循環器トライアルデータベース

Alpha Omega

目的 心筋梗塞既往例において,低用量の魚由来のn-3系脂肪酸(エイコサペンタエン酸[EPA],ドコサヘキサエン酸[DHA]),植物由来のn-3系脂肪酸(α-リノレン酸[ALA])の心血管保護効果を検討する。
一次エンドポイントは主要心血管イベント(致死的・非致死的心血管疾患,インターベンション[PCI,CABG]の複合エンドポイント)。
コメント n-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)が心血管イベント抑制に有効であることは,多くの疫学的調査でも明らかであり,大規模介入試験でも示されてきたところである。これまでの試験では,低用量でも有効であり,用量依存性がないことが示唆されていることから,本試験では約400mg/日という低用量での比較試験を大規模に行っている。対象は二次予防患者ということから高リスク患者である。結果としては,低用量のn-3 PUFAには心血管イベントの抑制効果は示しえなかったということである。
これまでの試験結果と異なる理由はいくつか挙げられている。第一にGISSI試験では心筋梗塞患者でも発症後3ヵ月以内と比較的早期の患者が組み込まれている点である。n-3 PUFAがプラークの安定化に効果を示すとすれば,本試験のような安定期の二次予防では有効性を示しえないのかもしれない。また,わが国で行われたJELIS試験では多くが女性であったが,本試験ではほとんどが男性であったという点も異なる。ALA群では,女性において有意な効果を示していることから女性のほうがn-3 PUFAは有効なのかもしれない。また,GISSI試験が行われた時代のスタチン使用と本試験で比較すると前者が5%で,後者が85%と心血管イベント抑制のための治療が十分行われている時代での試験であり,イベント自体の減少が有効性を示しえなかった大きな原因である可能性は考えられる。
ただし,post-hocの解析ではあるが糖尿病患者においてはn-3 PUFAがイベント抑制を示したということは,やはり,高リスクでイベント発症の多い場合には有効性を示す可能性を示唆するものと思われる。もう一点,やはり,n-3 PUFAの投与量はもう少し大量にすべきではないかと思われる。JELIS試験にしてもわが国のJALS調査でも本試験の数倍の投与量で,イベント抑制を示しているのであり,用量依存性のレベルの違いがあるのではないかと思われる。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,2×2 factorial,多施設(オランダの32施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は40か月(中央値40.8か月)。
登録期間は2002年4月~’06年12月。
対象患者 4,837例。60~80歳の過去10年以内に心筋梗塞(MI)と診断されたもの。
除外基準:マーガリンの摂取量<10g/日;n-3系脂肪酸のサプリメントを摂取しているもの;前年に意図せずに>5kg減量したもの;癌の診断を受け余命1年未満のもの。
■患者背景:平均年齢(EPA-DHA+ALA群69.1歳,EPA-DHA群69.1歳,ALA群69.0歳),プラセボ群68.9歳),男性78.2%,MI発症からの期間(中央値)3.7年,病院の記録でMIが確認できたもの99.3%,糖尿病21.0%,治療薬投与率:抗血栓薬97.5%;高血圧治療薬89.7%,脂質異常治療薬(主にスタチン)86.0%,抗不整脈薬3.0%,ホルモン補充療法:女性の2.2%,喫煙16.9%,肥満(≧30kg/m²)24.2%。
魚の摂取量14.9g/日,EPA-DHA摂取量130mg/日,試験期間中に市販のn-3系脂肪酸サプリメントを摂取していたもの4.7%。
治療法 EPA-DHA+ALA群(1,212例),EPA-DHA群(1,192例),ALA群(1,197例),プラセボ群(1,236例)。
EPA-DHA,ALAをマーガリンに添加したものを毎日摂取。
脂肪酸摂取量の目安は,EPA-DHA 400mg/日(EPA:DHA=3:2),ALA 2g/日。
ランダム化後4~6週間は全例がプラセボマーガリンを摂取。その後,割り付けられた脂肪酸を含む外観が同じマーガリン250g/容器×8個を12週間ごとに患者に配布。未開封の容器は回収し,マーガリン使用量から摂取量を算出した。
結果 [摂取量]
平均マーガリン摂取量は18.8g/日(EPA 226mg-DHA 150mg/日,ALA 1.9g/日)。90.5%がプロトコールを遵守し平均摂取量は20.6g/日。
20か月後,n-3系脂肪酸の追加を反映して,ALA群はプラセボ群,EPA-DHA群より血清ALA濃度が69.6%上昇し,プラセボ群,ALA群に比べEPA-DHA群ではEPA-DHA濃度が 53.3%,28.6%上昇した。20か月後の血清濃度の変化は40か月後も持続した。
[一次エンドポイント:主要心血管イベント]
15,531人・年の追跡で671例(13.9%)発生。
EPA-DHA群,ALA群いずれも一次エンドポイントを抑制しなかった。
EPA-DHA群336/2,404例(46.0例/1000人・年) vs プラセボ群/ALA群335/2,433例(45.7例/1000人・年):ハザード比1.01;95%信頼区間0.87~1.17(p=0.93)。
ALA群319/2,409例(43.6例/1000人・年) vs プラセボ群/EPA-DHA群352/2,428例(48.1例/1000人・年):0.91;0.78~1.05(p=0.20)。
[二次エンドポイント]
全死亡:EPA-DHA群186例(7.7%:24.0例/1000人・年) vs プラセボ群/ALA群184例(7.6%:23.7例/1000人・年):1.01;0.82~1.24(p=0.92)。
ALA群182例(7.6%:23.5例/1000人・年) vs EPA-DHA群/プラセボ群188例(7.7%:24.1例/1000人・年):0.97;0.79~1.19(p=0.80)。
心室性不整脈関連イベント:EPA-DHA群67例(2.8%:8.7例/1000人・年) vs プラセボ群/ALA群74例(3.0%:9.6例/1000人・年):0.90;0.65~1.26(p=0.55)。
ALA群62例(2.6%:8.1例/1000人・年) vs EPA-DHA群/プラセボ群79例(3.3%:10.2例/1000人・年):0.79;0.57~1.10(p=0.16)。
[サブグループ,有害イベント]
女性ではALA群で一次エンドポイントが27%抑制された(0.73;0.51~1.03, p=0.07)。その他に,EPA-DHA群,ALA群の方が一次エンドポイントを抑制したサブグループはなかった。
有害事象に試験群間差はみられなかった。
★結論★心筋梗塞既往で血圧・血栓・脂質治療を受けているものにおいて,EPA-DHA,ALAによる有意な主要心血管イベント抑制効果は認められなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00127452
文献
  • [main]
  • Kromhout D et al for the Alpha Omega trial group: n-3 fatty acids and cardiovascular events after myocardial infarction. N Engl J Med. 2010; 363: 2015-26. PubMed

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収載年月2010.08