循環器トライアルデータベース

DOSE
Diuretic Optimization Strategies Evaluation

目的 ループ利尿薬の静注は急性非代償性心不全の治療においてきわめて重要だが,その至適用法・用量を示した前向きデータは少ない。そこで,急性非代償性心不全患者において,利尿薬(furosemide)の投与戦略(ボーラス静注,持続点滴,高用量,低用量)を比較する。
有効性の一次エンドポイントは72時間後までの視覚的アナログ尺度(VAS)スコア*の曲線下面積(AUC)を用いて定量評価した患者の症状。
安全性の一次エンドポイントはベースラインから72時間後までの血清クレアチニンの変化。
* 患者自身が10cm(100mm)スケールを用いて健康状態を評価。100mmを「非常に良好」,0mmを「きわめて不良」として,0mmから患者がマーキングした位置までの距離を0~100スケールでスコア化。
コメント 急性非代償性心不全の治療におけるループ利尿薬の役割は大きいが,古くから経験的に使われていたため前向きの無作為割付け試験は極めて少なかった。本試験によって,ループ利尿薬のボーラス静注は持続静注と差がないことが示された。これまでの小規模試験では,持続投与の方が,腎機能の低下が少なく利尿効果が大きいことを示唆する報告が多かったが,今回の成績はそれを覆す結果であった。また,症状の軽快は高用量投与の方が低用量投与より大きい傾向にあり,予想通りの結果と考えられるが,腎機能の低下(血清クレアチニン値の上昇)は高用量群で多くみられたが,血清クレアチニン値の変化は両群間で差が認められなかった。これまでの報告では,高用量の方が腎機能の低下を招くとする成績が多いが,重症例が高用量群に多く含まれたことも考えられる。本試験は,予後の改善をエンドポイントにしていないが,バゾプレシン拮抗薬(EVEREST試験),アデノシン拮抗薬(PROTECT試験),BNP(ASCEND-HF試験)は,いずれも利尿効果が予後の改善には寄与していないことを示唆している。急性心不全のうっ血の改善が遠隔期の予後の改善に結びつかないのは,QOLの改善と生命予後の改善は独立事象であることを意味している。(
デザイン 無作為割付け,二重盲検,2×2 factorial,多施設(米国,カナダの26施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は60日。
登録期間は2008年3月~2009年11月。
対象患者 308例。受診から24時間以内の急性非代償性心不全患者*で,慢性心不全の既往があり,入院前に少なくとも1か月間経口ループ利尿薬(furosemide 80~240mg/日,もしくは他のループ利尿薬の等力価量)を投与していた患者。サイアザイド系利尿薬投与は長期投与していた場合のみ認めた。
* 心不全の症状のうち1つ以上の症状(呼吸困難,起座呼吸,浮腫),兆候(ラ音,末梢性浮腫,腹水,胸部X線上の肺血管うっ血)のいずれかにより診断。
除外基準:収縮期血圧(SBP)<90mmHg,血清クレアチニン>3.0mg/dL,血管拡張薬の静注またはdigoxin以外の強心薬が必要な症例。
■患者背景:平均年齢66歳,女性27%,黒人25%,12か月以内の心不全による入院歴74%,クレアチニン値1.5mg/dL, NT-proBNP 7439pg/mL, EF 35%(EF≧50%が27%)。
furosemideの経口投与量(ボーラス群134mg/日,持続点滴群127mg/日,低用量群131mg/日,高用量群131mg/日),虚血性心不全(58%, 56%, 58%, 56%),心房細動/粗動の既往(54%, 51%, 54%, 51%),糖尿病(52%, 51%, 51%, 52%),除細動器植込み(40%, 37%, 41%, 36%),SBP(118mmHg, 121mmHg, 120mmHg, 119mmHg),心拍数(76拍/分,80拍/分,78拍/分,79拍/分),酸素飽和度(全群とも96%),起座呼吸(92%, 90%, 93%, 88%),ACE阻害薬/ARB投与(67%, 61%, 62%, 66%),β遮断薬(85%, 81%, 83%, 83%),アルドステロン拮抗薬(27%, 29%, 28%, 27%)。
治療法 ボーラス群(156例):furosemideを12時間ごとにボーラス静注。
持続点滴群(152例):furosemideを持続点滴静注。
低用量群(151例):服用中の経口ループ利尿薬の1日用量と等力価用量のfurosemideを静注。
高用量群(157例):服用中の経口ループ利尿薬の1日用量の2.5倍に相当する用量のfurosemideを静注。
試験薬は最大72時間まで投与。48時間後,臨床症状に基づいて,50%増量,試験治療を継続,静注からオープンラベルでの経口投与に切り替えのいずれかを選択。72時間以降は全治療をオープンラベルとし,割付けを知らされていない医師に一任。
結果 受診からランダム化までの時間は14.6時間,試験薬の投与期間は65.3時間(ともに中央値)。
[一次エンドポイント]
ボーラス群と持続点滴群の比較では,患者の症状(ベースライン~72時間後までのVASスコアの平均AUC:4,236 vs 4,373, p=0.47),クレアチニン値の変化(0.05mg/dL vs 0.07mg/dL, p=0.45)に有意な群間差はなかった。
高用量と低用量の比較では,有意差には至らなかったものの高用量群のほうが症状の改善が大きい傾向が示されたが(平均AUC:4,430 vs 4,171, p=0.06),クレアチニン値の変化については有意な群間差は認められなかった(0.08 mg/dL vs 0.04mg/dL, p=0.21)。
[その他のエンドポイント]
高用量群は低用量群に比べて72時間後の体液の減少(4,899mL vs 3,575mL, p=0.001),体重の減少(-3.9kg vs -2.8kg, p=0.01),呼吸困難の改善(VASによる呼吸困難の平均AUC:4,668 vs 4,478, p=0.04)が有意に大きかったが,腎機能が低下した患者の割合が多かった(72時間以内の血清クレアチニンの増加>0.3mg/dL:23% vs 14%, p=0.04)。
入院日数(中央値5日,p=0.55),入院期間を除く生存日数(50~52日,p=0.42)には差はなかった。
[有害事象]
重篤な有害事象の発生率は,高用量群で低用量群に比べて少なかったが(38% vs 50%, p=0.03),ボーラス群と持続点滴群には差はなかった(両群とも44%)。
★結論★急性非代償性心不全患者に対する利尿薬の投与法において,ボーラス静注か持続点滴か,高用量か低用量かにかかわらず,患者自身が評価した症状,腎機能の低下に有意な差は認められなかった。
ClinicalTrials.gov. No: NCT00577135
文献
  • [main]
  • Felker GM et al for the NHLBI Heart Failure Clinical Research Network. Diuretic strategies in patients with acute decompensated heart failure. N Engl J Med. 2011; 364: 797-805. PubMed
    Fonarow GC: Comparative effectiveness of diuretic regimens. N Engl J Med. 2011; 364: 877-8. PubMed

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収載年月2011.06