循環器トライアルデータベース

EINSTEIN

目的 EINSTEIN programは経口直接作用型第Xa因子阻害薬rivaroxabanの有効性を検討する試験で,次の3つのランダム化比較試験から成る。
(1) 急性の症候性深部静脈血栓塞栓症(DVT)患者におけるAcute DVT試験,
(2) 急性肺塞栓症(PE)患者におけるAcute PE試験,
(3) DVT,PEの治療を受けた後,さらに治療を継続する(Extension)試験。
(1)と(3)は2010年に文献が発表され,(2)は2012年にACCで発表,同時に文献化。

有効性の一次エンドポイントは静脈血栓塞栓症(VTE)の再発。
安全性の一次エンドポイントは(1) Acute DVT,(2) ACUTE PE試験:大出血あるいは臨床的意義のある非大出血,(3) Extension試験:大出血。
コメント (2) Acute PE (EINSTEIN PE) 試験へのコメント
急性肺血栓塞栓症は日本ではまれであるが,転帰が急,かつ院内発症が多いため対応が難しい疾患である。エノキサパリンとワルファリンによる治療は日本の標準治療ではないため,本試験結果の日本への取り込みには慎重である必要がある。しかし,臨床的に不安定な肺血栓塞栓症において,経静脈的なヘパリンから経口抗凝固薬ワルファリンに切り換えるタイミングは臨床的には難しい。十分なスタッフのいる専門病院でなければ,リバーロキサバンを当初から経口投与させるだけで従来治療と大きな差がないとなれば,メリットはある。(後藤

