循環器トライアルデータベース

NCDR-ICDR
National Cardiovascular Data Registry’s ICD Registry

目的 ICD植込みに関するガイドラインでは,エビデンスに基づき,心筋梗塞(MI)後やCABG後の回復期の患者,重症心不全,心不全診断後間もない患者へのICD植込みは推奨していないが,実臨床で医師がどの程度これらの推奨に従っているかは明らかでない。そこで,National Cardiovascular Data Registry-ICD(NCDR-ICD)Registryのデータを用いて,エビデンスに基づかない ICD植込み実施頻度,その特徴および院内転帰を調査し,エビデンスに基づいたICD植込み例と比較する。

一次エンドポイントは入院中の転帰(死亡,植込み後の合併症,心タンポナーデ,気胸,感染症,血腫,入院期間)。
コメント JAMA. 2011; 305: 43-9.へのコメント
本登録研究には,データの信頼性や心不全発症時期の同定の精度といった問題点はあるが,ガイドラインからの逸脱はおもに主治医の判断によることが明らかにされた。ガイドラインに沿った植込みが院内転帰のうえで良好な結果を示したことが,ICD植込みに従事する医師に対する講習の重要性が示唆された。(井上
デザイン 登録研究,後ろ向きコホート,多施設(米国の1,227施設)。
期間 ICD植込み期間は2006年1月1日~2009年6月30日。
参加者 111,707例。NCDR-ICDに登録されたICD植込み例のうち,一次予防適応でICD初回植込みを受けた18歳以上の虚血性/非虚血性心筋症。
除外基準:ICD植込みの適応が二次予防,電気生理検査で誘発された持続性心室頻拍,心臓再同期治療機能付きICDの植込み,デバイスの交換。
■患者背景:年齢中央値(エビデンスに基づかないICD植込み例67.0歳,エビデンスに基づいたICD植込み例66.0歳),心不全既往(91.8%, 87.5%),心房細動/粗動(28.5%, 27.1%),虚血性心疾患(77.2%, 70.3%),脳血管疾患(14.9%, 14.4%;p=0.03),慢性肺疾患(25.7%, 22.6%),糖尿病(40.6%, 38.0%),末期腎疾患(5.1%, 3.9%),二腔ICD植込み(63.3%, 58.4%)。脳血管疾患以外はすべてp<0.001。
調査方法 エビデンスに基づかないICD植込みを,MI発症後40日以内の植込み,CABG後3か月以内の植込み,NYHA心機能分類IV度,植込み時に新規に診断された心不全のいずれかに分類,いずれにも該当しない場合をエビデンスに基づいたICD植込みとした。エビデンスに基づかないICD植込み例の分布を,施設,担当医の専門(電気生理学専門医,あるいは電気生理学を専門としない循環器医,胸部外科医,その他),植込み年別に検証した。
結果 [エビデンスに基づかないICD植込み例背景]
エビデンスに基づかないICD植込みは25,145例(22.5%)。このうち,MI後40日以内の植込みは9,257例(36.8%),CABG後3か月以内の植込みは814例(3.2%),NYHA IV度への植込みは3,022例(12.0%),新規診断の心不全への植込みは15,604例(62.1%)であった。
[院内転帰]
エビデンスに基づかないICD植込み例では,エビデンスに基づいたICD植込み例に比べ,院内死亡(0.57%[95%信頼区間0.48~0.66%] vs 0.18%[0.15~0.20%]),植込み後の合併症(3.23%[3.01~3.45%] vs 2.41%[2.31~2.51%])のリスクが有意に高かった(各p<0.001)。血腫(0.87% vs 0.71%;調整前p=0.009,調整後p=0.07)およびデバイス関連感染症(0.04% vs 0.02%;調整前p=0.06)はエビデンスに基づかないICD植込み例のほうが多い傾向がみられた。心タンポナーデおよび気胸には有意差を認めなかった。
[エビデンスに基づかないICD植込みの分布]
エビデンスに基づかないICD植込み例の施設ごとの分布は多様であった。
担当医の専門別では,エビデンスに基づかないICD植込み例の割合は,電気生理学専門医(20.8%[20.5~21.1%])が電気生理学を専門としない医師よりも有意に低かった(循環器医24.8%[24.2~25.3%],胸部外科医36.1%[34.3~38.0%],その他24.9%[23.8~25.9%];各p<0.001)。
植込み年別では,2006年が24.5%(6,908/28,233例),2007年21.8%(7,395/33,965例),2008年22.0%(7,245/32,960例),2009年21.7%(3,597/16,549例)で,明らかな低下傾向は認められなかった(2006~2009年の傾向p<0.001,2007~2009年の傾向p=0.94)。
★結論★本研究に登録されたICD植込み例のうち,22.5%はエビデンスに基づかないICD植込みがなされ,エビデンスに基づいたICD植込み例に比べ,死亡および植込み後の合併症のリスクが高いことが示された。

