循環器トライアルデータベース

UKPDS 78
United Kingdom Prospective Diabetes Study 78

目的 UKPDSは2型糖尿病患者におけるより積極的な血糖および血圧管理の合併症に対する影響を検討したランダム化比較試験である。
2型糖尿病患者におけるメタボリックシンドローム(MetS)による大血管障害,細小血管症害リスク増大を検証するためUKPDSを後ろ向きに調査した。
評価項目:(1) 心血管疾患(CVD:突然死,致死的・非致死的心筋梗塞[MI],致死的・非致死的脳卒中初発),(2) MI(突然死,致死的・非致死的MI初発),(3) 脳卒中(致死的・非致死的脳卒中初発),(4) 細小血管合併症(光凝固を要する網膜症,硝子体出血,致死的・非致死的腎不全初発)。
コメント UKPDS参加の2型糖尿病患者を後ろ向きに再検討し,メタボリックシンドロームの基準を満たす者とそうでないもので大血管症,細小血管症の発症率を比較した試験である。予想通りメタボリックシンドロームを持つ群で大血管症はより高率に発症したが,細小血管症では有意な差はなった。しかしそもそもメタボリックシンドロームは一つひとつの生活習慣病要素が軽症であってもクラスターになることでリスクが高まる状態と定義するならば,糖尿病が確立している患者については解釈に注意が必要である。少なくとも日本人では糖尿病発症までは肥満があっても徐々に糖尿病になるにつれて体重減少が起こり,メタボリックシンドロームの範疇から外れる場合も多い。そういう意味では横断的にメタボリックシンドロームがあるか否かという問題も大切だが,経過の中でそのような時期があったかどうかも極めて重要な要素となるであろう。(弘世
デザイン 後ろ向きコホート研究,多施設。
期間 追跡期間10.3年(中央値)。
対象 4,542例。食事療法によるrun-in期間後のMetS構成因子のデータのあるもの。
MetSの定義:NCEP ATP-III,WHO,国際糖尿病連合(IDF),欧州インスリン抵抗性研究会(EGIR)の基準による。
■患者背景:基準別MetS(ATP-III;60.8%,WHO;38.4%,IDF;54.1%,EGIR;23.8%)。2型糖尿病と診断された平均年齢は52~53歳。
全基準で評価できた3,367例:全基準でMetSだったものは480例(14%),全基準で非MetSは901例(27%),ATP-III,WHO,IDFの定義でMetSは556例(17%)。
ATP-III, IDF基準が一致したのは3,366例(74%):2,041例(ATP-IIIでMetS, IDFでMetS);1,325例(いずれも非MetS);431例(ATP-IIIで非MetS, IDFでMetS);760例(ATP-IIIでMetS, IDFで非MetS),κ=0.47, p<0.0001。
Mets(vs 非MetS)は女性が多く,高値:HbA1c;総コレステロール;LDL-C,インスリン感受性(HOMA %S)は低かった。
調査方法
結果 CVD:773例,MI:620例,脳卒中:194例,細小血管障害:418例発生。
非MetS群と比べたMetS群のCVD,MI,脳卒中の相対リスク(RR)は,いずれの基準でも有意に増大した。
[CVD]
ATP-III:MetS例504例 vs 非MetS例269例;RR 1.33(95%信頼区間1.14~1.54)。
WHO:372例 vs 459例;1.45(1.26~1.66)。
IDF:436例 vs 334例;1.23(1.07~1.42)。
EGIR:493例 vs 168例;1.31(1.10~1.57)。
[MI]
ATP-III:399例 vs 221例;1.27(1.07~1.49)。
WHO:299例 vs 373例;1.41(1.21~1.65)。
IDF:344例 vs 274例;1.18(1.01~1.38)。
EGIR:395例 vs 136例;1.30(1.07~1.58)。
[脳卒中]
ATP-III:137例 vs 57例;1.71(1.26~2.33)。
WHO:95例 vs 109例;1.58(1.20~2.08)。
IDF:119例 vs 74例;1.53(1.15~2.05)。
EGIR:125例 vs 38例;1.46(1.01~2.09)。

一方,細小血管障害リスクはMetSによる増大はみられなかった。
ATP-III:249例 vs 169例;1.02(0.84~1.24)。
WHO:173例 vs 258例;1.20(0.99~1.46)。
IDF:222例 vs 194例;1.07(0.88~1.30)。
EGIR:232例 vs 101例;1.02(0.80~1.28)。

ATP-III基準によるMetS群は10年間推定CVDリスクが非MetS群より高かったが(24.9% vs 18.8%),この2群の10年間のCVDリスク分布は重なっていた。非MetS群の47%が10年リスクは20%以上であるが,MetS群の37%が10年リスク<20%であった。
★結論★2型糖尿病におけるMetSの罹患率は高く,ATP-III,WHO,IDF基準によるMetSは大血管障害リスクを増大させるが,細小血管障害リスクの上昇はない。MetSの2型糖尿病CVDリスク層別能は限定的である。
文献
  • [main]
  • Cull CA, et al. Impact of the metabolic syndrome on macrovascular and microvascular outcomes in type 2 diabetes mellitus: United Kingdom prospective diabetes study 78. Circulation. 2007; 116: 2119-26. PubMed

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収載年月2011.07