 |
日本人本態性高血圧患者において,ARB valsartanとCa拮抗薬amlodipineの心血管イベントに対する有効性を比較する。 一次エンドポイントは全死亡,突然死,脳血管イベント,心イベント,血管イベント,腎イベントの複合エンドポイント。 |
 |
 |
本試験は,ARB バルサルタンの心血管イベント予防効果をアムロジピンと直接比較した試験であるが,VALUEやCASE-Jと同様にARBのアムロジピンに対する有用性は見いだすことができなかった。CASE-J試験では併用した降圧薬の数が有意にカンデサルタン群で多いことが数字で示されているのに対して,本試験ではわずかに多かったという非科学的な表現にとどまっている。重要なポイントなのできちんと数字で示すべきであろう。この点や,二次エンドポイントを強調するなど,いわゆる“spin(都合のよい解釈)”が多い論文である。(桑島) |
 |
 |
PROBE(prospective, randomized, open, blinded-endpoint),多施設(日本の92施設),intention-to-treat解析。 |
 |
 |
平均追跡期間は3.4年。 登録期間は2002年7月~2006年2月。 |
 |
 |
1021例。30歳以上で最近高血圧(外来時座位収縮期血圧≧140mmHgあるいは拡張期血圧≧90mmHg)と診断されたもの,あるいは降圧薬治療歴のあるもの。 除外基準:二次性高血圧,手術を要する重症弁膜症あるいは先天性心疾患,肥大型あるいは拡張型心筋症,6か月以内にPTCAあるいはCABGを施行したもの,3か月以内に脳卒中を発症したもの,重症腎不全(クレアチニン>3mg/100mL)。 ■患者背景:平均年齢60歳,男性(valsartan群56.9%,amlodipine群57.5%),喫煙率(21.2%, 20.9%),高コレステロール血症(26.7%, 28.4%),左室肥大(22.9%, 23.3%),登録前の降圧治療率(46.1%, 45.6%),EF(両群とも63%),HDL-C(両群とも58mg/dL),LDL-C(127mg/dL, 124mg/dL),トリグリセライド(139mg/dL, 147mg/dL),空腹時血漿グルコース(106mg/dL, 107mg/dL),HbA1c(両群とも5.4%),クレアチニン(両群とも0.76mg/dL)。 治療状況:ACE阻害薬(6%, 4%),Ca拮抗薬(27%, 26%),β遮断薬(3%, 4%),利尿薬(2%, 3%),ARB(9%, 10%),スタチン系薬剤(11%, 10%),経口血糖降下薬(両群とも3%),経口抗凝固薬(2%, 3%)。 |
 |
 |
valsartan群(510例):80mg/日で投与を開始し,目標血圧(<140/90mmHg)に達しない場合は160mg/日に増量。 amlodipine群(511例):5mg/日で投与を開始し,目標血圧(<140/90mmHg)に達しない場合は10mg/日に増量。 両群とも必要ならα遮断薬,β遮断薬,利尿薬を追加併用投与。 登録前に降圧薬治療を受けていたものにはrun-in期を設けず,valsartan 80mg/日,amlodipine 5mg/日を投与。 |
 |
 |
解析症例数はvalsartan群510例,amlodipine群511例。 追跡はvalsartan群:1742人・年,amlodipine群:1648人・年。 [アドヒアランス] 試験終了時に単剤投与だったものは,valsartan群69.2%,amlodipine群81.7%。 valsartan群:80mg/日(6か月後;64.8%→ 12か月後;60.4%→ 24か月後;58.2%→ 36か月後;55.9%),160mg/日(12.9%→ 13.1%→ 9.7%→ 13.3%), amlodipine群:5mg/日(76.7%→ 72.4%→ 68.3%→ 70.4%),10mg/日(11.8%→ 9.7%→ 11.3%→ 11.3%)。 追加併用薬は,両群ともおもに利尿薬,β遮断薬,α遮断薬で,併用薬剤数はvalsartan群がわずかに多かった。 有害事象は両群とも少なかった(valsartan群25例[4.9%] vs amlodipine群7例[1.4%];p<0.001)。おもに,めまい(4例 vs 2例),頭痛(4例 vs 0例),浮腫(1例 vs 3例),発疹(4例 vs 0例)。 [血圧] 両群とも良好に降圧し両群間差はなかった。 valsartan群:ベースライン時;158/93mmHg→ 3年後;135/80mmHg, amlodipine群:158/94mmHg→ 135/80mmHg。 目標血圧(収縮期,拡張期とも)に達したのは,valsartan群:261例(51%),amlodipine群:280例(55%)。 [一次エンドポイント:全死亡,突然死,脳血管イベント,心イベント,血管イベント,腎イベントの複合エンドポイント] valsartan群:21例(4.1%) vs amlodipine群:21例(4.1%)と,両群間差はみられなかった(ハザード比1.0;95%信頼区間0.57~1.97, p=0.843)。 もっとも多かったのは脳卒中(2.0% vs 2.0%)で,複合エンドポイントの各構成イベントも両群間差はなかった。 [二次エンドポイント] 左室筋重量係数(LVMI):valsartan群(ベースライン時;171.6gm-2→ 36か月後;157.8gm-2) vs amlodipine群(174.0gm-2→ 171.0gm-2);p<0.05。 またvalsartan群ではamlodipine群に比べノルエピネフリンが有意に低下し(p<0.01),尿中アルブミン/クレアチニン比が有意に低下した(p<0.0001)。 ★結論★日本人高血圧患者において,valsartanはamlodipineと同等の血圧コントロールながら,心腎保護効果でまさっていた。 UMIN臨床試験登録システム(UMIN-CTR) identifier: C000000074 |
 |
 |
- [main]
- Narumi H, et al: Retraction: effects of valsartan and amlodipine on cardiorenal protection in Japanese hypertensive patients: the valsartan amlodipine randomized trial. Hypertens Res. 2016 Nov 3. PubMed
- Narumi H et al on behalf of VART investigators: Effects of valsartan and amlodipine on cardiorenal protection in Japanese hypertensive patients: the valsartan amlodipine randomized trial. Hypertens Res. 2011; 34: 62-9. PubMed
|
|
このサイトは国内外の循環器疾患の臨床試験や疫学調査の情報を集めた医療従事者向けのサイトです。日本では認可されていない治療法,保険適用外の治療法,国内では販売されていない医薬品に関する情報も含まれています。一般の方に対する医療情報提供を目的としたものではありません。
あなたは医療従事者ですか?
薬剤や治療法が有効であったとの論文上の記述の引用も,本サイトがその有効性を保証するものではありません。
サイト内で紹介する学説・情報等については,ライフサイエンス出版および提供会社が支持,推奨するものではありません。
サイト内の情報については正確を期しておりますが,薬の使用法や副作用情報は更新されることがありますので,ご留意下さい。
情報内容およびその利用により生じる一切の損害につき,ライフサイエンス出版および提供会社は責任を負いません。