[主な結果]
  • Al-Khatib SM et al: Non-evidence-based ICD implantations in the United States. JAMA. 2011; 305: 43-9. PubMed
    Kadish A and Goldberger J: Selecting patients for ICD implantation: are clinicians choosing appropriately? JAMA. 2011; 305: 91-2. PubMed
  • 心臓突然死二次予防のためICDを植込んだ高齢者の5人に4人が2年後に生存。しかし,植込み後の入院,高度介護施設入所は高齢になるほど増加。
    2006~’09年に初めて二次予防としてICDを植込んだ≧65歳の心臓突然死既往の12,420例(平均年齢75歳)のMedicare請求データを使用して,2年間の転帰を年齢別(65~69歳,70~74歳,75~79歳,≧80歳)に評価した。
    <70歳は25.3%,≧80歳は25.7%,虚血性心疾患75.1%,EF>35% 40.5%。
    2年後の死亡は21.8%(<70歳:14.7%,≧80歳:28.9%:調整リスク比2.01;95%信頼区間1.85~2.33*)。
    累積入院は65.4%(60.5%, 71.5%:1.27;1.19~1.36*),心不全による入院は18.8%(14.7%, 23.5%:1.50;1.33~1.69*)。高度介護施設入居は<70歳が13.1%,≧80歳が31.9%(2.67;2.37~3.01*)で,そのリスクは植込み30日後が最も高かった。* 傾向p<0.001(Betz JK et al: Outcomes among older patients receiving implantable cardioverter-defibrillators for secondary prevention: from the NCDR ICD Registry. J Am Coll Cardiol. 2017; 69: 265-74.)。 PubMed
  • EFの低下した心不全患者における一次予防ICD植込み前90日間のガイドラインに基づく薬物治療-実施率は61%と低く,1年生存率は非実施例のほうが低かった。
    EF≦40%,一次予防ICD適応の心不全患者において,植込み前90日間のガイドラインに基づく薬物治療(GDMT:レニン-アンジオテンシン阻害薬[RAI],心不全適応のβ遮断薬を1回以上処方)の実施率,関連因子と1年後の死亡の関係を検証した結果:19,733例(2007~’11年にICDを植込んだMedicare加入者):平均年齢74.9歳,女性35.4%,虚血性心疾患74.4%,EF 25.58%)。
    GDMT実施例は12,073例(61.1%)で,β遮断薬処方例77.1%,RAI 74.3%。また処方日数≧80%は5,590例(28.3%)。GDMTと強く関連したのは,非慢性腎臓病,非持続性心室性頻拍非既往,低所得,植込み前>1か月のEF。1年後の死亡率はGDMT実施例が非実施例より低かった(11.1% vs 16.2%)。処方日数≧80%のものの結果も同様であった(9.4% vs 14.6%)(Roth GA et al: Use of Guideline-directed medications for heart failure before cardioverter-defibrillator implantation. J Am Coll Cardiol. 2016; 67: 1062-9.)。 PubMed
  • CKD(ステージ3~5)合併例でのCRT-D vs ICD-CRT-D群のほうが3年後の心不全による入院,死亡リスクが有意に低かった。
    中等度~重度の慢性腎臓病(CKD;ステージ3~5)を合併した心臓再同期治療(CRT)適応(EF<35%,QRS>120ms,NYHA III~IV度)の心不全患者において,CRT-DとICDの転帰を比較した結果:対象はCRT-D群9,525例,ICD群1,421例(平均年齢:75.7歳,75.9歳,女性:34.6%, 28.7%,EF:23.3%, 23.8%,NYHA III度:95.0%, 94.9%)。3年後の心不全による入院,死亡(逆確率重み付け法による調整ハザード比0.82;95%信頼区間0.75~0.90),死亡(0.84;0.76~0.94),入院(0.81;0.72~0.91)のリスクはCRT-D群のほうが有意に低かった(Friedman DJ et al: Comparative effectiveness of CRT-D versus defibrillator alone in HF patients with moderate-to-severe chronic kidney disease. J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 2618-29.)。 PubMed
  • CRT-D植込み後の死亡と性差,QRS波形・幅-LBBB例は女性に多く,男性より2.9年後の死亡率が低かったが,QRS幅延長例は男女ともに生存率良好。
