循環器トライアルデータベース

CREST
Carotid Revascularization Endarterectomy vs. Stenting Trial

目的 症候性または無症候性の頭蓋外頸動脈狭窄患者において,頸動脈ステント植込み(CAS)と頸動脈内膜切除術(CEA)の転帰を比較する。
一次エンドポイントは周術期*の脳梗塞,心筋梗塞(MI),または全死亡,あるいは4年以内の同側脳梗塞の複合エンドポイント。
* ランダム化後30日以内に手技を行った場合は「割付け~手技後30日」,30日以内に手技を行わなかった場合は「割付け~割付け後36日」とした。
コメント N Engl J Med. 2010; 363: 11-23.へのコメント
症候性の頭蓋外頸動脈狭窄症例に対する頸動脈ステント植え込み術(CAS)と頸動脈内膜切除術(CEA)のランダム化比較試験ではどちらの治療法が臨床的有用であるかは明らかとはいえないが,アメリカのガイドラインでは症候性症例にはCEAを推奨している。本研究では,症候性/無症候性の頸動脈狭窄例に対する両治療法のランダム化比較試験を行い,周術期の脳梗塞/心筋梗塞/全死亡あるいは4年以内の同側脳梗塞からなる一次エンドポイントでは両群に差を認めなかった。この結果には性差はなく症状の有無による差も認めていない。周術期において,脳梗塞はCAS例に多いので塞栓防止やステントデザインの改良が必要であり,心筋梗塞はCEA例に多いので薬物療法(抗血小板薬,スタチン,心保護薬など)の改善や術前の心血管病変の評価の精緻化が必要である。1年後の日常生活QOLには脳梗塞の方が心筋梗塞よりも影響が大きいので,この点ではCEAに軍配があがるかもしれない。さらに,脳梗塞/ 全死亡に注目するとCEAの方が有用性は高い。年齢では,70歳を境に若いとCAS,高齢ではCEAの結果が良好であった。高齢者でのCASの心血管イベント率の上昇はSPACE (Lancet 2006; 368: 1239-47. PubMed) やICSS (Lancet 2010; 375: 985-97. PubMed) でも報告されており,動脈の屈曲や石灰化と関連している。実臨床ではこれらの結果を踏まえて個々の症例でのインフォームドコンセントに生かすことは可能であろう。
本研究の症候性症例の脳梗塞/死亡の発生率はこれまでの報告に比し,CAS (6.0% vs 6.8-9.6%)でもCEA (3.2% vs 3.4-6.3%) でも低く,術者の技量や薬物治療の進歩が示唆される。無症候性症例の脳梗塞/死亡の発生率においても本研究とこれまでの報告ではCAS (2.5% vs 2.3-3.1%) は変わりなくCEA (1.4%) はより低い結果であった。limitationとしては,(1) CASではRX Acculink stentのみを使用しており,他のステントとの相違は明らかではないこと,(2) 薬物治療のみの治療群がないこと,があげられる。特に無症候性症例では有害イベントの発生率は低いので薬物療法のみの結果との対比は興味深い。(星田
デザイン PROBE(prospective, randomized, blinded-endpoint),多施設(2か国117施設:アメリカ108施設,カナダ9施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は2.5年(中央値)。
ランダム化は2000年12月~2008年7月。
対象患者 2,502例。ランダム化前180日以内に試験手術施行適応頸動脈が関与する症候性(一過性脳虚血発作,一過性黒内障,または軽度の介助を必要としない脳卒中)患者で,血管造影で≧50%,超音波検査で≧70%の狭窄,あるいは超音波検査で50~69%狭窄でCT血管造影(CTA)またはMR血管造影(MRA)で≧70%の狭窄が認められたもの。2005年に登録基準を無症候性まで拡大し,血管造影で≧60%,超音波検査で≧70%以上の狭窄,あるいは超音波検査で50~69%狭窄で, CTAまたはMRAで≧80%以上の狭窄が認められたものも追加した。
除外基準:エンドポイントの評価に影響を及ぼす重症脳梗塞の既往,慢性心房細動,6か月以内に発生あるいは抗凝固療法を要した発作性心房細動,30日以内のMI,不安定狭心症。
■患者背景:平均年齢(CAS群68.9歳,CEA群69.2歳),男性(63.9%,66.4%),白人(92.9%,93.5%),無症候性病変(47.1%,47.3%),危険因子(高血圧:85.8%,86.1%;糖尿病:30.6%,30.4%;脂質異常症:82.9%,85.8%[p=0.05];現喫煙者:26.4%,26.1%;心血管病の既往:42.4%,45.0%;CABG既往:19.9%,21.5%),血圧(141.6/74.0mmHg,141.2/73.9mmHg),狭窄率≧70%(86.9%,85.1%)。
