循環器トライアルデータベース

ASTRONOMER
Aortic Stenosis Progression Observation: Measuring Effects of Rosuvastatin

目的 軽度~中等度の無症候性大動脈弁狭窄症(AS)患者において,HMG-CoA reductase阻害薬rosuvastatinによる脂質低下治療によるAS進展抑制効果を検討する。

一次エンドポイントはASの進展(最大圧較差)。
コメント 家族性高コレステロール血症(FH)の合併症として大動脈弁狭窄症(AS)があることはよく知られていることであり,高コレステロール血症がその危険因子と考えられている。したがって,コレステロールを十分に低下させることによりASの進展抑制ができるという仮説は理解される。しかしながら,FHの合併症であるASはかなり動脈硬化の進展した段階で起こるものであり,高度な動脈硬化の結果と考えることができる。本研究結果もその点を確認したということができよう。シンバスタチンとエゼチミブを併用したSEASという試験と全く同様の結果である。この研究から言えることは,いずれにしてもコレステロールを低下させる治療は,できるだけ早期に行うべきものであるという教訓と,これだけ強力にコレステロールを低下させても大きな副作用が認められないということだけであろう。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(カナダの23施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は3.5年(中央値)。
登録期間は2002年12月~’05年12月。
対象患者 269例。18~82歳;無症候性の軽度~中等度AS患者(最大大動脈弁流速2.5~4.0m/s)。
除外基準:カナダのガイドラインの定義でスタチン系薬剤の適応例(冠動脈疾患,脳血管疾患,末梢血管疾患,糖尿病など)。
投与量40mg/日による副作用のリスク上昇の懸念から2005年3月よりアジア出身者は除外。これ以前のアジア人登録は女性1例のみで有害イベント非発生のため試験を継続した。
■患者背景:平均年齢(rosuvastatin群58.0歳,プラセボ群57.9歳),男性(60.5%, 63.0%),白人(97.8%, 98.5%),BMI(27.7kg/m², 28.5kg/m²),血圧(128.8/76.5mmHg, 128.4/75.9mmHg),喫煙(現在の喫煙率:11.2%, 10.4%;喫煙歴:40.3%, 34.8%;非喫煙:48.5%, 54.8%)。
■心エコー背景:最大大動脈弁流速(3.16m/s, 3.19m/s),平均圧較差(22.5mmHg, 23.1mmHg),大動脈弁口面積(1.49cm², 1.56cm²),大動脈弁の形態:二尖弁(53.7%, 45.2%);三尖弁(29.1%, 34.1%);不明(17.2%, 20.7%)。中等度~重度の大動脈弁石灰化は65.1%。
治療法 ランダム化前にドプラー心エコーを実施。
rosuvastatin群(134例):40mg/日,プラセボ群(135例)。
結果 投与中止はrosuvastatin群77例,プラセボ群69例。
最も多かった中止理由は,いずれも有害イベント(それぞれ25例,26例)。

[脂質値,CRPの変化]
LDL-C:rosuvastatin群(ベースライン時130mg/dL→試験終了時56.1mg/dL;54.5%低下),プラセボ群(120.7mg/dL→変化なし):p<0.0001。
HDL-C:61.5mg/dL→ 62.3mg/dL;1.8%上昇,60.0mg/dL→ 58.8mg/dL;1.9%低下:p=0.006。
CRP:試験開始時は1.78mg/L(中央値)で,rosuvastatin群は0.33mg/L低下,プラセボ群は0.095mg/L上昇した(p=0.002)。
[一次エンドポイント:最大圧較差]
rosuvastatin群:40.8mmHg→ 57.8mmHg,プラセボ群:41.6mmHg→ 54.8mmHgで,年間増加率はrosuvastatin群6.3mmHg,プラセボ群6.1mmHgと両群間に有意差は認められなかった(p=0.83)。
[心血管イベント,有害イベント]
心血管全イベント(35件[29人],44件[35人]):大動脈弁置換術(28件[28人],27件[27人]);CABG(5件[5人],5件[5人]);心臓死(2件[2人],5件[5人]);心筋梗塞(0件,3件[3人]);脳卒中(0件,1件);狭心症(0件,1件)。
重篤な有害イベントは95件(rosuvastatin群41例,プラセボ群48例),横紋筋融解の発生はなく,がん発症は5例(2例,3例)。
[サブグループ]
加齢,中等度~重度の大動脈弁石灰化,ASの重症度の上昇,三尖弁はASの進展と有意に関連したが,年齢,ASの重症度,三尖弁で調整するとASの進展との関連はなくなり,大動脈弁の石灰化のみが有意に関連した。
rosuvastatinのAS進展抑制はどのサブグループでもみられなかった。
★結論★軽度~中等度の大動脈弁狭窄症患者において,rosuvastatin 40mg/日投与による大動脈弁狭窄症の進展抑制効果は認められなかった。
Clinical trial registration No: ISRCTN 32424163
文献
  • [main]
  • Chan KL et al for the ASTRONOMER investigators: Effect of lipid lowering with rosuvastatin on progression of aortic stenosis: results of the aortic stenosis progression observation: measuring effects of rosuvastatin (ASTRONOMER) trial. Circulation. 2010; 121: 306-14. PubMed
  • [substudy]
  • メタボリックシンドロームは,とくに若年(57歳未満)患者で大動脈弁狭窄症進展の強力な独立した予測因子。
    腹囲と心エコーのデータが得られた243例において,メタボリックシンドローム(MetS)と大動脈弁狭窄症(AS)進展の関係と,その関係に対する年齢,スタチンの影響を前向きに検討した結果(事前に計画されたサブ研究;平均追跡期間3.4年):MetS(改変NCEP-ATPIII 基準による)を有する患者(27%)はMetSでない患者よりもASの進展が速かった(MetSあり:+0.25 vs MetSなし:+0.19m/s/年,p=0.03)。多変量解析でASの進展の速さと関連したのは,ベースライン時の高齢(p=0.01),重度の大動脈弁石灰化(p=0.01),最大大動脈弁流速の速さ(p=0.007),MetS(p=0.005)であった。MetSがAS進展に及ぼす影響は,若年者(<57歳[コホートの年齢中央値])(+0.24 vs+0.13m/s/年,p=0.008)とスタチン投与例(+0.27 vs +0.19m/s/年,p=0.045)で顕著であった。多変量解析ではMetSと年齢の有意な交互作用が認められたが(p=0.01),MetSとスタチンの交互作用は有意ではなかった:J Am Coll Cardiol. 2012; 60: 216-23. PubMed

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収載年月2010.07
更新年月2012.09