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PRECOMBAT
Premier of Randomized Comparison of Bypass Surgery versus Angioplasty Using Sirolimus-Eluting Stent in Patients with Left Main Coronary Artery Disease

目的 非保護左主幹部疾患患者において,CABGとsirolimus溶出ステントによるPCIの主要心血管・脳血管イベント抑制効果を比較する非劣性試験。

一次エンドポイントは主要心血管・脳血管イベント(1年後の全死亡+心筋梗塞[MI]+脳卒中+虚血による標的血管血行再建術[TVR])複合エンドポイント。
コメント N Engl J Med. 2011; 364: 1718-27.へのコメント
PRECOMBATは韓国の13施設で施行された左主幹部疾患患者におけるPCIとCABGを比較する無作為化試験である。主要エンドポイントは1年後の主要心血管・脳血管イベント(総死亡/心筋梗塞/脳卒中/虚血による標的血管血行再建術)であった。
本試験は当初COMBAT試験としてアジア太平洋地域で行われていた。そこに米国のグループが加わって,Cordis社の本格的な資金提供で十分な検出力を持つ試験を新たにCOMBAT試験として実施しようという動きになった。そしてプロトコル立案が進む中で,2006年欧州心臓病学会においてステント血栓症を中心とする薬剤溶出性ステント(DES)の安全性懸念問題が大きくクローズアップされた。FDAもこの問題について動き出す中で,企業としては左主幹部への適応拡大などに取り組む余裕は全くなくなりCOMBAT試験は中止となったという経緯があった。この間1年以上のタイムロスがあったと思われるが,SJ Parkは以前から施行されていたアジア太平洋地域の試験を韓国国内でPRECOMBAT試験として継続し今回の報告に至った。
そのような経緯のため,左主幹部疾患患者におけるPCIとCABGを比較する試験としては非常に検出力の低い試験になってしまったことは残念である。
SYNTAX試験以降の左主幹部疾患患者におけるPCIとCABGの比較において求められることは何であろうか。左主幹部疾患といっても病変が左主幹部に限局する患者から左主幹部に3枝疾患が合併する患者まで,その冠動脈病変の複雑性はさまざまである。SYNTAX試験でSYNTAX score 33以上の患者における死亡率や心筋梗塞発症率はPCI群でかなり高く,このカテゴリーの患者ではCABGがゴールドスタンダードと考えられる。PCIにさらなる大きな進歩が無い限り,このカテゴリーの患者でPCIとCABGの比較試験を行うことは困難であろう。一方,SYNTAX試験ではSYNTAX score 33未満の患者では,PCIとCABGの間で死亡/心筋梗塞/脳卒中の発生率に大きな差はなかった。SYNTAX試験もやはりサブグループで死亡/心筋梗塞/脳卒中というエンドポイントを評価するには検出力が不足している。これらを評価するに十分な検出力を有するEXEL試験が開始されている。SYNTAX score 33未満の患者で死亡/心筋梗塞/脳卒中に差がないということを確認した上で,次に再血行再建の頻度を考慮してPCIとCABGの適応を検討するということであろう。この点については,左主幹部分岐部病変の形態,すなわち回旋枝起始部にもステント留置が必要な患者のアウトカム改善が求められている。(木村
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded-endpoint),多施設(韓国の13施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は24.0か月(中央値)。
登録期間は2004年4月~2009年8月。
対象患者 600例。18歳以上の安定狭心症,不安定狭心症,無症候性虚血,または非ST上昇型MI患者で,非保護左主幹部の目視で>50%の狭窄を有する新規に診断されたPCIもしくはCABG適応例。
■患者背景:平均年齢(PCI群61.8歳,CABG群62.7歳),男性(76.0%, 77.0%),BMI(24.6kg/m², 24.5 kg/m²),糖尿病治療例(34.0%, 30.0%),高血圧(54.3%, 51.3%),高脂血症(42.3%, 40.0%),現喫煙(29.7%, 27.7%),PCI既往(両群とも12.7%),安定狭心症/無症候(53.3%, 45.7%),不安定狭心症(42.7%, 48.0%),不安定狭心症/亜急性MI(4.0%, 6.3%),EF(61.7%, 60.6%),洞調律(96.6%, 97.3%),EuroSCORE(2.6, 2.8),EuroSCORE≧6.0の高リスク例(6.0%, 8.0%)。
治療法 PCI群(300例):sirolimus溶出ステントを使用とCABG群(300例)にランダム化。
1年後のCABG群におけるイベント発生率を13%と想定して,非劣性マージンを7%に設定した。
結果 [手技]
完全血行再建例はPCI群205例(68.3%) vs CABG群211例(70.3%)(p=0.60)。
平均入院日数は3.1日 vs 8.4日(p<0.001)。
退院時の処方薬(抗血小板薬,β遮断薬,Ca拮抗薬など)はPCI群のほうが多かった。
