循環器トライアルデータベース

OMEGA-PCI
OMEGA-3 Fatty Acids after PCI to Modify Responsiveness to Dual Antiplatelet Therapy

目的 オメガ-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)は血小板凝集抑制作用をもつとされているが,一貫した研究結果は示されていない。
PCI施行予定の安定冠動脈疾患患者において,2種類の抗血小板療法(aspirin+clopidogrel)へのオメガ-3 PUFAの追加により,抗血小板作用が増強されるかを検証した。
一次エンドポイントは,30日後のP2Y12 reactivity index(PRI*
 * P2Y12の下流にcyclic AMP(c-AMP)の産生を 調節するadenylate cyclase (AC) の機能を阻害するGiタンパクが存在することから,P2Y12が阻害されればGiによるACの阻害が損なわれc-AMPが上昇するとの基本原理に基づいている。VASPはc-AMP依存性キナーゼによりリン酸化される。c-AMPが増加すればリン酸化されたVASP,すなわちVASP-Pが増えるのでこのVASP-Pを抗体により検出しようという方法である(後藤)。
コメント 細胞内のリン酸化タンパクを検出する技術としてVASP-Pの検出は,科学的には意味が大きい。しかし,元々細胞膜を通過しない抗体を用いてVASP-Pの検出を試みる本法は感度,特異度ともに十分に高いとはいえない。
オメガ-3脂肪酸の効果には興味があるが,脂肪酸は細胞膜の性質にも影響を与えるので,本薬の作用メカニズムの詳細が不明の段階で本研究成果を評価することは困難である。(後藤
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,単施設。
期間 追跡期間は30日。
対象患者 63例。30~80歳,安定冠動脈疾患でステント植込みによるPCI施行連続症例,患者自己申告によるaspirin 14日以上服用例。
除外基準:急性冠症候群,出血,長期抗凝固薬治療例,チエノピリジン系薬剤投与,血小板数<100×109/Lなど。
■患者背景:平均年齢(オメガ-3群62.4歳,プラセボ群63.8歳),男性(72.7%, 80.0%),高血圧(97.0%, 96.7%),高脂血症(97.0%, 96.7%),糖尿病(27.3%, 30.0%),メタボリックシンドローム(72.7%, 73.3%),喫煙歴(45.5%, 53.3%),現喫煙者(15.2%, 20.0%),冠動脈疾患家族歴(69.7%, 60.0%),MI既往(27.3%, 40.0%),多枝疾患既往(81.8%, 60.0%;p=0.06)。
■血管造影・手技背景:左前下行枝(48.5%, 43.3%),左回旋枝(24.2%, 40.0%),右冠動脈(36.4%, 16.7%),参照血管径(3.2mm, 3.1mm)。ベアメタルステント(69.7%, 76.7%),総ステント長(24.7mm, 23.4mm),植込みステント数(両群とも1.3)。
治療法 標準抗血小板療法aspirin 75mg/日+clopidogrel 75mg/日への追加薬として,オメガ-3群(33例:エイコサペンタエン酸460mg+ドコサヘキサエン酸380mgのエチルエステル1g/日),プラセボ群(30例)にランダム化。
手技の12時間前(ベースライン時の採血後)にclopidogrel 600mgをローディング投与し,同時に試験薬の投与を開始。
血小板凝集能は4回(clopidogrelおよび試験薬投与前;投与開始後12時間およびPCI直前;PCI施行の3~5日後;1か月後)評価した。
結果 両群ともに追跡不能例はなく,最終血小板評価がなかったものが両群各1例。aspirin抵抗性は認められなかった。

[一次エンドポイント:30日後のPRI]
オメガ-3群はプラセボ群に比べ22.2%低かった(95%信頼区間2.93~21.87,p=0.020)。
ベースライン時から30日後までのPRIの変化は,オメガ-3群:73.1%→ 43.4%;-40.6%(p<0.0005),プラセボ群:75.6%→ 55.8%;-26.2%(p<0.0005)。
[二次エンドポイント]
・手技直前のPRI:オメガ-3群50.2% vs プラセボ群61.4%(p=0.022)。
・手技後3~5日のPRI:46.7% vs 49.4%(p=0.379)。
・アデノシン二リン酸(ADP)5μmol/Lおよび20μmol/L刺激後の最大血小板凝集能は,オメガ-3群でプラセボ群よりもそれぞれ13.3%(p=0.026),9.8%(p=0.029)低下した。アラキドン酸(AA)刺激による血小板凝集は両群ともに有意に阻害された。
[有害事象]
有害事象はいずれも軽度で,発生率に有意な両群間差はみられず,主要な心血管有害事象も認められなかった。
★結論★aspirinとclopidogrelによる標準治療にオメガ-3 PUFAを追加することで,PCI後のclopidogrelによる抗血小板作用は増強された。
文献
  • [main]
  • Gajos G, et al. Effects of polyunsaturated omega-3 fatty acids on responsiveness to dual antiplatelet therapy in patients undergoing percutaneous coronary intervention: the OMEGA-PCI (OMEGA-3 fatty acids after PCI to modify responsiveness to dual antiplatelet therapy) study. J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 1671-8. PubMed

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収載年月2010.07