循環器トライアルデータベース

DART
Dispatcher-Assisted Resuscitation Trial

目的 院外心停止症例において,居合わせた救急通報者が通信指令員の電話での指示に従って胸部圧迫単独の心肺蘇生(CPR)を行った場合,胸部圧迫+口うつし換気によるCPRに比べて生存率が上昇するかを検証する。
一次エンドポイントは生存退院率。
コメント 古典的な心肺蘇生は,胸部圧迫と口うつしの換気から成るが,口うつし換気の実施には抵抗がないわけではない。胸部圧迫単独にはこの抵抗はなく,胸部圧迫を中断する必要がなく,簡単に行いうる。本研究により,口うつし換気の有無は生存率に有意な差を与えず,一部の例(心原性,心室細動例)では生存率に差がみられた(胸部圧迫の方が良好)。目撃者が心肺蘇生を行う場合,とにかく胸部圧迫のみでよいので,救急隊到着までは継続することが大切であることを示した。(井上
デザイン 無作為割付け,多施設(米国,英国の3つの救急医療システム)。
期間 登録期間は,米国の2施設が2004年6月1日または2005年6月1日~2009年4月15日,英国の1施設が2005年1月1日~2008年3月15日。
対象患者 1,941例。18歳以上,心停止のため居合わせた人から救急通報された連続症例のうち,通信指令員が意識不明,正常呼吸なしと判断したCPR未実施例。通報者が通信指令員からの電話指示によるCPR実施に同意した場合にのみランダム化を実施。封筒法による割付け後,救急救命士による通常の心停止ケアおよび高度救命処置を受けた症例を解析。
除外基準:外傷,溺水,窒息による心停止例など。
■患者背景:平均年齢(胸部圧迫単独群63.4歳,胸部圧迫+口うつし換気群63.9歳),男性(67.2%, 63.9%),施設(ロンドン:33.4%, 34.1%),心停止の原因:心原性(71.4%, 73.9%);呼吸器疾患(7.6%, 6.1%),目撃者あり(42.6%, 45.5%),心停止場所:自宅(86.1%, 87.2%);公共の場(9.6%, 9.0%),通報から到着までの時間(6.5分,6.7分),高度救命処置までの時間(9.8分,10.0分),除細動適応の不整脈(32.5%, 31.7%)。
治療法 胸部圧迫単独群(981例:圧迫50回/1サイクル)と胸部圧迫+口うつし換気群(960例:口うつし換気2回後に圧迫15回/1サイクル)の繰り返しにランダム化。
通信指令員の指示に従い,居合わせた人が胸部圧迫の回数を声に出してカウントしながらCPRを実施。1サイクル終了後,通信指令員が患者の状態を確認し,必要な場合はCPRを再実施。
二次エンドポイントの一つである退院時の神経学的状況は,Cerebral Performance Category(CPC)により5段階で評価し,CPC 1~2を「神経学的予後良好」と判定した(評価可能であった2施設のみで評価を実施)。
結果 ・CPR実施率
居合わせた人による胸部圧迫実施例は,胸部圧迫単独群が胸部圧迫+口うつし換気群よりも有意に多かった(80.5% vs 72.7%, p<0.001)。
・一次エンドポイント
生存退院率に有意な両群間差は認められなかった(12.5% vs 11.0%, p=0.31)。
・二次エンドポイント
神経学的予後が良好であった生存退院者の割合は両群で同等であった(14.4% vs 11.5%, p=0.13)。
・サブグループ
心原性心停止の症例では,生存退院率は胸部圧迫群のほうが高い傾向がみられ(15.5% vs 12.3%, p=0.09),同群のほうが退院時の神経学的予後も良好であった(18.9% vs 13.5%, p=0.03)。除細動適応の不整脈例でも同様の傾向がみられた(31.9% vs 25.7%, p=0.09)。
★結論★院外心停止例において,居合わせた人が電話指示により胸部圧迫のみを実施した場合の生存退院率は,胸部圧迫と口うつし換気を行った場合に比べて増加しなかった。ただし,心原性心停止および,除細動適応の不整脈例では,胸部圧迫のみのほうが生存退院率が高い傾向が認められた。
ClinicalTrials.gov No: NCT00219687
文献
  • [main]
  • Rea TD et al: CPR with chest compression alone or with rescue breathing. N Engl J Med. 2010; 363: 423-33. PubMed
    Weisfeldt ML: In CPR, less may be better. N Engl J Med. 2010; 363: 481-3. PubMed

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収載年月2010.09