循環器トライアルデータベース

BASKET-PROVE
Basel Stent Kosten-Effektivitats Trial- Prospective Validation Examination

目的 大径の冠動脈病変に対する第一世代薬剤溶出性ステント(DES)*のベアメタルステント(BMS)に比べた長期心イベントリスク増大の可能性が報告されている(BASKET trial)。BASKET-PROVEではそのリスク-ベネフィットバランスをプロスペクティブに検討し直すとともに,第一世代DESと第二世代DES**で違いがあるのかを評価する。
一次エンドポイントは2年後の心臓死,非致死的心筋梗塞(MI)の複合エンドポイント。
* sirolimus溶出性ステント(SES),** everolimus溶出性ステント(EES)
コメント DESのダークサイドが議論される時に必ず引き合いに出されるトライアルの一つに BASKET-LATE試験がある(J Am Coll Cardiol 2006. 48: 2584-2591. PubMed, Eur Heart J 2009. 30: 16-24. PubMed)。第一世代の DES留置後,clopidogrelを中止した半年以降の遠隔期に心臓死・非致死性心筋梗塞が増加,特に3.0mm以上のDESではTLR予防に有意差がつかず,ステント血栓症を主たる原因とするイベントが3倍以上であった。小血管に比べてDESの優位性が示されにくい血管径の病変とは言え, DESマニア達に冷水を浴びせる衝撃的な報告であった。
今回のBASKET-PROVEでは症例数を増やし,第二世代DESにまで対象を拡げて,3.0mm径以上のDESでのrisk-benefit balanceを再検証することを目的としている。残念ながらQCAのデータが示されておらずまた平均ステント長も22mmと長めで,どの程度BMS寄りの病変なのか実感できないが,結果は BASKET-LATEと同様の結果を想定した彼らの思惑とは大きく異なっていた。すなわち,DES群でTLRが有意に抑制されイベントも減少傾向を示す“いつもの”DES対BMSの結果であった。自分で引き起こした火事を自ら消火した感もあるが,その背景には DES留置に関する経験の蓄積,抗血小板剤投与期間の延長,多施設での検討,使用DESの違いなどさまざまな要因が挙げられる。 2/3がACSと対象疾患に偏りがあり,追跡期間も2年と短く DES特有とされる超遅発性ステント血栓症の影響が加味しきれておらず,その解釈には注意を要する。しかしこれからはBASKET-LATEが引き合いに出されることは少なくなるかもしれない。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,多施設(スイス,デンマーク,オーストリア,イタリア),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は745日(中央値)。
登録期間は2007年3月5日~2008年5月15日。
対象患者 2,314例。慢性あるいは急性の冠動脈疾患に対するステント植込み例;ステント径≧3mmに限定。
除外基準:心原性ショック;ステント再狭窄あるいはステント血栓症;プロテクトされていない左主幹部病変(機能していないバイパス術後例も含む),あるいはグラフト狭窄;12か月以内の手術予定例;経口抗凝固薬必要例,出血リスク上昇例,(SESにサイズがないため)ステント径≧4.0mmの植込み例など。
■患者背景:平均年齢(SES群66歳,EES群66歳,BMS群67歳),男性(74%, 76%, 77%),安定狭心症(34%, 35%, 37%),不安定狭心症(31%, 34%, 32%),ST上昇型MI(34%, 31%, 31%),危険因子:糖尿病(18%, 15%, 14%),高血圧(62%, 61%, 63%),喫煙率(30%, 34%, 34%),既往:MI(12%, 11%, 13%);PCI(13%, 12%, 12%),CABG(3%, 3%, 3%)。
治療病変:左前下行枝(52%, 53%, 52%),左回旋枝(26%, 26%, 27%),右冠動脈(41%, 40%, 42%);複雑度:多枝病変(44%, 41%, 43%),分岐部(8%, 7%, 9%),慢性完全閉塞(5%, 4%, 5%),<3mmのステント追加植込み(3%, 6%, 6%),GP IIb/IIIa受容体拮抗薬(23%, 22%, 23%)。
・手技背景:治療セグメント数/患者(1.4, 1.4, 1.5),植込みステント数/患者(1.6, 1.7, 1.7),ステント長/病変(22mm, 22mm, 21mm),冠動脈造影上の成功(98%, 98%, 97%),オフラベル(78%, 75%, 75%)。
治療法 SES群(775例),EES群(774例),BMS群(765例)。
BMSはVision stent®を用いた。マルチステンティング,複数回におよぶPCIでは同一のステントを留置した。
全例にaspirin 75~100mg/日を無期限に,clopidogrel 300~600mgローディング投与後75mg/日を1年間投与。必要に応じて慢性期冠動脈造影を施行。
結果 初回PCI後のインフォームド・コンセント撤回21例,終了前の追跡不能例38例,1剤以上の抗血小板薬投与例:1年後97%→ 2年後95%。aspirin+clopidogrel投与例:82%→ 19%。
[一次エンドポイント:2年後の心臓死+非致死的MIの複合エンドポイント]
SES群2.6% vs EES群3.2% vs BMS群4.8%。
ハザード比(HR)0.54;95%信頼区間0.31~0.93, p=0.13(SES群 vs BMS群),0.66;0.40~1.10, p=0.37(EES群 vs BMS群),0.82;0.45~1.47, p=0.78(SES群 vs EES群)。
・0~6か月:1.4% vs 1.3% vs 2.7%。
HR:0.52;0.25~1.08(p=0.31), 0.47;0.22~1.01(p=0.22), 1.10;0.47~2.59(p=0.92)。
7~24ヵ月:1.2% vs 1.9% vs 2.1%。
HR:0.56;0.25~1.27(p=0.42), 0.90;0.44~1.82(p=0.90), 0.63;0.27~1.43(p=0.51)。
[主な二次エンドポイント]
MI非関連標的血管再血行再建術(TVR):3.7% vs 3.1% vs 8.9%。
HR:0.46;0.30~0.73(p=0.007), 0.39;0.24~0.63(p=0.002), 1.18;0.69~2.04(p=0.82)。
死亡,MI,TVR:7.9% vs 7.6% vs 12.9%。
HR:0.59;0.43~0.82(p=0.009), 0.56;0.41~0.78(p=0.005), 1.05;0.74~1.51(p=0.90)。
ステント血栓症(definite, probable):0.8% vs 0.6% vs 1.2%。
HR:0.75;0.26~2.18(p=0.85), 0.62;0.20~1.88(p=0.67), 1.23;0.37~4.02(p=0.90)。
★結論★大きな血管径の病変に対するステント植込み例において,sirolimus溶出ステント(第一世代DES),everolimus溶出ステント(第二世代DES),ベアメタルステント間に心臓死,非致死的MIに有意差は認められなかった。標的血管再血行再建術抑制において,2種類の薬剤溶出性ステントは同等であった。
文献
  • [main]
  • Kaiser C et al for the BASKET-PROVE study group: Drug-eluting versus Bare-metal Stents in Large Coronay Arteries. N Engl J Med. 2010; 363: 2310-9. PubMed

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収載年月2010.12