循環器トライアルデータベース

ASAN-MAIN Registry
ASAN medical center-left main revascularization Registry

目的 非保護左主幹部(LMCA)病変におけるPCI(ベアメタルステント[BMS],薬剤溶出性ステント[DES]),CABGの長期転帰を検証する。
有効性の一次エンドポイントは標的血管血行再建術(TVR)再施行。
安全性の一次エンドポイントは全死亡,死亡+Q波梗塞+脳卒中の複合エンドポイント。
コメント ASAN-MAIN Registryは韓国のASAN Medical Centerの単一施設における非保護左主幹部疾患に対する冠動脈血行再建施行症例の登録研究である。ベアメタルステント(BMS)を用いたPCI症例と同時期に施行されたCABG症例の10年追跡結果を比較し,また薬剤溶出性ステント(DES)を用いたPCI症例と同時期に施行されたCABG症例の5年追跡結果を比較している。死亡や死亡/Q波梗塞/脳卒中のリスクはBMSとCABGの10年追跡,DESとCABGの5年追跡ともに両群間に差を認めなかった。標的血管再血行再建(TVR)のリスクはDESの導入によって明らかに低下したが,CABGに比較するとDESを用いてもPCIで有意にTVRのリスクが高かった。
非保護左主幹部疾患に対するPCIとCABGの長期成績の比較については基本的に無作為化試験(RCT)の結果を尊重すべきである。観察研究におけるPCIとCABGの比較では,観察研究が施行された医療環境(プラクティスパターン)によって結果が大きく左右されるため,結果の解釈には慎重を期す必要がある。しかしながら今回のASAN-MAIN Registryの結果は非保護左主幹部疾患に対する最大規模のRCTであるSYNTAX試験の3年追跡結果と良く一致している。ASAN-MAIN RegistryではSYNTAX scoreを用いた冠動脈病変の複雑性による層別化は行われていないが,SYNTAX試験の結果から考えると,「冠動脈病変の複雑性が一定の範囲内であれば非保護左主幹部疾患においてもDESを用いたPCIとCABGの間に死亡や死亡/Q波梗塞/脳卒中からみた長期成績の差はない」というのがコンセンサスであろうかと思われる。
SYNTAX試験の追跡は現状3年までで,外科医からは「5年以降の長期追跡を行えばCABGとPCIの成績の差が顕在化する」との主張が根強い。しかしながら今回のASAN-MAIN RegistryにおけるBMSとCABGの10年追跡で,死亡や死亡/Q波梗塞/脳卒中のKaplan-Meier曲線は5年以降にも全く乖離の兆しを見せていない。今後DESの5年以降の成績を評価する必要があるが,少なくともBMSについてはPCIの成績は5年以降も維持されていると考えられる。(木村
デザイン 登録観察研究,単施設(韓国・ソウル)。
期間 追跡期間は10年(BMS vs CABG),5年(DES vs CABG)。
対象 10年追跡コホート:350例(BMS 100例,CABG 250例)。
非保護LMCA病変(狭窄率>50%)に対し,BMSを用いたPCIあるいは同時期に施行された(concurrent)単独CABG施行連続症例。手技施行は1995年1月~’99年4月,追跡は2009年5月まで。
5年追跡コホート:395例(DES 176例,CABG 219例)。
非保護LMCA病変に対し,DESを用いたPCIあるいは同時期に施行された単独CABG施行連続症例。手技施行は2003年1月~’04年5月,追跡は2009年6月まで。
除外基準:CABG既往,弁置換術あるいは大動脈手術を同時に施行するもの,ST上昇型心筋梗塞,心原性ショック。
■患者背景:CABG例の方がPCI例より高リスクであった。
[10年追跡コホート]:平均年齢(BMS群55.1歳,CABG群60.7歳),男性(60.0%,74.4%),糖尿病(21.0%,32.8%),高血圧(23.0%,50.0%),高コレステロール血症(34.0%,46.0%),喫煙(36.0%,27.2%),EuroSCORE(3.3,4.4),不安定狭心症(68.0%,86.4%)。◆冠動脈造影(CAG)背景:入口病変(70.0%,40.8%),遠位分岐部病変(30.0%,59.2%),LMCA病変のみ(55.0%,10.4%),LMCA+1枝病変(21.0%,14.4%),LMCA+2枝病変(16.0%,22.4%),LMCA+3枝病変(8.0%,52.8%),右冠動脈病変(18.0%,66.8%),完全閉塞≧1枝(13.0%,32.4%)。
