循環器トライアルデータベース

FUTURA/OASIS-8
Fondaparinux Trial with Unfractionated Heparin during Revascularization in Acute Coronary Syndrome

目的 Xa阻害薬fondaparinuxを投与した非ST上昇型急性冠症候群(ACS)患者におけるPCI施行時の未分画heparin(UFH)追加投与至適用量を検討する。
一次エンドポイントは周術期(手技から48時間以内)の大出血+小出血+血管アクセス部位に関連した主要な合併症の複合エンドポイント。
* 大血腫,治療を要する仮性動脈瘤,動静脈瘻,アクセス部位に関連するその他の血管手技。
コメント 急性冠症候群に対するXa阻害薬fondaparinuxの有効性はOASIS-5試験においてすでに示されている。OASIS-5試験では,死亡/心筋梗塞/虚血の再発という主要エンドポイントに関してfondaparinuxの低分子ヘパリン(enoxaparin)に対する非劣性が証明され,またfondaparinux使用群において有意に出血イベントの発生率が低いことが示された。しかし,その一方で頻度は低いもののカテーテルに関連した血栓症がfondaparinux群で有意に多い結果であった。このことから,PCIを施行する非ST上昇型心筋梗塞患者に対してfondaparinuxを使用する際には補助療法として未分画ヘパリンを使用することがガイドラインで推奨されている。
本試験はこの際に使用される未分画ヘパリンの至適用量を検討したものである。具体的にはACTで調整しながらガイドライン推奨量を投与する方法(標準治療群)と50U/kgの固定量のみを投与する方法(低用量群)の2つのレジメンを比較している。
結果は,未分画ヘパリンの投与量を低用量としても周術期の大出血や血管アクセス部位に関連した合併症の頻度は通常用量と変わらないというものであった。また,懸念されていたカテーテルに関連した血栓症については通常用量群では0.1%と非常に低率であることが示された。さらに,有意差は認めていないもののステント血栓症など血栓性のイベントに関しては,標準用量群で低い傾向にあった。本試験では,主要エンドポイントの発生率が5%前後と低率であったことから未分画ヘパリンの低用量での使用を完全に否定するには検出力不足であるが,今までになかった2000例を超える大規模でPCI施行時における未分画ヘパリンの至適用量を検討した意義は大きく,ガイドラインに準拠したACTガイド下での標準的な未分画ヘパリン使用の周術期における出血性合併症に対する安全性を示していると言える。(木村
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(18か国179施設)。
期間 追跡期間は30日。
登録期間は2009年2月~2010年3月。
対象患者 2,026例。fondaparinuxを皮下注した高リスクACSで早期冠動脈造影(CAG)適応症例:安静時あるいは軽労作で発症した新規虚血,虚血症状の悪化例;直近の症状から48時間以内の登録;72時間以内のCAG予定例,PCI適応例;次のうち2つ以上が合致するもの:60歳以上,トロポニンT,I,クレアチンキナーゼMB>正常上限値,心電図上の虚血性変化(2連続誘導でのST≧1mmの低下,>3mmのT波逆転,すべての動的ST変化。
除外基準:<21歳;UFHあるいはfondaparinux,CAGの禁忌;動的ST変化を伴う難治性あるいは再発性狭心症,心不全,生命にかかわる不整脈,血行動態不安定による緊急(<120分)CAG必要例など。
■患者背景:平均年齢(標準用量群65.5歳,低用量群65.3歳),男性(68.5%, 67.3%),血圧(137.0/79.0mmHg, 138.0/79.8mmHg),既往:心筋梗塞(MI:20.7%, 17.8%);PCI(18.1%, 16.4%);CABG(5.9%, 4.6%),危険因子:高血圧(69.0%, 66.9%);高コレステロール血症(41.7%, 40.0%);糖尿病(27.9%, 26.1%)。
治療背景:PCIに関連しない未分画heparin(11.0%, 11.3%),低分子量heparin(14.6%, 16.3%),市販のfondaparinux(33.0%, 34.5%),β遮断薬(66.4%, 66.2%),ACE阻害薬/ARB(49.3/9.6%, 49.6/10.5%),スタチン系薬剤(60.0%, 61.1%),インスリン/経口血糖低下薬(12.4/10.2%, 10.0/8.8%),clopidogrel(79.8%, 79.2%),aspirin(90.1%, 87.6%)。
