循環器トライアルデータベース

BBC ONE
British Bifurcation Coronary Study: Old, New, and Evolving Strategies

目的 分岐部病変に対する薬剤溶出性ステント(TAXUS)の至適治療戦略を検討するため,シンプルなステント術(provisional T-stent[暫定的Tステント])と複雑なステント術(crush[クラッシュステント]あるいはculotte[キュロットステント])とを比較する。
一次エンドポイントは,9か月後の総死亡,心筋梗塞(MI),標的血管不全(本幹,側枝いずれかのPCIあるいはCABGによる再血行再建術,TIMI III未満の不完全な血流)の複合エンドポイント。
コメント 分岐部病変に対する PCIのbest strategyについては結論が出ていない。しかしBMS時代がそうであったように,DES時代のいくつかの無作為試験においても本幹・側枝双方にステントを留置するdouble (complex) stentingが本幹のみへのステント留置を基本とするprovisional (simple) stentingに優るという結果は得られていない。ステントの重なり,薬剤の容量・分布不均一によってDESの有利性が失われるためかもしれないが,BMSと同様“simple is better”の原則は崩れていないようである。
今回のBBC ONEはTaxus® stentを用いた分岐部病変に対する戦略の無作為比較試験である。特筆すべきはprovisional stenting群で複合エンドポイント(総死亡・心筋梗塞[MI]・標的血管不全)が半減していることで,主たる相違点は MI合併率 (3.6% vs 11.2%) であった。また症例数が少ないため有意差は出てないが,ステント血栓症・本幹/側枝両枝の再狭窄・CABGによる再血行再建がdouble stentingで多かった。すなわちdouble stentingでは合併症が多くセカンドチャンスが少ないことになる。
またprovisional stentingの有り様もCACTUS試験(本データベース既載)と比較すると興味深い。直接比較ではなく定義も若干異なるが,奇しくも類似の臨床的複合エンドポイントがdouble stenting 群で15%台と一致している一方で,provisional stenting群では BBC ONE; 8.0% vs CACTUS; 15.0%と明らかな差が出ている。追跡血管造影率に大きな隔たりがある (BBC ONE; 13% vs CACTUS; 86%) が再治療率に大差はなく (5.6% vs 7.5%),MIの合併率が大きく食い違う (3.6% vs 8.6%)。2つのトライアルの戦略上の相違点は,CACTUSではCypher® stentを用いていること,provisional stenting群における T-stent併用率 (3% vs 31%),kissing balloon併用率 (26% vs 90%) などである。Cypher® stent とTaxus® stentのこれまでの比較試験からDESのポテンシャルの違いとは考えにくく,本幹の拡張を重視した,よりシンプルな戦略が要因の一つと推測される。 DES時代における分岐部病変に対するPCIは“simple is better”にとどまらず,“The simpler, the better”と言えそうである。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,多施設(イギリス,アイルランドの21施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は9か月。
ランダム化期間は2004年12月~’07年12月。
対象患者 500例。18歳以上;PCIが必要な分岐部病変を有するもの;参照血管径:本幹≧2.5mm,側枝≧2.25mm。
除外基準:プロテクトされていない左主幹部≧50%の狭窄;急性ST上昇型MIによるprimary 血管形成術;心原性ショック;本幹,側枝いずれかの慢性完全閉塞,標的病変以外にPCIを要するtype C病変あるいは分岐部病変を有する症例;EF≦20%など。
■患者背景:平均年齢64歳,男性77%,BMI 28kg/m²,糖尿病(シンプルなステント術群13%,複雑なステント術群11%),高血圧(57%, 62%),高コレステロール血症(両群とも76%),冠動脈疾患の家族歴(42%, 41%),既往:心筋梗塞(23%, 25%);PCI(17%, 16%)。
状況:待機例(68%, 64%);トロポニン陰性急性冠症候群(ACS)(11%, 13%);陽性ACS(両群とも16%),>70%狭窄:1枝(69%, 73%);2枝(25%, 22%),分岐部病変部位:左前下行枝(81%, 84%);回旋枝(14%, 11%)。
・分岐部病変背景:true 分岐部病変(81%, 84%),Medina分類:type 1.1.1(本幹近位部. 遠位部. 側枝に病変あり:両群とも60%),type 1.1.0(本幹近位部. 遠位部に病変あり. 側枝に病変なし:10%, 8%),type 1.0.1(本幹近位部に病変あり. 遠位部に病変なし. 側枝に病変あり:8%, 10%),type 0.1.1(本幹近位部に病変なし. 遠位部に病変あり. 側枝に病変あり:13%, 14%)。
