循環器トライアルデータベース

OMEGA

目的 急性心筋梗塞(AMI)後の患者において,現行のガイドラインに基づいたAMI治療にn-3多価不飽和脂肪酸(オメガ-3脂肪酸)を追加した場合の予後改善効果を検討する。
一次エンドポイントは心臓突然死*
* 定義は最初の症状から1時間以内の心疾患による予期しなかった死亡あるいは目撃者のない夜間突然死。心肺蘇生により蘇生できた心停止(初発から1時間以内)で,その後入院中の3週間以内の死亡も含んだ。
コメント n-3多価不飽和脂肪酸(ω-3脂肪酸)が心血管病発症の危険性を下げることは20年以上前から報告されている。GISSI-Prevenzione trial(以下GISSI)では抗不整脈作用とくに急性心筋梗塞後の心臓突然死の発生率低下が注目されている。しかし,この研究はブラインドではなくinterventionや投薬内容もold fashionであり,たとえば急性期PCIや退院時スタチン処方は5%にすぎない。最近は急性期PCIは当然でアスピリン,スタチン,RAS阻害薬,β遮断薬などが高頻度に退院時に処方されており,二次予防法は格段に進歩したため二次性イベントの発生率も低下している。本研究は急性心筋梗塞後の生存例に対して現行のガイドラインに沿った治療法を行ったうえで,ω-3脂肪酸のブラインドでの上乗せ効果を心臓突然死や脳心血管イベント発生において検討している。予想通り現行のガイドライン治療法ではイベント発生率は低く,ω-3脂肪酸の有意な効果は認められなかった。
GISSIのold fashionの治療法ではω-3脂肪酸により全死亡は45%抑制されたが,もし30%の抑制効果があるとしても現行ガイドラインでω-3脂肪酸が有意性を示すには20,000例以上の症例が必要であり現実的ではない。本研究では自己申告で魚消費量を検討しているが,研究の開始前より終了時には実薬群でもプラセボ群でも明らかに魚消費量が増大しており,今回の結果に影響を与えた可能性はある。しかし,ω-3脂肪酸の有意な効果を認めたGISSIでも魚消費量は試験終了時には増えており,ガイドライン治療による二次予防効果がω-3脂肪酸より大きいと考えられる。より高用量で1年以上の長期でのω-3脂肪酸の効果については結果がないので何ともいえない。
ω-3脂肪酸の臨床的有用性は患者の臨床像により異なり,たとえば男性の狭心症例や心室性不整脈例では効果が認められないとの報告もある。このことは,GISSIと本研究の対象となった症例の臨床像が大きく異なる可能性も少し残されている。さらに,ω-3脂肪酸は局所の組織や細胞レベルの状態により作用は異なり,虚血部位と非虚血部位では細胞膜結合蛋白質の活性度の違いによりω-3脂肪酸の効果も変わりうる。分子や細胞レベルのω-3脂肪酸の作用の違いは不整脈への効果の違いに反映され,薬剤としての効果判定が難しいかもしれない。(星田
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(ドイツの104施設),itention-to-treat解析。
期間 追跡期間は1年。
ランダム化期間は2003年10月~’07年6月。
対象患者 3,818例。18歳以上のAMI(ST上昇型[STEMI],非上昇型[NSTEMI])入院例で発症から3~14日後。
死亡率が予想より低く,解析から日常臨床より高リスク患者が少ない可能性が出てきた。一方で,OMEGA試験は日常臨床を反映することを目的としていたため,2005年4月,運営委員会は登録例の患者背景を特定し,次のうち1つ以上を有する症例とした:早期血行再建術非施行,EF<40%,糖尿病,>70歳。また,それまでAMIから3~7日後としていたが,3~14日後の症例とした。
■患者背景:平均年齢64歳,男性74.4%,STEMI(オメガ-3脂肪酸群59.2%,対照群58.8%),NSTEMI(40.8%, 41.2%),蘇生例(1.6%, 1.7%),NYHA IV度(5.7%, 5.6%),Killip分類class III/IV(3.3%, 3.8%),心拍数(75.0拍/分,74.0拍/分),収縮期血圧(両群とも140mmHg),EF低下:中等度(EF 35~44%)および重度(<35%)(24.8%, 23.3%),既往:>14日前に発症したMI(15.3%, 13.5%),PCI(13.5%, 11.7%),CABG(6.6%, 5.7%),脳卒中(5.8%, 5.1%),危険因子:高血圧(66.9%, 66.1%),高コレステロール血症(50.5%, 48.5%),糖尿病(27.6%, 26.4%),喫煙率(35.9%, 37.5%),冠動脈疾患家族歴(21.8%, 21.4%),末梢動脈疾患(6.5%, 6.0%),COPD(5.6%, 6.4%)。
・primary 冠動脈造影(CAG)実施率は93.8%。