    2006年1月1日~’09年9月30日の両室ペーシング機能付きICD(CRT-D)植込み例において,死亡リスクを性別,QRS波形(左脚ブロック[LBBB]・非LBBB)・幅(120~≧170ms,10msごと)により比較した結果(女性11,542例,男性20,350例;追跡期間中央値2.9年):死亡は5,428例(17%)。リスクは女性が男性より18%,LBBB例が非LBBB例より24%低く,QRS幅120~129ms例が最も高かった。LBBB例(女性9,978例[86%],男性14,174例[70%])では女性の死亡リスクが男性より有意に低かった(ハザード比[HR]0.79;95%信頼区間0.74~0.84)。QRS幅140~149ms例は120~129ms例にくらべ男女ともにHRが有意に低く(女性0.73,男性0.82),≧150msの各群のHRにも性差はなかった。一方,非LBBB例では性差もQRS幅の影響も認められなかった(Zusterzeel R et al: Sex-specific mortality risk by QRS morphology and duration in patients receiving CRT: results from the NCDR. J Am Coll Cardiol. 2014; 64: 887-94.)。 PubMed
  • ペーシング非適応患者における一次予防としてのICD-二腔ICDは合併症リスクが高く,1年後の死亡・入院率は単腔ICDと同等。
    [背景]一次予防としてのICDの有効性を検討しているランダム化比較試験ではおもに単腔ICDが使用されているが,臨床現場では明白なペーシングの適応のない患者に二腔ICDが植込まれることが少なくない。しかし,単腔ICDと二腔ICDの転帰の違いは明らかにはなっていない。
    突然死一次予防を単腔ICDと二腔ICDで比較した結果(32,034例:単腔ICD 38%,二腔ICD 62%。転帰は2010年12月までの保険請求データで確定):平均年齢(単腔ICD群73.5歳,二腔ICD群73.9歳),心室頻拍(VT)なし(76.7%, 71.4%);非持続性VT(20.5%, 24.1%);p<0.001。
    propensity score matching解析後,単腔ICD群と二腔ICD群間に有意差がみられたのは,30日後の心タンポナーデ(51例 vs 107例,p<0.001),90日後のsystem revision(システム,ジェネレータの再作動,電極修正)が必要な機械的合併症(166例 vs 230例,p=0.001),全合併症(408例 vs 548例,p<0.001)。
    1年後の全死亡(1,145例[9.85%]vs 1,135例[9.77%],全入院(5,096例 vs 5,093例),心不全による入院(1,711例 vs 1,787例)に有意差はみられなかった(Peterson PN et al: Association of single- vs dual-chamber ICDs with mortality, readmissions, and complications among patients receiving an ICD for primary prevention. JAMA. 2013; 309: 2025-34.)。 PubMed
  • 10の臨床変数によりICD植込み後の高・低リスク例の同定が可能。
    ≧70歳;1ポイント,女性;2ポイント,NYHA III度;1ポイント,IV度;3ポイント,心房細動/粗動;1ポイント,弁手術既往;3ポイント,慢性肺疾患;2ポイント,血中尿素窒素(BUN)>30mg/dL;2ポイント,電池消耗以外の理由によるICD交換(再植込み);6ポイント,二腔ICD;2ポイント,両心室ICD;4ポイント,非待機的ICD植込み;3ポイント。
    リスクスコア≦5ポイント例(全体の8.4%)では入院中の合併症リスクは0.6%,≧19ポイント例(3.9%)では8.4%に増大。≦9ポイント例(全体の32.8%)の合併症発生率は1.3%,≧15ポイント例(11.9%)は5.1%。
    待機的ICD植込み例:≦5ポイント例の合併症,死亡リスクは0.6%,≧19ポイント例では8.0%に増大。≦9ポイント例(全体の46.4%)の合併症発生率は1.2%,≧15ポイント例(10.8%)は5.6%(Haines DE et al: Implantable cardioverter-defibrillator registry risk score models for acute procedural complications or death after implantable cardioverter-defibrillator implantation. Circulation. 2011; 123: 2069-76.)。 PubMed

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収載年月2011.07
更新年月2017.02