循環器トライアルデータベース

ACTIVE I
Atrial Fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for Prevention of Vascular Events

目的 収縮期血圧≧110mmHgの心房細動患者において,ARB irbesartanの心血管イベント抑制効果を検討する。
一次エンドポイントは次の2つ:脳卒中+心筋梗塞(MI)+血管死の複合エンドポイント,脳卒中+MI+血管死+心不全による入院の複合エンドポイント。

ACTIVE試験は心房細動患者における治療戦略を検討するもので,ACTIVE W(抗凝固療法[warfarin]は抗血小板療法[clopidogrel+aspirin]より心血管イベント抑制効果が大:2006年発表),ACTIVE A(aspirinへのclopidogrelの追加投与はaspirinよりも,主要血管イベント,特に脳卒中を抑制するが,重大な出血リスクが増大:2009年発表),ACTIVE Iの3試験から成る。
コメント 心血管疾患の危険因子を持つ心房細動例を対象に,ARBのイルベサルタン(irbesartan)の効果をプラセボと比較したACTIVE Iの結果は,ある意味,予測されたことである。脳卒中,心筋梗塞,心血管死の複合の初発という一次エンドポイントに治療群間の差はなく,これに心不全による入院(初発)を加えるというもう一つの一次エンドポイントにも有意差はなかった。しかし,脳卒中,心筋梗塞,心血管死の複合の再発に,心不全による入院(再発)を加えるとイルベサルタン群はプラセボ群より発生率が有意に低かった。この結果(心不全抑制効果)は,これまでの臨床研究の結果から当然予想されたことである。問題は対象の60%にACE阻害薬が投与されていたことで,もしこの投与がなければ,もう少し両治療群間に差がついたのではないかと思われる。一方,脳卒中・一過性脳虚血発作・全身性塞栓症の発生頻度がイルベサルタン群で有意に少なかったが,NNTは250となり,その有効性は,それほど高いものとはいえない。心房細動の洞調律化や心房細動再発抑制について,イルベサルタンは効果を示さなかった。いわゆるアップストリーム効果をARBに期待することは難しい。(井上
デザイン 無作為割付け,二重盲検,プラセボ対照,多施設,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は平均4.1年(当初の予定は3年だったが,イベント発生率が予想を下回ったため1.1年延長)。
対象患者 9,016例。ACTIVE A,ACTIVE W試験参加者(永続性AFまたは過去6か月間に一過性AFが2回以上発生,次の危険因子のうち1つ以上を保有するもの:≧75歳,高血圧の治療,脳卒中/一過性脳虚血発作/末梢塞栓症の既往,EF<45%,末梢動脈疾患,55~74歳で糖尿病または冠動脈疾患を合併)のうち,収縮期血圧≧110mmHgでARBを服用していないもの。
除外基準:clopidogrelまたは経口抗凝固薬が必要なもの,過去6か月間に消化性潰瘍の診断を受けたもの,脳内出血の既往,血小板減少症または僧帽弁狭窄症。
■患者背景:平均年齢(irbesartan群69.5歳,プラセボ群69.6歳),男性(60.8%, 60.7%),血圧(138.3/82.6mmHg, 138.2/82.2mmHg),心拍数(75.3拍/分,74.9拍/分),CHADS2スコア(両群とも2.0),EF(両群とも55%),AFのタイプ(永続性:66.0%, 64.4%,発作性:19.6%, 20.5%,持続性:14.3%, 14.9%),高血圧(88.1%, 87.8%),心不全(32.3%, 31.6%),糖尿病(20.1%, 19.6%),除細動の既往(36.9%, 37.9%),欧州人(75.1%, 75.0%),洞調律(18.7%, 19.6%),喫煙状況(現在:7.3%, 8.2%,過去:42.3%, 42.2%)。
治療状況: aspirin(58.7%, 59.3%),経口抗凝固薬(38.1%, 37.6%),ACE阻害薬(60.2%, 60.6%),β遮断薬(54.4%, 54.6%),digoxin(35.1%, 34.7%),Ca拮抗薬(27.0%, 27.2%),利尿薬(54.3%, 54.1%),血管拡張薬(11.9%, 11.1%),抗不整脈薬(22.7%, 23.1%)。
治療法 irbesartan群(4,518例):irbesartan 150mg/日を2週間投与後,300mg/日に増量,プラセボ群(4,498例)。
割付け時に洞調律の患者(irbesartan群86例,プラセボ群99例)において,電話伝送心電図(transtelephonic monitoring)を用いたサブ解析も実施。
結果 [降圧]
平均降圧度はirbesartan群-6.8/-4.5mmHg,プラセボ群-3.9/-2.6mmHgで,両群間の差は2.9 /1.9mmHg。
追跡2年後の併用降圧薬数は,irbesartan群で併用なし:10.7%,1~2剤:55.3%,≧3剤:34.1%(平均2.00剤),プラセボ群でそれぞれ7.7%, 53.3%, 39.1%(平均2.15剤);p<0.001。
[一次エンドポイント]
脳卒中+MI+血管死の発生率には有意な差は認められなかった(963例[5.4%/100人・年] vs 963例[5.4%/100人・年]:ハザード比0.99;95%信頼区間0.91~1.08, p=0.85)。
脳卒中+MI+血管死+心不全による入院の発生率にも有意な差はなかった(1,236例[7.3%/100人・年] vs 1,291例[7.7%/100人・年]:0.94;0.87~1.02, p=0.12)。
脳卒中+MI+血管死の再発生には有意な群間差はなかったが(1,100件[24.3%/100人・年] vs 1,123件[25.0%/100人・年]:0.97;0.89~1.07, p=0.58),心不全による入院を加えた再発生はirbesartan群のほうが有意に少なかった(1,791件[39.6%/100人・年] vs 1,993件[44.3%/100人・年]:0.89;0.82~0.98, p=0.02)。
[その他のエンドポイント]
irbesartan群はプラセボ群に比べて,脳卒中+一過性脳虚血発作+末梢塞栓症(post hoc解析)(515例[2.9%/100人・年] vs 584例[3.3%/100人・年]:0.87;0.77~0.98, p=0.02),心不全による入院(482例[2.7%/100人・年]vs 551例[3.2/100人・年]:0.86;0.76~0.98, p=0.02)が有意に少なかった。
ベースライン時に洞調律であった患者でAFによる入院の抑制効果をirbesartanは示さなかった(0.95;0.85~1.07, p=0.41)。電話伝送心電図を用いたAF再発率の比較でも,有意な差は示されなかった(1回以上再発:68.6% vs 62.6%:1.14;0.80~1.64, p=0.46)。
[有害事象]
irbesartan群では,クレアチニン値上昇(2倍以上),カリウム値≧6.0mmol/Lの有意な増加はみられなかったが(37例 vs 34例),次の理由による試験薬の投与中止は多かった:症候性低血圧(127例 vs 64例,p<0.001)と腎機能障害(43例 vs 24例,p=0.02)。
★結論★心房細動患者におけるirbesartanの心血管イベント抑制効果は認められなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00249795
文献
  • [main]
  • The ACTIVE I investigators: Irbesartan in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med. 2011; 364: 928-38. PubMed

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収載年月2011.03