循環器トライアルデータベース

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Adherence to Treatment of Coronary Patients after a Catheterization with DES Implantation

目的 薬剤溶出性ステント(DES)植込み後早期のチエノピリジン系抗血小板薬の投与中止は,ステント血栓症の強力な危険因子である。DES植込み後1年間は,生命にかかわる出血などさまざまな理由で抗血小板薬の投与中止(ATD)となる。その危険因子として医学的要因,心理社会的要因,ケアプロセスなどが報告されているが,これらは仮説生成型の研究であり検証はなされていない。
本研究では,DES植込み例において植込み後1年間のATD発生率と背景を調査し,発生を予測しうる因子を探索する。
コメント チエノピリジンの早期投薬中止はDES後のステント血栓症の危険因子である。1600例あまりのDES植え込み例をプロスペクティブに検討した本研究において,DES後1年間での抗血小板薬の中断は14%に認められたが,大出血や手術に由来するよりも小出血や出血と関連のない医学的要因や患者の判断に関係していた。慢性腎臓病・大出血既往・PADがあると出血や手技に伴う抗血小板薬の中断を生じやすく,移民・失業・向精神薬の服用も有意な中止要因である。これまで小規模や単施設あるいは急性心筋梗塞後1ヵ月間など限られた条件下でのDES後の抗血小板薬中断の要因を検討した報告があり,独居などの社会的要因や出血イベント,退院時の服薬指導も重要な因子とされている。出血リスクが低い人に対しても一般医は22%の例に抗血小板薬の併用を中断すること,侵襲的手技時の中断率は専門医と一般医では異なること,医師の年齢にも中断率は依存すること,が明らかになっている。抗血小板薬の投与中止率は最初の6ヵ月間よりも一般医がより関与する次の6ヵ月間の方が高く,この時期に出血や手技と関連のない医学的要因による投与中止が多い。長期の抗凝固療法を行っている例では抗血小板薬の併用により出血リスクが高まると考えられ抗血小板薬の投与中止がより生じやすいが,公立の施設やより症例数が多い施設では医学的判断による投与の中止は少ない。病院間での抗血小板薬投与中止率の差は有意であるが,個人の社会的要因を加味するとこの有意差は減弱し,移民・失業者・向精神薬服用者は特定の施設に集中していると考えられる。
今回の抗血小板薬投与中止の基準は連続5日間以上としており,クロピドグレルが手術前5日間は最低中止することが推奨されていることに由来するが,アスピリン・クロピドグレルの今回の中止基準が最適か否かのエビデンスはない。対象患者のうちfollow upが出来なかった症例は17%で,喫煙例・担癌例の比率が多いこと,最初の3ヵ月で23人が死亡しており早期のステント血栓症が否定できないことが本研究の限界かもしれない。いずれにしてもDES後の抗血小板薬の中止には予想以上のコンプライアンス不良が関与しており注意が必要である。(星田
デザイン 前向き観察研究,多施設(スペインの29施設)。
期間 追跡期間は1年。
登録(DES施行)期間は2008年1月28日~4月28日。
参加者 1,606例(解析対象者)。DESを1本以上植込んだ患者。
■患者背景:平均年齢64.1歳,女性21.6%,移民3.1%,現喫煙者22.1%,高コレステロール血症60.7%,高血圧66.9%,糖尿病36.05%,インスリン治療例27.9%,既往:末梢動脈疾患(PAD)12.1%;急性心筋梗塞(MI)28.7%;CABG 8.1%;PTCA 27.1%;大出血2.7%,入院前の抗血小板薬長期投与51.9%,入院時の診断:ST上昇型急性冠症候群(ACS)15.6%,非ST上昇型 ACS 42.9%,冠動脈疾患による待機的入院31.7%。
調査方法 DES植込み後3,6,9,12か月に電話による聞き取り調査を実施。調査項目は,(1) 生命状態,(2)薬物療法,(3)前回調査以降,一時的もしくは永久に投与を中止した薬剤,(4)投与中止理由,(5)入院。
clopidogrel,aspirin,または両方を連続5日間投与しなかった場合をATDと定義し,さらにATDをその理由により4つに分類した:「出血イベントまたは手技によるATD」,「出血イベントや手技とは無関係の医学的判断によるATD」,「患者の判断によるATD」,「ATDなし」。
多項ロジスティック回帰分析により,各ATDと患者背景(社会的背景,心血管既往,疾患,入院理由,心理社会的特徴など)および施設要因(大学病院,民間病院,退院時の抗血小板薬[AT]服薬指導など)の関係を評価。
結果 追跡候補者1,965例のうちATD評価可能例は1,622例(82.5%)。ATDの理由が不明であった16例を除外して,1,606例を解析。
死亡またはACSによる入院は83例(5.1%)。
[ATDの発生率]
ATDが1回以上発生した患者は234例(14.4%),「ATDなし」は1,388例。
ATDの多くはclopidogrelの中止で(182例,11.8%),永久的ATDは111例(6.8%),一時的ATDは123例(7.6%)であった(平均ATD期間は9.5日,中央値7日[範囲5~10日])。ATD発生率は追跡期間中ほぼ一定であった(3~3.5%/interval)。
[ATDの背景と予測因子]
・出血イベントまたは手技によるATD
109例に発生。このうち入院を要する大出血および大手術によるものは56例(51.4%)のみで,小手術は48例(44%),小出血は3例(2.7%)。ATDは再入院回数と強く相関した(p<0.001)。
ATDとの関連が認められた因子は,慢性腎障害(オッズ比2.81;95%信頼区間1.48~5.34),大出血の既往(3.77, 1.41~10.03),PAD(1.78;1.01~3.15),MIの既往(0.46;0.26~0.8)。
・出血イベントや手技とは無関係の医学的判断によるATD
70例に発生。
ATDとの関連が認められた因子は,退院時の経口抗凝固薬処方(3.88;1.26~11.98),公立病院(0.075;0.01~0.59),退院前のAT服薬指導(0.357;0.16~0.81)。
・患者の判断によるATD
39例発生。
ATDとの関連が認められた因子は,移民(3.78;1.2~11.98),失業(3.42;0.94~12.5),向精神薬の使用(2.58;1.3~5.12)であった。
★結論★DES植込み後1年間のATDは,主として患者の判断あるいは大出血イベントや手技に関連しない医学的判断によるものであった。ATDの予測には患者背景と施設要因の両方が重要である。