非ST上昇型心筋梗塞はおよそ3/4,不安定狭心症が1/4,発症から登録までの時間は19時間,発症からPCIまでは27時間(いずれも中央値),fondaparinux最終投与からPCIまでの時間は標準用量群4時間7分,低用量群4時間26分。
治療法 fondaparinux 2.5mg/日をオープンラベルで皮下注射し,CAGによりPCI施行確定後にランダム化。
標準用量群(1002例):目標活性化凝固時間(ACT)で調整しながらガイドライン推奨量を投与;85U/kgをボーラス投与し,ACT 300~350秒(血液凝固分析装置により250~300秒)を達成するように追加ボーラス投与。
GP IIb/IIIa受容体拮抗薬併用投与例は60U/kgをボーラス投与し,ACT≧200秒を達成するように追加ボーラス投与。
ACTは最初のボーラス投与の5分後に測定した。
低用量群(1024例):GP IIb/IIIa受容体拮抗薬投与の有無を問わず,全例に50U/kg固定ボーラス投与し,ACTによる用量調整はなし。
両群ともガイドワイヤ挿入の1分以上前に投与した。
結果 [治療,手技]
PCI前後のfondaparinux投与期間は3日(中央値)で,大半の患者(71.3%, 72.7%)がPCI後も2日間(中央値)投与。
UFH標準用量群の投与量(中央値)は6400U(85U/kg),低用量群は3800U(50U/kg)。標準用量群の205例(20.5%)が目標ACT達成のため追加ボーラス投与した。
ステント植込み例(94.0%, 93.7%);1本以上の薬剤溶出性ステント(51.0%, 50.4%);1本以上のベアメタルステント(53.4%, 53.9%)。
[一次エンドポイント:周術期の大出血,小出血,血管アクセス部位の主要な合併症]
標準用量群58例(5.8%) vs 低用量群48例(4.7%):オッズ比0.80;95%信頼区間0.54~1.19(p=0.27)。
大出血:12例(1.2%) vs 14例(1.4%):1.14;0.53~2.49(p=0.73)。
小出血:17例(1.7%) vs 7例(0.7%):0.40;0.16~0.97(p=0.04)。
主要な血管アクセス部位の合併症:43例(4.3%) vs 33例(3.2%):0.74;0.47~1.18(p=0.21)で,主に大血腫であった(37例[3.7%] vs 24例[2.3%], p=0.08)
[主要二次エンドポイント:周術期大出血+死亡+MI+標的血管血行再建術(TVR)の複合エンドポイント]
39例(3.9%) vs 59例(5.8%):1.51;1.00~2.28(p=0.05)。
MI:25例(2.5%) vs 31例(3.0%):1.22;0.72~2.08(p=0.47)。
死亡:6例(0.6%) vs 8例(0.8%):1.31;0.45~3.78(p=0.62)。
[その他の結果]
心血管死+MI+TVR+ステント・カテーテル血栓症:30例(3.0%) vs 49例(4.8%):1.63;1.02~2.59(p=0.04)。
心血管死+MI+TVR+ステント・カテーテル血栓症+CAGで確認された血栓:36例(3.6%) vs 57例(5.6%):1.58;1.03~2.42(p=0.04)。
カテーテル・シース血栓症:3例 vs 5例:1.63;0.39~6.85.
★結論★fondaparinuxを投与した非ST上昇型ACSにおけるPCI時のUFH低用量投与による標準用量投与に比べた周術期大出血およびアクセス部位合併症抑制は認められなかった。
ClinicalTrials. gov. No: NCT00790907
文献
  • [main]
  • Steg PG, et al.; the FUTURA/OASIS-8 trial group: Low-dose vs standard-dose unfractionated heparin for percutaneous coronary intervention in acute coronary syndromes treated with fondaparinux: the FUTURA/OASIS-8 randomized trial. JAMA. 2010; 304: 1339-1349. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2010.11