(1) Acute DVT試験,(3) Extension試験へのコメント
経口抗Xa薬の作用は可逆的で血栓リスクの著しく高い症例では有効性がwarfarinに劣る可能性も懸念されている。しかし,本ランダム化比較試験ではINR 2~3のwarfarinよりリスク/ベネフィット比が改善しているとのことで,本薬の患者集団に対する介入の効率性が示唆された。(後藤
デザイン (1) Acute DVT試験(非劣性試験):無作為割付け,オープン。
(2) Acute PE試験(非劣性試験):無作為割付け,オープン,多施設(38か国263施設),intention-to-treat解析。
(3) 継続治療(Extension)試験(優越性試験):無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検。
両試験ともintention-to-treat解析。
期間 追跡(治療)期間は,(1) Acute DVT試験:3~12か月。
(2) Acute PE試験:平均追跡期間rivaroxaban群263日(投与期間216日),標準治療群268日(214日)。登録期間は2007年3月~2011年3月。
(3) Extension試験:6~12か月。
ランダム化期間は,(1):2007年3月~2009年9月,(3):2007年2月~2009年3月。
対象患者 (1) Acute DVT試験(3,449例):急性の症候性で客観的に確認された近位部のDVT。
除外基準:その他のビタミンK受容体拮抗薬適応例,クレアチニンクリアランス<30mL/分,症候性PE,48時間以上低用量heparin,fondaparinux,未分画heparinを投与したもの,ビタミンK拮抗薬を1回以上投与したものなど。
■患者背景:平均年齢(rivaroxaban群55.8歳,標準治療群56.4歳),男性(57.4%, 56.3%),体重:>50~100kg(83.4%, 82.8%);>100kg(14.2%, 14.3%),クレアチニンクリアランス:50~79mL/分(22.7%, 23.2%);≧80mL/分(68.9%, 68.1%)。
初診:DVT(1,708例,1,697例[遠位は1例のみ]);PE(12例,11例),発症からランダム化までの日数(中央値:両群とも5日),DVT,PEの原因:特発性(60.9%, 63.0%);最近の手術あるいは外傷(両群とも19.5%);immobilization(15.3%, 15.1%);エストロゲン治療(8.1%, 6.7%), 血栓形成傾向(6.2%, 6.8%),VTE既往(19.4%, 19.2%)。
(2) Acute PE試験(4,832例):客観的に確認された急性の症候性PEでDVTの有無は問わない。
除外基準:低分子量heparin,fondaparinux,未分画heparinを48時間以上投与したもの,あるいはビタミンK拮抗薬を1回以上投与したもの;PEに対し血栓除去術を施行,大静脈フィルターを留置,血栓溶解薬を投与したもの;クレアチニンクリアランス<30mL/分など。
■患者背景:平均年齢(rivaroxaban群57.9歳,標準治療群57.5歳),男性(54.1%, 51.7%),体重:>50~100kg(84.1%, 83.3%);>100kg(14.3%, 14.9%),クレアチニンクリアランス:50~79mL/分(26.3%, 24.6%);≧80mL/分(64.3%, 67.0%)。
診断法:スパイラルCT(87.4%, 86.0%);肺換気・血流スキャン(11.7%, 13.5%),肺塞栓の解剖学的広がり:限局的(単葉の血管系の≦25%)12.8%, 12.4%,中等度 57.5%, 59.0%,広範囲(複葉かつ肺全体の血管系の>25%)24.7%, 23.9%。
DVT併発(25.1%, 24.5%),入院例(89.1%, 89.5%),ICU入院(12.9%, 12.0%),PEの原因:特発性(64.7%, 64.3%);最近の手術あるいは外傷(17.2%, 16.5%);immobilization(15.9 %, 15.7%);エストロゲン治療(8.6%, 9.2%),血栓形成傾向(5.7%, 5.0%),VTE既往(18.8%, 20.3%)発症からランダム化までの日数(中央値:両群とも4日)。
(3) Extension試験(1,196例):客観的に確認されたDVTあるいはPEで,acenocoumarolまたはwarfarin(EINSTEIN参加あるいはルーチンケア),あるいはrivaroxaban(EINSTEIN参加)を6~12か月投与されているもので,抗凝固薬の延長投与が必要と思われるもの。
除外基準:その他のビタミンK受容体拮抗薬適応例,クレアチニンクリアランス<30mL/分など。
■患者背景:平均年齢(rivaroxaban群58.2歳,プラセボ群58.4歳),男性(58.8%, 57.1%),体重:>50~100kg(81.6%, 82.2%);>100kg(14.1%, 14.6%),クレアチニンクリアランス:50~79mL/分(22.3%, 20.5%);≧80mL/分(62.0%, 62.8%)。
初診:DVT(386例,356例);PE(216例,238例),発症からランダム化までの日数(中央値:204日,206日),DVT,PEの原因:特発性(73.1%, 74.2%);最近の手術あるいは外傷(3.5%, 4.7%);immobilization(14.8%, 13.0%);エストロゲン治療(3.8%, 3.7%), 血栓形成傾向(両群とも8.1%),VTE既往(17.9%, 14.1%)。
治療法 (1) Acute DVT試験
rivaroxaban群(1731例):15mg×2回/日を3週間投与後,20mg/日を投与。
対照(標準治療)群(1718例):ランダム化から48時間以内にenoxaparin 1.0mg/kg×2回/日皮下注+ビタミンK拮抗薬(warfarinあるいはacenocoumarol)。enoxaparinは2日連続してINR≧2.0の場合,5日以上投与した場合は投与を中止。ビタミンK拮抗薬の投与量はINRが2.0~3.0を維持するように調整した。INRの測定は毎月1回以上。
投与期間は3か月,6か月,12か月。
(2) Acute PE試験
rivaroxaban群(2,419例):15mg×2回/日を3週間投与後,20mg/日を投与。
標準治療群(2,413例):ランダム化から48時間以内にenoxaparin 1.0mg/kg×2回/日皮下注+ビタミンK拮抗薬(warfarinあるいはacenocoumarol)。enoxaparinは2日連続して INR≧2.0となった場合と5日以上投与した場合に投与を中止。ビタミンK拮抗薬の投与量はINRが2.0~3.0を維持するように調整した。INRの測定は 月1回以上。
非ステロイド性抗炎症薬,抗血小板薬は投与しないように指導したが,aspirin<100mg/日,clopidogrel 75mg/日,あるいはこれらの併用は可とした。
投与期間は3か月(rivaroxaban群127例[5.3%],標準治療群122例[5.1%]),6か月(1,387例[57.3%],1,387例[57.5%]),12か月(905例[37.4%],904例[37.5%])。
(3) Extension試験
rivaroxaban群(602例):20mg/日,プラセボ群(594例)。
投与期間は6か月あるいは12か月。
両試験とも非ステロイド性抗炎症薬,抗血小板薬は不可。ただし適応の場合はaspirin 最大100mg/日,clopidogrel 75mg/日,あるいは両者の併用投与を可とした。
結果 (1) Acute DVT試験,(3) Extension試験;N Engl J Med. 2010; 363: 2499-510.
[治療状況,コンプライアンス]
(1) Acute DVT試験
・投与期間
3か月(rivaroxaban群208例[12.0%]・中央値93日,標準治療群203例[11.8%]・93日);6か月(1083例[62.6%]・182日,1083例[63.0%]・181日);12か月(440例[25.4%]・354日,432例[25.1%]・353日)。
(3) Extension試験:6か月(rivaroxaban群360例[59.8%]・181日,標準治療群357例[60.1%]),12か月(242例[40.2%]・264日,237例[39.9%]・265日)。
・コンプライアンス
試験薬1剤以上の服用は,(1) Acute DVT試験:両群とも99.2%,(3) Extension試験:両群とも99.3%。
早期投与中止:(1) Acute DVT試験:rivaroxaban群196例(11.3%),うち有害イベントは74例(4.3%),標準治療群244例(14.2%),67例(3.9%)。
(3) Extension試験:rivaroxaban群76例(12.6%),有害イベント39例(6.5%),プラセボ群93例(15.7%),18例(3.0%)。
[一次エンドポイント]
(1) Acute DVT試験
有効性(VTE再発):rivaroxaban群36例(2.1%) vs 標準治療群51例(3.0%):ハザード比0.68;95信頼区間0.44~1.04(p<0.001 for 非劣性)。最も多かったのが非致死的PE(20例 vs 18例),次いで再DVT(14例 vs 28例)。
安全性(大出血,臨床的意義のある非大出血の初発):139例(8.1%) vs 138例(8.1%):0.97;0.76~1.22(p=0.77)。最も多かったのは臨床的意義のある非大出血(126例 vs 119例)。
netの有効性(症候性PEの再発+大出血):51例(2.9%) vs 73例(4.2%):0.67;0.47~0.95(p=0.03)。
(3) Extension試験
有効性(VTE再発):rivaroxaban群8例(1.3%) vs 42例(7.1%。再DVTが31例):0.18;0.09~0.39(p<0.001)
安全性(大出血,臨床的意義のある非大出血の初発):rivaroxaban群36例(6.0%) vs 7例(1.2%):5.19;2.3~11.7(p<0.001)。最も多かったのは臨床的意義のある非大出血32例(5.4%。血尿9例,鼻出血8例,直腸出血7例) vs 7例(1.2%)。
[死亡]
(1) Acute DVT試験:38例(2.2%) vs 49例(2.9%):0.67;0.44~1.02(p=0.06)。最も多かった死因は癌(25例 vs 20例)。
(3) Extension試験:1例 vs 2例。
★結論★rivaroxabanは単剤で静脈塞栓症の短期および継続治療が可能で,抗凝固療法のベネフィット-リスクの改善が示唆された。
ClinicalTrials.gov No: NCT00440193, 00439725