[5年追跡コホート]:平均年齢(DES群61.1歳,CABG群62.4歳),男性(71.0%,74.0%),糖尿病(29.5%,37.0%),高血圧(47.2%,55.3%),高コレステロール血症(35.2%,55.3%),喫煙(17,6%,19.6%),EuroSCORE(3.3,4.5),不安定狭心症(34.7%,78.1%)。◆CAG背景:入口病変(32.4%,31.1%),遠位分岐部病変(67.6%,68.9%),LMCAのみ(22.7%,4.6%),LMCA+1枝病変(26.1%,5.9%),LMCA+2枝病変(26.7%,25.6%),LMCA+3枝病変(24.4%,63.9%),右冠動脈病変(42.0%,80.4%)。
[CABG例]:オンポンプ(10年コホート97.2%,5年コホート81.3%),患者ごとのグラフト数(4.3,3.3):動脈グラフト(1.1,2.5);静脈グラフト(3.2,0.9),>1本の動脈導管使用(90.4%,98.2%),内胸動脈-左前下行枝グラフト使用(90.0%,95.4%)。
[PCI例]:sirolimus溶出ステント95.5%,LMCAへの植込みステント数(いずれのコホートも1.3),総ステント長(10年コホート16.2mm,5年コホート35.2mm),植込みステント数/患者(1.6,2.5),IVUSガイド(67.0%,89.2%),治療遠位分岐部病変(30例,119例)。
調査方法 患者または医師の希望,あるいはCABG高リスク症例の場合はCABGではなくPCIを施行し,DESの種類(sirolimus溶出ステント,paclitaxel溶出ステント)は手技者に一任した。
PCI施行例は手技前,周術期にaspirin+ticlopidine(ローディングドーズ500mg),あるいはclopidogrel(ローディングドーズ300または600mg),手技後aspirinは無期限投与した。
BMS例はticlopidine 250mg×2回/日を1か月以上,DES例はclopidogrel 75mg/日を6か月以上投与。この投与期間後の治療は担当医の判断とした。
PCI施行例には手技から6~10か月後のルーチンCAGを推奨したが,CAGによる合併症高リスク例,虚血の兆候,症状のないもの,拒否した患者には実施しないこととした。またCABG例は虚血の兆候,症状のある場合のみCAGを推奨。
ランダム化試験ではなく観察試験のため解析はpropensity-score法(4分位に層別)を使用した。
結果 完全再灌流達成率:10年追跡コホート(BMS群67%,CABG群83.6%;p=0.001),5年追跡コホート(DES群71.6%,CABG群80.4%;p=0.04)。
10年追跡コホート:完全追跡データ96.9%(BMS群96.0%,CABG群97.2%)。
5年追跡コホート:97.2%(DES群97.7%,CABG群96.8%)。
[有効性の一次エンドポイント:propensity-score調整後のTVR]
・10年追跡コホート
BMS群 vs CABG群:ハザード比10.34;95%信頼区間4.61~23.18(p<0.001)。
・5年追跡コホート
DES群 vs CABG群:6.22;2.26~17.14(p<0.001)。
[安全性の一次エンドポイント:propensity-score調整後の全死亡,死亡+Q波梗塞+脳卒中の複合エンドポイント]
死亡:10年追跡コホート(BMS群 vs CABG群:0.81;0.44~1.50,p=0.50),5年追跡コホート(DES群 vs CABG群:0.83;0.34~2.07,p=0.70)。
死亡+Q波梗塞+脳卒中の複合エンドポイント:10年追跡コホート(0.92;0.55~1.53,p=0.74),5年追跡コホート(0.91;0.45~1.83,p=0.79)。
★結論★非保護左主幹部病変に対するPCIの長期死亡,死亡+Q波梗塞+脳卒中はCABGと同等であるが,ステントはDESでも血行再建術の再施行率がCABGより高い。
文献
  • [main]
  • Park DW et al: Long-term outcomes after stenting versus coronary artery bypass grafting for unprotected left main coronary artery disease: 10-year results of bare-metal stents and 5-year results of drug-eluting stents from the ASAN-MAIN (ASAN medical center-left main revascularization) registry. J Am Coll Cardiol. 2010; 56: 1366-75. PubMed

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収載年月2011.01