治療法 CAS群(1,262例):RX Acculinkステントを使用し,可能な限りRX Accunet embolic protection deviceを使用。手技の48時間以上前からaspirin 325mg×2回/日,clopidogrel 75mg×2回/日投与を開始(割付け後48時間以内に手技が予定されている場合は,手技の4時間以上前にaspirin 650mg,clopidogrel 450mgを投与)。手技後はaspirin 325mgを1日1~2回30日間,clopidogrel 75mg/日またはticlopidine 250mg×2回/日を4週間投与。以降の抗血小板療法もCAS群全例に推奨した。
CEA群(1,240例):手技の48時間以上前からaspirin 325mg/日,もしくはticlopidine 250mg×2回/日,clopidogrel 75mg/日,aspirin 81mg/日,あるいはaspirin+dipyridamole徐放剤1日2回投与を1年以上継続。
両群とも認定を受けた術者(年間手術実績>12症例,合併症または死亡発生率<3%[無症候性],<5%[症候性])が施行した。
結果 4年間の推定一次エンドポイント(周術期含む)の発生率にCAS群とCEA群間に有意差は認められなかった(7.2% vs 6.8%;CAS群のハザード比1.11;95%信頼区間0.81~1.51;p=0.51)。4年後の脳梗塞または死亡の発生率はCAS群6.4%,CEA群4.7%(1.50;1.05~2.15;p=0.03)で,症候性の患者ではそれぞれ8.0%,6.4%(1.37;0.90~2.09;p=0.14),無症候性の患者ではそれぞれ4.5%,2.7%(1.86;0.95~3.66;p=0.07)であった。
症候性/無症候性(p=0.84),性別(p=0.34)による治療効果の違いはみられなかった。しかし,年齢と交互作用がみられ(p=0.02),約70歳以下ではCASのほうが一次エンドポイントが抑制され,70歳以上の高齢者ではCEAのほうが良好であった。
周術期の一次エンドポイント発生率にも有意な治療群間差は認められなかった(5.2% vs 4.5%,1.18;0.82~1.68;p=0.38)。一次エンドポイントを構成する各イベントの発生率については,死亡は両群で有意差がなく(0.7% vs 0.3%,p=0.18),脳梗塞はCAS群のほうが高く(4.1% vs 2.3%,p=0.01),MIはCEA群のほうが高かった(1.1% vs 2.3%,p=0.03)。周術期以降の同側脳梗塞発症率は両群ともに低かった(2.0% vs 2.4%;p=0.85)。
★結論★症候性または無症候性の頸動脈狭窄患者において,脳梗塞,MI,または死亡のリスクにCAS群とCEA群の有意な群間差は認められなかった。周術期はCAS群で脳梗塞,CEA群でMIのリスクがそれぞれ高かった。
ClinicalTrials. gov No: NCT00004732
文献
  • [main]
  • Brott TG et al for the CREST investigators: Stenting versus endarterectomy for treatment of carotid-artery stenosis. N Engl J Med. 2010; 363: 11-23. PubMed
    Davis SM and Donnan GA: Carotid-artery stenting in stroke prevention. N Engl J Med. 2010; 363: 80-2. PubMed
  • [substudy]
  • 10年CVリスク-4年後同様,頸動脈ステント群と頸動脈内膜切除術群は同等。
    10年後(追跡期間中央値7.4年)の複合一次エンドポイント(周術期の脳梗塞,心筋梗塞,全死亡,周術期後の同側脳梗塞)は,頸動脈内膜切除術群97例(9.9%;95%信頼区間[CI]7.9~12.2%),頸動脈ステント群108例(11.8%;9.1~14.8)で両群間に有意差は認められなかった(ハザード比1.10;95%CI 0.83~1.44, p=0.51)。
    延長した長期追跡期間の主要エンドポイント(周術期後の同側脳梗塞)にも両群間差はみられなかった(5.6% vs 6.9%:0.99;0.64~1.52, p=0.99)。症候性,非症候性別の検討でも有意差のあるイベントはなかった:N Engl J Med. 2016; 374: 1021-31. PubMed

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収載年月2010.08
更新年月2016.03