循環器トライアルデータベース

ADDITION-Europe
Anglo-Danish-Dutch Study of Intensive Treatment in People with Screen Detected Diabetes in Primary Care-Europe

目的 スクリーニングで2型糖尿病が発見された時点,診断時からの多因子強化介入により心血管疾患を抑制できるかを検討する2段階(スクリーニング→ cluster-randomised[群ランダム化]比較)から成る試験。

一次エンドポイントは5年間の心血管イベント*初発。
* 心血管死,心血管合併症(非致死的心筋梗塞[MI],非致死的脳卒中),血行再建,非外傷性切断の複合エンドポイント。
コメント 糖尿病を初めて指摘された時点での多因子介入の効果を検討したこの試験,介入後には強化治療群において,血糖,LDL-C,収縮期・拡張期血圧がすべて有意に改善している。また,単独で心血管イベントを抑えることが報告されているような薬剤,スタチン,ARB/ACE阻害薬などもより強力に処方されるに至っている。しかし,結果には有意差がない。糖尿病を初めて指摘されて血糖コントロールに介入する試験で有名なUKPDS 80では介入後平均20年経って心筋梗塞や総死亡率に有意差が報告されており,本試験のような多因子介入をもってしても1群1000人少々に対する平均5-6年の介入,しかも一次予防ではなかなか有意な結果が導き出されることはないと考えざるを得ないのではないだろうか。(弘世
デザイン 群ランダム化比較試験,多施設(デンマーク,オランダ,イギリスの343施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は5.3年。
スクリーニング実施は2001年4月~’06年12月。
対象患者 3,057例(デンマーク;1,533例,オランダ;498例,英国:ケンブリッジ;867例,レスター;159例)。40~69歳(オランダは50~69歳)の非糖尿病例。
除外基準:家庭医に評価を受けたもの;余命<12か月;同意取得が無効になる可能性のある心理的障害あるいは精神疾患など。
■ベースライン時患者背景:2型糖尿病診断時年齢(多因子介入群60.3歳,標準治療群60.2歳),男性(58.5%, 57.3%),白人(95.8%, 93.4%),就業者(40.3%, 42.0%),BMI(両群とも31.6kg/m²),HDL-C*(両群とも46.4mg/dL),トリグリセライド*(141.6mg/dL, 150.5mg/dL),既往:MI(6.8%, 6.1%);脳卒中(2.9%, 1.9%)。
* 中央値
患者申告による薬物治療状況:血糖降下薬服用(両群とも0.5%),降圧薬(46.7%, 43.7%);ACE阻害薬/ARB(21.4%, 18.5%);β遮断薬(22.7%, 18.8%);Ca拮抗薬(12.6%, 12.4%);利尿薬(25.8%, 24.6%),脂質低下薬(17.0%, 15.4%);スタチン(16.8%, 14.9%),aspirin(15.5%, 12.6%)。
治療法 スクリーニングプログラムは参加国(イギリスの場合はケンブリッジとレスターの2か所)の方法で実施。2型糖尿病リスクは一般診療で評価し,診断はWHO基準に従った。
各施設を下記2群にランダム化。
強化多因子介入群(161施設・1,678例):Steno-2試験で使用された段階的治療に基づき,血糖,血圧,脂質を厳格にコントロールし,健康的生活習慣を推奨した。家庭医と看護師に対する定期的な指導ミーティングも実施。
標準治療群(157施設・1,377例):各施設で適用している推奨治療に従った。家庭医には診断検査の結果を伝えるのみとした。
結果 [心血管疾患危険因子の変化]
多因子介入群でより改善した。
・喫煙:多因子介入群(ベースライン時;26.9%→終了時;20.2%),標準治療群(27.8%→ 18.4%)。
・HbA1c:7.0%→ 6.6%, 7.0%→ 6.7%。
・血圧:148.5/86.1mmHg→ 134.8/79.5mmHg, 149.8/86.5mmHg→ 138.1/80.7mmHg。
・総コレステロール:212.7mg/dL→ 162.4mg/dL, 216.6mg/dL→ 170.1mg/dL。
・LDL-C:131.5mg/dL→ 81.2mg/dL, 135.3mg/dL→ 88.9mg/dL。

[一次エンドポイント]
データが得られたのは3,055例。
心血管イベントは238例,多因子介入群121例(7.2%;13.5例/1000人・年) vs 標準治療群117例(8.5%;15.9例/1000人・年):ハザード比0.83;95%信頼区間0.65~1.05(p=0.12)。
サブグループ解析:治療と年齢あるいは心血管イベント既往の間に交互作用はみられなかったが,60歳未満の推定ハザード比は1.12(0.70~1.79),60歳以上は0.70(0.52~0.95)であった。
群(clusters)内の相関係数は0.002(デンマーク;0.014,英国;0.0000016,オランダ0.025)で,群ランダム化デザインが検出力に及ぼす影響は小さいことが示唆された。
[二次エンドポイント]
心血管死:26例(1.5%) vs 22例(1.6%):0.88;0.51~1.51。
MI:29例(1.7%) vs 32例(2.3%):0.7;0.41~1.21。
脳卒中:22例(1.3%) vs 19例(1.4%):0.98;0.57~1.71。
血行再建:44例(2.6%) vs 44例(3.2%):0.79;0.53~1.18。
切断:なし。
総死亡:104例(6.2%) vs 92例(6.7%):0.91;0.69~1.21。
★考察★2型糖尿病患者における早期の多因子強化管理を推進する戦略による心血管イベントおよび死亡抑制効果は小さく,標準治療と比べて有意差はみられなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00237549
文献
  • [main]
  • Griffin SJ, et al: Effect of early intensive multifactorial therapy on 5-year cardiovascular outcomes in individuals with type 2 diabetes detected by screening (ADDITION-Europe): a cluster-randomised trial. Lancet. 2011; 378: 156-67. PubMed
    Preiss D, et al: The case for diabetes screening: ADDITION-Europe. Lancet. 2011; 378: 106-8. PubMed
  • [substudy]
  • HbA1c≧6%+心血管リスク上昇(SCORE≧5)は,ライフスタイル介入,多剤併用有効例の同定に有用。
    デンマークコホートの7年(中央値)追跡結果(193のfamily practice[家庭医]でスクリーニングを実施):スクリーニング後に送付した糖尿病リスク質問票により糖尿病リスク例とされた20,916人を次のように層別して検証:
    血糖値(耐糖能正常17,322例;空腹時血糖異常[IFG]1,020例;耐糖能異常[IGT]676例[IFG+IGT 729例];糖尿病1,169例),HbA1c(<6%;6.0~6.4%;≧6.5%),心血管リスクの評価(heart SCORE*<5;≧5)。 * Systematic Coronary Risk Evaluation
    心血管疾患予防のための介入が有効と考えられるものは,SCORE≧5:91.7%(95%信頼区間91.1~92.3%),SCORE≧5+HbA1c≧6%:96.7%(96.3~97.0%),血糖値:97.6%(97.2~97.9%),血糖値のみ:26.1%(25.2~27.0%),HbA1cのみ:19.8%(19.0~20.6%):Diabetologia. 2011; 54: 1318-26. PubMed

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収載年月2011.06
更新年月2012.04