[一次エンドポイント]
1年後の発生率はPCI群26例 vs CABG群20例(累積イベント発生率8.7% vs 6.7%:絶対リスク差2.0%;95%信頼区間-1.6~5.6,非劣性のp=0.01)。
2年後:36例 vs 24例(12.2% vs 8.1%:PCI群のハザード比1.50;0.90~2.52, p=0.12)。
[二次エンドポイント]
一次エンドポイントの各構成イベント(全死亡,MI,脳卒中,虚血によるTVR)については,1年後はいずれも有意な群間差は認められなかった。2年後は,PCI群で虚血によるTVRが多かったが(26例 vs 12例;9.0% vs 4.2%:2.18;1.10~4.32, p=0.02),その他は両群ともに同等で,症状によるTVRにも有意な群間差はなかった。
2年後の死亡+MI+脳卒中は13例 vs 14例(累積イベント発生率4.4% vs 4.7%:0.92;0.43~1.96, p=0.83)。
ARC定義によるdefinite/probable血栓症は,2年間でPCI群の2例に認められた。
★結論★非保護左主幹部疾患患者の主要心血管・脳血管イベント抑制において,sirolimus溶出ステントによるPCIはCABGに対して非劣性であった。ただし,非劣性マージンは広かった。
ClinicalTrials gov. No: NCT00422968
文献
  • [main]
  • Park S-J et al: Randomized trial of stents versus bypass surgery for left main coronary artery disease. N Engl J Med. 2011; 364: 1718-27. PubMed
  • [substudy]
  • 左主幹部病変をもつ患者におけるPCI群 vs. CABG群の10年後の転帰に,虚血によるTVRを除いて有意差は認められなかった。
    追跡期間中央値は,11.3年。追跡完了率は96%。
    [一次エンドポイント(全死亡,MI,脳卒中,虚血によるTVRの複合)]
    • PCI群29.8% vs. CABG群24.7%(HR 1.25; 95%CI 0.93~1.69)。
    • 複数のサブグループ解析の結果も,主要解析の結果とほぼ一貫していた。
    [一次エンドポイントの各構成イベント]
    • 全死亡:PCI群14.5% vs. CABG群13.8%(HR 1.13; 95%CI 0.75~1.70)
    • MI:3.2% vs. 2.8%(HR 0.76; 95%CI 0.32~1.82)
    • 脳卒中:1.9% vs. 2.2%(HR 0.71; 95%CI 0.22~2.23)
    • 虚血によるTVR:16.1% vs. 8.0%(HR 1.98; 95%CI 1.21~3.21)
    [その他]
    • ステント血栓症または症候性グラフト不全:1.4% vs. 3.7%(HR 0.56; 95%CI 0.20~1.55)
    著者らは,「本試験は十分な検出力をもった試験とはいえないため,この追跡結果をもって確固たる結論とするのは時期尚早であり,さらなる研究が必要だ」と述べている。
    ClinicalTrials gov. No: NCT03871127, NCT00422968
    Park DW, et al. for the PRECOMBAT Investigators: Ten-Year Outcomes After Drug-Eluting Stents Versus Coronary Artery Bypass Grafting for Left Main Coronary Disease. Circulation. 2020; 141: 1437-46. Epub 2020 Mar 30. PubMed
  • 5年後のPCI群 vs CABG群ーMACCEに有意な両群間差はなかったが,TVRはPCI群で有意に多かった。
    5年後の転帰を検討した結果(5年追跡終了例:PCI群279例[93%],CABG群275例[91.7%]):主要心・脳血管イベント(MACCE)はPCI群52例,CABG群42例で両群間に有意差はなかった(累積イベント発生率17.5% vs 14.3%:ハザード比1.27;95%信頼区間0.84~1.90, p=0.26)。MACCEの各イベントのいずれも両群間に差はみられなかったが(全死亡:5.7% vs 7.9%,心筋梗塞:2.0% vs 1.7%,脳卒中:両群とも0.7%),虚血による標的血管再血行再建術(TVR)のみPCI群のほうが有意に多かった(11.4% vs 5.5%, p=0.012)。
    Ahn JM, et al: Randomized Trial of Stents Versus Bypass Surgery for Left Main Coronary Artery Disease: 5-Year Outcomes of the PRECOMBAT Study. J Am Coll Cardiol. 2015; 65: 2198-206. PubMed

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収載年月2011.04
更新年月2020.04