循環器トライアルデータベース

RESTART
Registry of Stent Thrombosis for Review and Reevaluation

目的 発生数が少ないためその特徴が明確ではないステント血栓症(ST)について,発生時期ごとのSTの特徴を明らかにするsirolimus溶出ステント(SES)*植込み後の日本全国STレジストリー。
* 本邦での承認は2004年5月
コメント 世界最大の DESステント血栓症(ST)のレジストリーである。STはDES最大のアキレス腱で,特に1年を過ぎてのvery late stent thrombosis(VLST)はBMSでは少なくDES特有の合併症とされているが,低頻度のためそのメカニズムは十分に解明されていない。RESTART trialはsirolimus-eluting stent(SES)植え込み例でのSTを発症時期別に検討した。母集団やコントロール群が規定されていないため STの発生頻度やリスクファクターを探ることはできないが,ST発症例の患者背景・血管造影所見・予後等を比較しその特徴を分析している。
1年以内でのBMSとDESのST発症頻度は同等とされる。従ってそのメカニズムも類似している可能性が高い。RESTARTでも30日以降1年以内のlate stent thrombosis(LST)では再狭窄のハイリスク群として知られる血液透析・糖尿病・石灰化病変で多く,発症時に TIMI II/IIIが多かったことから,DESでも抑制しきれなかった高度の内膜増殖が誘因と推定している。一方,VLSTは,DESの宿命とも言うべき内皮化の遅延・内皮機能障害・ポリマーに対する炎症反応などがその誘因として取りざたされている。
このレジストリーでも,より若年で冠危険因子が少なくCABGや心不全既往が少ないなど,炎症を起こしやすい病変背景が浮かび上がっており,これを支持する結果と考えられる。またアスピリンの中断や外科的処置が時期を問わずSTの誘因になっていること,STは再発率が高いこと,多枝同時STも高率であることなどが明らかにされた。日頃からPCIに携わる我々にとっては,非常に示唆に富む結果である。
すでに旬を過ぎた感のあるSESのデータだが,この先,単一のDESでこの規模の検討は不可能である。DESが進化し,材質・デザイン・薬剤・ポリマーが代われば違った結果になる可能性もある。しかしその礎としての本研究の価値は決して色褪せることはないであろう。(中野中村永井
デザイン 登録観察研究,多施設(日本の543のPCI施設)。
期間 ステント植込み,STの報告は2004年5月~08年6月。
対象 611例。Academic Research Consotium(ARC)定義に拠るdefinite ST*のみを登録。
* ステント周囲に発生したTIMI flow 0,1の閉塞,急性冠症候群(ACS)の兆候,症状を有し血栓所見のあるTIMI flow 2~3;各施設の担当医が判断。
STの発生時期による分類:早期ST(EST:30日以内に発生),遅発性ST(LST:31〜365日),超遅発性ST(VLST:>1年以降)。
■患者背景:EST 322例(うち24時間以内の急性ST:52例,1~30日後の亜急性ST:270例),LST 105例,VLST 184例。
[EST vs LST/VLST]
平均年齢(EST群67.1歳,LST/VLST群64.8歳;p=0.01),≧65歳(61%, 53%;p=0.049),男性(81%, 83%),PCI既往(42%, 52%;p=0.009),推算糸球体濾過量(eGFR)(62.0mL/分/1.73m²,56.9mL/分/1.73m²;p=0.02),eGFR<30mL/分/1.73m²(6.8%, 19%*);非血液透析(2.3%, 6.3%;p=0.01);血液透析(4.4%, 14%*),急性心筋梗塞(30%, 22%;p=0.03),緊急手技(37%, 28%;p=0.03),1枝病変(37%, 41%;p=0.07)。
病変背景:ステント数/1病変(1.51, 1.55),ステント長(33.6mm, 34.1mm),ステント径(2.88mm, 2.93mm),ST血管:左主幹部病変(3.3%, 3.0%),左前下行枝(両群とも56%),左回旋枝(18%, 13%),右冠動脈(22%, 26%),タイプ:de novo(87%, 85%),ST上昇型梗塞の責任病変(19%, 13%;p=0.04),慢性完全閉塞(7.3%, 12%;p=0.03)。
[LST vs VLST]
平均年齢(LST群68.0歳,VLST群62.9歳;p=0.0003),≧65歳(63%, 48%;p=0.02),男性(77%, 86%;p=0.047),BMI(22.3kg/m², 24.2kg/m²*),BMI<25.0kg/m²(80%, 63%;p=0.002),CABG既往(11%, 4.9%;p=0.045),心不全(33%, 13%*),糖尿病(54%, 32%;p=0.0002);IDDM(22%, 5.1%*),高血圧(84%, 69%;p=0.006),喫煙例(27%, 42%;p=0.0007),eGFR(48.7mL/分/1.73m²,61.6mL/分/1.73m²;p=0.002),eGFR<30mL/分/1.73m²(34%, 9.9%*):血液透析(29%, 4.9%*),1枝病変(33%, 45%;p=0.06),スタチン系薬剤使用(43%, 57%;p=0.03)。
病変背景:ステント数/1病変(1.56, 1.55),ステント長(33.3mm, 34.5mm),ステント径(2.88mm, 2.96mm;p=0.06)。
* p=0.0001
調査方法 CAGおよびIVUSサブスタディも実施した。
SESの薬事承認を取得した会社は厚労省からSES植込み後のST発生例の包括的調査を義務付けられている。それらの会社は全PCI施行施設に2週間ごとに連絡し,SES後のST患者の情報を集積している。RESTARTでは,SES後のSTを報告した患者が実際にdefinite STを発生したのか,ST発生患者に関する追加情報を入手した。また参加施設では同社に未報告の症例も積極的に登録した。
結果 登録例の半数以上がESTだった。
SES植込みのため入院時にaspirn(97%),チエノピリジン系薬剤(97%:clopidogrel 8%, ticlopidine 89%)を投与。

