循環器トライアルデータベース

RIVAL
Radial vs Femoral Access for Coronary Intervention

目的 ST上昇型/非ST上昇型急性冠症候群(ACS)患者の血管造影およびインターベンションにおいて,橈骨動脈アクセスは大腿動脈アクセスよりも優れるかを検証する。
本試験は,CURRENT-OASIS 7(PCI施行予定のACS患者において,clopidogrelのローディングドーズおよび 初期維持用量の2倍用量 vs 標準用量,aspirin高用量 vs 低用量を比較する2×2 factorial試験)からの登録例と,試験終了後の追加登録例を含む。

一次エンドポイントは,30日後の死亡+心筋梗塞(MI)+脳卒中+CABG非関連大出血の複合エンドポイント。
コメント Lancet. 2011; 377: 1409-20.へのコメント
ACS治療において大出血は再梗塞と同頻度(約5%)に生じ,観察研究からは死亡や虚血性再発作の増加と関連しうると考えられている。表面に近く圧迫しやすい橈骨動脈アクセスは大腿動脈アクセスよりも出血が少ない。これまで橈骨動脈アクセスのほうが大腿動脈アクセスより死亡や心筋梗塞のリスクが低いと報告されているが,交絡因子の関与が否定できなかった。小規模ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスでは橈骨動脈アクセスは大出血が少なく,死亡+心筋梗塞+脳卒中の頻度は少し低下し,PCIの不成功率は少し増加するとされている。本研究は,大規模・多施設・RCTとしてPCI施行予定のACS例に対して橈骨動脈アクセスが大腿動脈アクセスより優れるかを検討したが,心脳血管イベントの発生には有意差はなかった。しかし,橈骨動脈アクセスは大腿動脈アクセスよりも血管穿刺部位の合併症は少なく,PCI成功率は同等で,次回の検査も患者からは橈骨動脈アクセスが望まれた。
大出血は主として消化管・頭蓋内・心嚢内に生じ,血管穿刺部位は1/3にすぎなかったので両アクセスによる大出血の頻度に差がみられなかったかもしれない。大腿動脈アクセスでは予想された頻度よりも大出血は少なく,後腹膜腔への大出血は0.1%であり,術者の熟練度の高さを示している。待機的PCIでは,大出血の70%が血管穿刺部位に生じるが,ACSでのPCIでは30%にすぎないと報告されている。抗血栓療法がより強力になると消化管・頭蓋内出血の頻度は上昇する。本研究において,橈骨動脈アクセスを多く行っている施設ではよりこのアクセスの臨床的有用性は明らかであり,大腿動脈アクセスへの変更を余儀なくされる症例も少ない。PCI手技数と臨床的効果は関連するが,橈骨動脈アクセスの場合には特に経験と熟練が重要である。STEMI例で,橈骨動脈アクセスが心脳血管イベントを抑制し主要血管合併症を低下させているが,サブグループ解析の結果であるため,これらを証明するには新たなRCTが必要である。(星田
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded-endpoint),多施設(32か国158施設[CURRENT-OASIS 7試験からは142施設]),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は30日。
登録期間は2006年6月6日~2010年11月3日。
対象患者 7,021例(CURRENT-OASIS 7からの登録例3,831例+追加登録例3,190例)。侵襲的治療が予定されているST上昇型/非ST上昇型ACS患者,Allenテスト正常のもの。
・インターベンション医は,橈骨動脈または大腿動脈アクセスのいずれをも実施でき,かつ両アクセスについての専門知識を有し,過去1年間の橈骨動脈アクセスによる冠動脈血管造影またはインターベンション実績≧50例のあるもの。
除外基準:心原性ショック,大腿動脈アクセスが困難な重症末梢血管障害,複数の内胸動脈を用いたCABG施行歴。
■患者背景:平均年齢62歳,男性(橈骨動脈アクセス群74.1%,大腿動脈アクセス群72.9%),入院時診断(不安定狭心症:44.3%, 45.7%,非ST上昇型MI:28.5%, 25.8%,ST上昇型MI[STEMI]:27.2%, 28.5%),人種(欧州人:72.9%, 73.3%,南アジア人:13.8%, 13.5%,東アジア人:4.2%, 3.9%),現喫煙(30.9%, 31.2%),既往:高血圧(60.4%, 59.1%);糖尿病(22.3%, 20.5%);MI(18.8%, 17.7%);PCI(12.3%, 11.6%)。
非ST上昇型ACS例(2,552例,2,511例)のECG所見:ST下降(36.3%, 37.0%),T波逆転(30.8%, 29.9%),バイオマーカー上昇(62.1%, 64.2%)。
・入院中の抗血栓療法:aspirin(99.2%, 99.3%),clopidogrel(96.0%, 95.6%),clopidogrelローディング>300mg(52.3%, 49.6%),低分子量heparin(51.5%, 51.8%),未分画heparin静注(33.3%, 31.6%),GP IIb/IIIa阻害薬(25.3%, 24.0%)。
その他の薬物治療:プロトンポンプ阻害薬(29.9%, 31.2%),β遮断薬(88.5%, 89.1%),ACE阻害薬(72.6%, 72.3%),ARB(10.7%, 11.0%),スタチン(94.4%, 93.6%),Ca拮抗薬(18.7%, 17.7%)。
・インターベンション背景:冠動脈造影(両群とも99.8%),PCI(65.9%, 66.8%),ステント(94.6%, 95.1%;うちベアメタルステント:65.3%, 69.1%,薬剤溶出性ステント:38.2%, 34.6%),CABG(8.8%, 8.3%),STEMI(1958例)の一次治療(primary PCI:73.5%, 74.7%)。