CAG背景:責任血管および>50%の狭窄の場所;左主幹部(責任血管0.9%,>50%の狭窄3.1%),左前下行枝(38.0%, 63.4%),回旋枝(19.1%, 45.8%),右冠動脈(33.0%, 56.2%)。
治療法 オメガ3脂肪酸群(1,925例):AMI治療+高純度エチルエステル-90を1g/日(エイコサペンタエン酸460mg,ドコサヘキサエン酸380mg),
対照群(1,893例):AMI治療+プラセボ(オリーブオイル1g)。
結果 [自己申告による魚消費量]
オメガ-3脂肪酸群:消費なし(試験開始時3.9%→試験終了時3.1%),時折り(65.7%→ 50.7%),週に数回(30.2%→ 45.4%*),毎日(0.3%→ 0.8%),対照群:4.7%→ 3.3%, 68.3%→ 51.9%, 26.7%→ 43.9%*, 0.3%→ 0.8%。
* P<0.001;試験終了時 vs 開始時
[入院中の治療]
・ガイドラインに基づくAMI治療:急性期血行再建術施行例は80.6%;PCI(オメガ-3脂肪酸群77.9%,対照群77.6%),血栓溶解療法(8.3%, 8.4%)。
β遮断薬(86.4%, 85.0%),ACE阻害薬(69.2%, 69.7%),AT1受容体拮抗薬(ARB)(6.3%, 5.7%),スタチン系薬剤(81.1%, 81.9%),aspirin(両群とも94.4%),clopidogrel(87.8%, 88.6%),GP IIb/IIIa受容体拮抗薬(42.2%, 43.1%),未分画heparin(67.4%, 69.0%),利尿薬(27.0%, 26.1%)。
・退院時の治療:β遮断薬(93.9%, 94.3%),ACE阻害薬(82.9%, 83.7%),ARB(8.2%, 7.7%),スタチン系薬剤(94.6%, 93.8%),aspirin(95.6%, 95.1%),clopidogrel(88.0%, 88.8%),ビタミンK拮抗薬(4.7%, 4.3%),Ca拮抗薬(8.1%, 7.8%),利尿薬(36.3%, 32.9%),digitalis(3.7%, 3.4%),amiodarone(1.6%, 1.2%),経口抗糖尿病薬(11.8%, 11.0%),インスリン(10.1%, 9.9%)。
[コンプライアンス]
試験期間中に70%以上試験薬を投与したものは93.1%, 93.2%。
投与中止率は14.8%, 14.6%。
[一次エンドポイント:1年後の心臓突然死(解析例:オメガ3脂肪酸群1,919例,対照群1,885例)]
オメガ3脂肪酸群28例(1.5%) vs 対照群29例(1.5%):オッズ比0.95;95%信頼区間0.56~1.60(p=0.84),リスク差-0.1%;-0.9~0.7。
[二次エンドポイント]
総死亡:88例(4.6%) vs 70例(3.7%):1.25;0.90~1.72(p=0.18), 0.9%;-0.4~2.1。
主要有害脳心血管イベント:182/1,752例(10.4%) vs 149/1,701例(8.8%):1.21;0.96~1.52(p=0.10), 1.6%;-0.3~3.6,血行再建術(生存者でのPCI+CABG):466/1,686例(27.6%) vs 482/1,654例(29.1%):0.93;0.80~1.08(p=0.34), -1.5%;-4.6~1.6。
[有害事象]
有害事象は3,473件(オメガ3脂肪酸群1,769件,対照群1,704件;p=0.27)。
新生物:オメガ-3脂肪酸群19例 vs 対照群8例,心臓デバイス治療(主にペースメーカー,除細動器植込み):16例 vs 2例。
サブグループ(悪性腫瘍群:32例 vs 26例,rhythmologic イベント:99例 vs 84例)でも両群間差はみられなかった。
★結論★ガイドラインに基づく急性心筋梗塞治療により1年後の心臓突然死やその他のイベントは抑制されるが,オメガ-3脂肪酸の上乗せ効果は認められなかった。
ClinicalTrials. gov No: NCT00251134
文献
  • [main]
  • Rauch B et al for the OMEGA study group: OMEGA, a randomized, placebo-controlled trial to test the effect of highly purified omega-3 fatty acids on top of modern guideline-adjusted therapy after myocardial infarction. Circulation. 2010; 122: 2152-.9 PubMed
    Eckel RH: The fish oil story remains fishy. Circulation. 2010; 122: 2110-2. PubMed

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収載年月2011.02