■手技背景(シンプルなステント術群249例,複雑なステント術群248例):大腿動脈アプローチ(66%, 71%),GP IIb/IIIa受容体拮抗薬(28%, 44%;p<0.001),本幹/側枝:ステント径(3.0mm, 3.2/2.6mm);ステント長(21mm, 22/16mm),総ステント長(24mm, 41mm;p<0.001),kissing-balloon:実施例(31%, 90%);成功例(29%, 76%);,kissing-balloonの成功率(95%, 85%;p=0.01)。
治療法 術者は年間150例以上の経験者とした。
シンプルなステント術群(250例):主幹にステントを植込み,必要に応じてkissing-balloonでの後拡張,Tステント植込み。
複雑なステント術群(250例):主幹,側枝にキュロットステント法あるいはクラッシュステント法でステントを植込み。kissing-balloonを必須とした。
使用ステントはTaxus(paclitaxel溶出)ステント。
手技前治療:aspirinを>3日投与している場合は75mg/日を継続投与,非投与例にはPCIの3時間以上前に300mgを投与し,clopidogrel>3日投与している場合は75mg/日を継続投与し,非投与例にはPCIの3時間以上前に600mgを投与する。手技開始時に,未分画heparin 70IU/kgを静注し手技中は活性化凝固時間≧200秒を維持。GP IIb/IIIa受容体拮抗薬の使用は手技者の判断とした。
手技後治療:aspirin 75mg/日およびclopidogrel 75mg/日を9か月以上投与。
結果 [手技,狭窄率]
キュロットステント法実施例(75例)の89%が最終kissing-balloonによる拡張で手技を終了,クラッシュステント法実施例(169例)は72%でkissing-balloon成功。非成功例の大半は側枝へのワイヤーの挿入不能によるものであった。
本幹成功(TIMI grade 3および残存狭窄率<30%):シンプルなステント術群244例(98%),複雑なステント術群242例(97%),側枝成功(TIMI grade 3):236例(94%),234例(94%),全体(主幹および側枝)の手技成功:235例(94%),234例(94%),主幹へのステント植込み:245例(98%),239例(96%),側枝へのステント植込み:7例(3%),225例(91%),手技時間(57分,78分*),蛍光透視時間(15分,22分*),面積線量(6,140 cGy・ cm², 7,900 cGy・ cm²),使用数:ガイドワイヤー(2.2, 3.1*);バルーン(2.3, 4.0*),ステント(1.2, 2.2*)。
狭窄率:本幹;シンプルなステント術群(手技前87%→手技後3%),複雑なステント術群(85%→ 4%),側枝;63%→ 37%, 68%→ 12%(手技後*)。
* p<0.001
[一次エンドポイント:9か月後の死亡,MI,標的血管不全の複合エンドポイント,各構成イベント]
シンプルなステント術群20例(8.0%) vs 複雑なステント術群38例(15.2%):ハザード比2.02;95%信頼区間1.17~3.47(p=0.009)。
[二次エンドポイント]
死亡:1例(0.4%;手技後に発生) vs 2例(0.8%;周術期,手技後それぞれ1例)。
MI:9例(3.6%;周術期4例,手技後5例) vs 28例(11.2%;17例,11例):3.24;1.53~6.86(p=0.001)。
標的血管不全:14例(5.6%) vs 18例(7.2%):1.32;0.66~2.66(p=0.43):ステント血栓症(1例 vs 5例);主幹のみの再狭窄(6例 vs 4例);側枝のみの再狭窄(6例 vs 3例);主幹および側枝の再狭窄(1例 vs 6例);CABG施行(1例 vs 9例);PCI再施行(13例 vs 8例)。
[その他]
再冠動脈造影:32例(13%) vs 43例(17%):1.44;0.91~2.27(p=0.12)。
入院中の有害心イベント:5例(2.0%)vs 20例(8.0%):リスク比4.00;1.53~10.49(p=0.002),うち死亡(0例 vs 1例),MI(5例 vs 18例),CABG(0例 vs 3例)。
★結論★分岐部病変に対する複雑なステント治療は入院中および9か月後の主要有害心血管イベントリスクが増大し,手技時間が長くX線被ばく量も増加する。シンプルなステント術を優先治療戦略と捉えるべきである。
ClinicalTrials.gov No: NCT00351260
文献
  • [main]
  • Hildick-Smith D et al: Randomized trial of simple versus complex drug-eluting stenting for bifurcation lesions: the British Bifurcation Coronary Study: old, new, and evolving strategies. Circulation. 2010; 121: 1235-43. PubMed

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収載年月2010.07