(2) Acute PE試験;N Engl J Med. 2012; 366: 1287-97.
[治療状況,コンプライアンス]
・投与期間(中央値):3か月群(rivaroxaban群93日,標準治療群92日);6か月群(182日,181日);12か月群(355日,354日)。所定の投与期間より短かったものは,rivaroxaban群125例(5.2%),標準治療群132例(5.5%)。
・投与中止例はrivaroxaban群123例(5.1%),標準治療群99例(4.1%)。
・標準治療群:enoxaparin投与期間(中央値)は8日,投与終了時のINR≧2.0は83%,投与期間中にINRが治療域(2.0~3.0)にあった期間は62.7%(INR>3:15.5%,<2:21.8%)で,最初の1 か月が57.8%,その後11か月は72.7%。
[一次エンドポイント]
有効性(VTE再発):rivaroxaban群50例(2.1%)vs標準治療群44例(1.8%);ハザード比1.12(95%信頼区間0.75~1.68, p=0.003 for noninferiority margin of 2.0, p=0.57 for superiority)。
安全性(大出血,臨床的意義のある非大出血の初発):249例(10.3%)vs 274例(11.4%);0.90(0.76~1.07, p=0.23)。
・大出血は26例(1.1%)vs 52例(2.2%);0.49(0.31~0.79, p=0.003),ヘモグロビン≧20g/dLの低下,2単位以上の輸血,あるいは両者は17例 vs 26 例。
・臨床的意義のある非大出血は228例(9.5%)vs 235例(9.8%)。
[死亡,有害事象]
死亡は58例(2.4%)vs 50例(2.1%);1.13(0.77~1.65, p=0.53)。最も多かった死因は癌(20例 vs 23例)。
治療中に発生した有害事象は1,941例(80.5%)vs 1,903例(79.1%),重大な有害事象は476例(19.7%)vs 470例(19.5%),有害事象による入院または入院期間の長期化は475例(19.7%)vs 430例(17.9%)。
★結論★肺塞栓症患者において,rivaroxaban単独投与の初期・長期治療の標準治療に対する非劣性が認められ,ベネフィット/リスクが改善する可能性が示された。
ClinicalTrials.gov No: NCT00439777
文献
  • [main]
  • (2) EINSTEIN–PE investigators: Oral rivaroxaban for the treatment of symptomatic pulmonary embolism. N Engl J Med. 2012; 366: 1287-97. PubMed
  • (1), (3) EINSTEIN investigators. Oral rivaroxaban for symptomatic venous thromboembolism. N Engl J Med. 2010; 363: 2499-510. PubMed
    Hylek EM: Therapeutic potential of oral factor Xa inhibitors. N Engl J Med. 2010; 363: 2559-61. PubMed

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収載年月2011.03
更新年月2012.04