・EST例と比べLST/VLST例は,血液透析(4.4% vs 14%;p=0.0001。多変量解析:オッズ比3.42;95%信頼区間1.79~6.52, p=0.0002),非透析末期腎障害(2.3% vs 6.3%;p=0.01。3.77;1.51~9.43, p=0.005),非回旋枝(回旋枝:27% vs 19%, p=0.03。0.59;0.39~0.88, p=0.01),慢性完全閉塞(7.8% vs 14%, p=0.01。2.06;1.19~3.57, p=0.01),PCI既往(42% vs 52%, p=0.009。1.54;1.1~2.16, p=0.01),<65歳(≧65歳:61% vs 53%, p=0.049。0.71;0.5~0.99, p=0.04)が多かった。
・VLST例と比べLST例は,血液透析(29% vs 4.9%, p=0.0001。多変量解析:オッズ比3.85;1.62~9.19, p=0.002),心不全既往(33% vs 13%, p=0.0001。2.21;1.13~4.31, p=0.02),IDDM(22% vs 5.1%, p=0.0001。2.98;1.2~7.4, p=0.02),低BMI(<25kg/m²)(80% vs 63%, p=0.002。2.08;1.1~3.96, p=0.03)が多かった。また,石灰化病変もLST例(42%)がVLST例(22%)よりも有意に多かった(p=0.01)。
・LST例はST発生時のTIMI grade 2/3がEST例,VLST例より有意に多かった(36% vs 13%, p<0.0001, 36% vs 17%, p<0.0001)。
・ST発生から1年後の死亡率は,VLST例(10.5%)でEST例(22.4%, p=0.003),LST例(23.5%, p=0.009)より低かった。
★結論★ST発生のタイミングによって,ベースライン時の特徴,TIMI grade,死亡率が違うことから,SES植込み後のSTの主要病態生理学メカニズムが異なる可能性が示唆される。
文献
  • [main]
  • Kimura T et al for the RESTART investigators: Comparisons of baseline demographics, clinical presentation, and long-term outcome among patients with early, late, and very late stent thrombosis of sirolimus-eluting stents: observations from the registry of stent thrombosis for review and reevaluation (RESTART). Circulation. 2010; 122: 52-61. PubMed

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収載年月2010.09