群(6.69%→ 6.60%→ 6.65%)では改善し,12か月後も持続していた。
通常治療群と比較した6か月後のHbA1c値の低下は,強化食事療法群-0.28%(95%信頼区間-0.46~-0.10, p=0.0049),強化食事療法+身体活動群-0.33%(-0.51~-0.14, p=0.0009)ともに有意であった。強化食事療法群と強化食事療法+身体活動群の比較では有意差はみられなかった。
血圧は全群同等で,介入による有意な変化もみられなかった(通常治療群:135/80→ 134/79→ 133/79mmHg,強化食事療法群:133/79→ 133/79→ 132/79mmHg,強化食事療法+身体活動群:133/79→ 133/79→ 133/79mmHg)。
[二次エンドポイント:インスリン抵抗性,脂質値,身体組成,薬物治療などの変化]
介入群間には有意差はみられなかったが,両介入群では通常治療群に比べて下記のエンドポイントが有意に改善した(データは6か月後の通常治療群との群間差,* p<0.0001)。
・体重:強化食事療法群-2.28kg*,強化食事療法+身体活動群-2.21kg*
・BMI:-0.78kg/m²*, -0.76kg/m²*
・腹囲:-2.70cm*, -2.31cm(p=0.0003)。
・インスリン抵抗性(log HOMA-IR):-0.26*, -0.24*
・生体インピーダンス:-1.26%*, -1.25%(p=0.0001)。
6か月後,介入群では通常治療群に比べてHDL-Cが増加し(それぞれ+1.55mg/dL[p=0.097], +3.48mg/dL[p=0.0006]),TGが減少したが(-14mg/dL[p=0.044], -27mg/dL[p=0.0002]),12か月後に差は消失した。
通常治療群で強化食事療法群に比べて12か月後の抗糖尿病薬の使用率が高かったが(44.4% vs 42.7%, p=0.042),その他の治療薬使用量に有意な群間差はみられなかった。
★結論★強化食事療法により血糖値は改善するが,身体活動介入の相加的効果は認められなかった。
ISRCTN92162869
文献
  • [main]
  • Andrews R et al: Diet or diet plus physical activity versus usual care in patients with newly diagnosed type 2 diabetes: the Early ACTID randomised controlled trial. Lancet. 2011; 378: 129-39. PubMed
    Hu FB: Diet and exercise for new-onset type 2 diabetes? Lancet. 2011; 378: 101-2. PubMed

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収載年月2011.06