循環器トライアルデータベース

PROTECT
Placebo-Controlled Randomized Study of the Selective A1 Adenosine Receptor Antagonist Rolofylline for Patients Hopsitalized with Acute Decompensated Heart Failure and Volume Overload to Assess Treatment Effect on Congestion and Renal Function

目的 急性心不全患者では腎機能が低下することが多く,ひいては転帰不良と関連する。実験的および臨床研究からアデノシンの臓器保護作用が逆に転帰不良に関与している可能性が示唆されている。
腎機能が障害された急性心不全患者において,アデノシンA1受容体拮抗薬rolofyllineが呼吸困難を改善し,腎機能の悪化のリスクを低下させ,より良好な臨床経過につながるかを検討する。
一次エンドポイントは,生存率,心不全の状態,腎機能の変化に基づく治療の成功*,無効**,不変。
* 患者申告による24時間後と48時間後の呼吸困難の中等度~著明な改善,failure(無効)のいずれの基準にも相当しない
** 7日後の死亡,心不全による再入院;試験薬投与から24時間以上経過後の心不全の徴候,症状の悪化がみられ7日以内あるいは退院時に手技が必要;7日目まで持続的に腎機能が悪化(クレアチニン≧0.3mg/dL上昇);試験薬投与から7日間の血液ろ過開始あるいは血液透析導入
コメント 腎機能障害は急性心不全の予後を不良にするため,アデノシンA1受容体拮抗薬による腎保護作用が予後改善をもたらすことが期待されていた。PROTECT pilot研究においてrolofylline 30mg投与群で,第2,第3病日の呼吸困難が改善し腎機能障害の抑制もみられたため,予後改善効果が期待されたのも当然であると思われるが,今回の第3相試験の結果は,残念ながら本剤の有効性を否定する結果となった。rolofylline投与群の0.8%に痙攣がみられたのも憂慮する材料となっているが,持続的腎機能低下の抑制もみられず,急性期の短期投与の効果には限界があることを示唆しているものと考えられる。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(北米,ヨーロッパ,イスラエル,アルゼンチンの173施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は180日。
ランダム化期間は2007年5月~2009年1月。
対象患者 2,033例。持続性呼吸困難(安静時あるいは軽度労作時);腎機能障害(推定クレアチニンクリアランス20~80mL/分);脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)≧500pg/mLあるいはN末端プロ脳ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)≧2000pg/mL;ループ系利尿薬投与例;入院から24時間以内。
除外基準:てんかん既往あるいはてんかんのリスク保有例など。
■患者背景:平均年齢70.2歳,男性(rolofylline群67.3%,プラセボ群66.8%),白人(95.2%, 95.5%),BMI(28.9kg/m², 28.8kg/m²),血圧(124.3/73.6mmHg, 124.2/74.0mmHg),仰臥位安静時心拍数(79.8拍/分,80.7拍/分),呼吸速度(21.2呼吸/分,21.3呼吸/分),BNP*(1290pg/mL, 1198pg/mL),NT-proBNP*(両群とも3000pg/mL),クレアチニンクリアランス(50.4mL/分,51.0mL/分),過去6か月のEF(0.323, 0.325)。
* 中央値
既往:入院前1か月の心不全(94.6%, 95.1%),虚血性心疾患(70.5%, 68.5%),心筋梗塞(50.8%, 46.3%;p=0.06),高血圧(80.2%, 77.8%),心房細動(53.5%, 57.0%),ICD(16.2%, 15.5%),両腔ペースメーカー(10.5%, 9.8%),糖尿病(45.2%, 45.8%),COPDあるいは喘息(20.0%, 19.4%)。
治療法 登録患者を2:1にランダム化した。
rolofylline群(1,356例):30mg(0.5mg/mL)を4時間静注/日し,最長3日間投与した,プラセボ群(677例)。
結果 [入院後の治療]
試験薬投与期間:rolofylline群(1日;7.6%,2~3日;90.9%),プラセボ群(7.0%,91.6%)。
7日間の治療:ループ系利尿薬総静注用量は両群とも280mg(中央値),強心薬あるいは昇圧剤静注(7.2%,8.0%),血管拡張薬静注(11.3%,11.5%)。
退院時あるいは7日後の治療:ACE阻害薬,ARB(ベースライン時76.3%,74.4%→ 82.6%,81.5%),β遮断薬(76.5%,75.7%→ 84.6%,84.2%),アルドステロン受容体拮抗薬(44.5%,42.4%→ 59.8%,60.3%),硝酸薬(経口,貼付薬27.0%,23.9%→ 21.0%,19.1%),digoxin(27.3%,29.6%→ 31.8%,34.6%)。
[一次エンドポイント:生存率,心不全の状態,腎機能の変化に基づく治療の成功,無効,不変]
rolofylline群のプラセボ群に比べた有効性は認められなかった(オッズ比[OR]0.92;95%信頼区間0.78~1.09,p=0.35)。
成功:rolofylline群551例(40.6%) vs プラセボ群244例(36.0%):OR 1.22;1.01~1.47(p=0.04)
不変:509例(37.5%) vs 299例(44.2%)
無効:296例(21.8%) vs 134例(19.8%):1.13;0.90~1.42(p=0.30)
無効の内訳:7日以内の死亡(23例[1.7%] vs 14例[2.1%]);7日以内の心不全による再入院(5例[0.4%] vs 4例[0.6%]);3~7日後の心不全悪化(123例[9.1%] vs 66例[9.7%]);7日間の持続的腎機能悪化(172例[12.7%] vs 75例[11.1%])。
本結果のサブグループによる異質性はみられなかった。
[二次エンドポイント]
60日後の死亡,心血管疾患あるいは腎疾患による再入院:rolofylline群30.7% vs プラセボ群31.9%:ハザード比(HR)0.98;0.83~1.17(p=0.86)。
持続的腎機能低下:15.0% vs 13.7%:OR 1.11;0.85~1.46(p=0.44)。
180日後の死亡:17.9% vs 17.4%:HR 1.03;0.82~1.28(p=0.82)。
[安全性]
1件以上の有害事象発生:840例(62.9%) vs 409例(61.4%)。
重篤な有害事象:185例(13.8%) vs 98例(14.7%),投与中止に至ったのは両群とも1.5%,死亡例:3.7% vs 5.3%,もっとも多かったのは心イベント(96例[7.2%] vs 60例[9.0%])で,心不全,心室粗動の発生率が高かったが,いずれもrolofylline群で低い傾向がみられた(p=0.04,p=0.10)。
脳卒中:15例 vs 2例,14日後の神経学的有害事象(痙攣):11例 vs 0例。
★結論★腎機能障害を合併した急性心不全患者において,rolofyllineの呼吸困難改善はみられたものの,腎機能低下のリスクを減少させないなどその他の有効性は認められなかった。
ClinicalTrials. gov No: NCT00328692,NCT00354458
文献
  • [main]
  • Massie BM et al for the PROTECT investigators and committees: Rolofylline, an adenosine A1-receptor antagonist, in acute heart failure. N Engl J Med. 2010; 363: 1419-28. PubMed

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収載年月2011.02