[主な結果]
  • DES植込み後1年間の抗血小板薬の投与中止は約11%で多くは一時的。心イベントリスクと独立した関連は認められず。
    抗血小板薬を2剤併用している1,622例において抗血小板薬の投与中止と主要心イベント(心臓死,急性冠症候群[ACS])の関係を評価した結果:DES植込み後1年間に抗血小板薬のいずれかを中止した患者は172例(10.6%),このうち1か月以内の中止は1例のみ。中止例の多くは一時的で(111例,中央値7日),clopidogrelの中止が79例(一時的な中止31例),aspirinが38例(27例),両薬剤が55例(53例)。中止後の主要心イベント発生は7例(4.1%;95%信頼区間1.7~8.2)で,中止しなかった患者の発生率(80例;5.5%;4.4~6.8)と変わらなかった(p=0.23)。投与中止は1年後の主要心イベントに関連しなかった(ハザード比1.32;95%信頼区間0.56~3.12, p=0.526)(Ferreira-González I et al: Double antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: risk associated with discontinuation within the first year. J Am Coll Cardiol 2012; 60: 1333-9.)。 PubMed
  • Ferreira-González I et al: Background, incidence, and predictors of antiplatelet therapy discontinuation during the first year after drug-eluting stent implantation. Circulation. 2010; 122: 1017-25. PubMed

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収載年月2010.12
更新年月2013.02