・手技背景:シースサイズ(≦5フレンチ:14.4%, 6.8%[p<0.0001],6フレンチ:77.4%, 80.2%[p=0.004]),診断用カテーテル数(1本:30.7%, 14.9%,2本:48.7%, 62.0%,[ともにp<0.0001]),ガイドカテーテル数(1本:81.8%, 83.9%,2本:13.3%, 12.4%)。
・手技者背景:年間PCI実績300例,橈骨動脈アクセスの比率40%,年間橈骨動脈アクセス実施数(352例,345例),年間大腿動脈アクセス実施数(386例,390例)。
治療法 橈骨動脈アクセス群(3,507例)と大腿動脈アクセス群(3,514例)にランダム化。
PCI施行例の抗血栓療法(GP IIb/IIIa阻害薬を含む),大腿動脈閉鎖器具の使用については,担当医に一任した。
結果 追跡不能例は両群ともに1例。
ランダム化されたアクセスの不成功によるクロスオーバーは,橈骨動脈群7.0%,大腿動脈群0.9%(アドヒアランス不良例を除く)。
[一次エンドポイント]
有意な群間差は認められなかった。
橈骨動脈アクセス群128例(3.7%)vs 大腿動脈アクセス群139例(4.0%):ハザード比0.92;95%信頼区間0.72~1.17(p=0.50)。
[二次エンドポイント]
30日後の死亡+MI+脳卒中の複合エンドポイント(112例[3.2%]vs 114例[3.2%]:0.98;0.76~1.28, p=0.90)およびCABG非関連大出血(24例[0.7%]vs 33例[0.9%]:0.73;0.43~1.23, p=0.23)には有意な群間差はなかった。
30日後の血管合併症のうち,大血腫(42例[1.2%] vs 106例[3.0%]:0.40;0.28~0.57;p<0.0001)および閉塞を要する仮性動脈瘤(7例[0.2%]vs 23例[0.6%]:0.30;0.13~0.71, p=0.006)は橈骨動脈群のほうが有意に少なかった。
PCI成功率は両群で同等(95.4% vs 95.2%;1.01, 0.95~1.07;p=0.83)。
[サブグループ]
事前に設定したサブグループ解析で,橈骨動脈群の一次エンドポイントリスクが有意に低かったのは,手技者1名あたりの橈骨動脈アクセス実施数(中央値)が最高三分位の施設(>146例/年/手技者)(18/1,129例[1.6%]vs 36/1,126例[3.2%]:0.49;0.28~0.87, p=0.015;交互作用のp=0.021)と,STEMI例(30/955例[3.1%]vs 52/1,003例[5.2%]:0.60;0.38~0.94, p=0.026;交互作用のp=0.025)であった。
★考察★ACS患者の血管造影およびPCIにおいて,橈骨動脈アクセスと大腿動脈アクセスはいずれも安全かつ有効である。ただし,血管合併症は橈骨動脈アクセスのほうが少なかった。
ClinicalTrials gov. No: NCT01014273
文献
  • [main]
  • Jolly SS et al for the RIVAL trial group: Radial versus femoral access for coronary angiography and intervention in patients with acute coronary syndromes (RIVAL): a randomised, parallel group, multicentre trial. Lancet. 2011; 377: 1409-20. PubMed
    Di Mario C, et al. Radial angioplasty: worthy RIVAL, not undisputed winner. Lancet. 2011; 377: 1381-3. PubMed
  • [substudy]
  • 施設/手技者の経験と転帰-施設の橈骨動脈アクセスの経験は良好な転帰と有意に関連。
    施設/手技者の実績レベル別に転帰を比較した結果(事前に計画されたサブ解析):手技者の橈骨動脈アクセスの実績が>146件/年の施設(2,255例)では,一次エンドポイントリスクは橈骨動脈アクセス群が大腿動脈アクセス群にくらべ有意に低かったが(ハザード比[HR]0.49),61~146件(2,846例)/<65件(1,920例)の施設では差はみられなかった(交互作用p=0.021)。この結果は,ST上昇型心筋梗塞患者の割合(39.7% vs 22.2%/22.5%)で調整後も変わらなかった。一方,手技者の橈骨動脈アクセスの経験は結果に影響を及ぼさなかった。ただし,多変量モデルでは,全例において施設の全PCI,橈骨動脈アクセス例において橈骨動脈アクセスの実績が50件増加するごとに一次エンドポイントリスクは有意に低下した(調整HR:0.92,0.88)。大腿動脈アクセス例においては大腿動脈アクセスの実績は一次エンドポイントと関連しなかった:J Am Coll Cardiol 2014; 63: 954-63. PubMed
  • STEMIにおける橈骨動脈アクセス-臨床転帰を有意に改善。一方,NSTEACSでは有用性は認められず。
    ST上昇型心筋梗塞(STEMI[1,958例]・PCI実施率85%:橈骨動脈アクセス955例,大腿動脈アクセス1,003例)と非ST上昇型急性冠症候群(NSTEACS[5,063例]・59%:2,552例,2,511例)に層別して解析した結果(事前に計画されたサブ解析):STEMI患者では橈骨動脈アクセス群のほうが大腿動脈アクセス群より一次エンドポイント(ハザード比[HR]0.60),死亡/MI/脳卒中(HR 0.59)のリスクが有意に低かったが,これは主に同群で死亡が低下したため(HR 0.39)。NSTEACS患者では差はみられなかった。手技者の橈骨動脈アクセスの経験はSTEMI患者のほうが豊富で(400 vs 326件/年),STEMIのprimary PCI施行例(1,451例)では橈骨アクセス群の死亡率が低かった:J Am Coll Cardiol 2012; 60: 2490-9. PubMed

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収載年月2011.06
更新年月2014.07