循環器トライアルデータベース

BBS
Best Bypass Surgery Trial

目的 高リスク患者におけるオフポンプ冠動脈バイパス手術(CABG)の有効性を明確にするため,30日後の転帰をオンポンプCABGと比較する。
一次エンドポイントは有害心血管イベント(全死亡,急性心筋梗塞[AMI],心停止後の蘇生,低心拍出量症候群・心原性ショック,脳卒中,冠インターベンション再施行の複合エンドポイント)。
コメント 一般的に人工心肺/ cardioplegic arrestを要しないオフポンプCABGは低侵襲性であるが,それを担保するためのより高い技術が必要であるのに対し,オンポンプCABGではグラフトの確実性に一日の長があると言われている。無作為比較試験のメタ解析 (Eur Heart J 2008; 29; 2601-2616) では,両者の間に死亡・心筋梗塞・脳卒中・再血行再建での差異は認められていないが,一方,大規模な後ろ向きコホート研究では,オフポンプ群での手術死亡率・脳梗塞・呼吸器/腎合併症などの低減が指摘されている。これらは症例のselection biasの結果と考えれば理解しやすい。すなわち無作為比較試験では高リスクの症例を除外する傾向にあり,後ろ向きコホート研究では術式を選択する時点で医師側の思惑が混入する。
BBS studyはオフポンプCABGとオンポンプCABGとの単施設での無作為比較試験である。これまでの試験が避けてきた重症(EuroACORE≧5)三枝疾患のみを対象としているのが特徴で,双方の術式に精通した術者でも30日死亡率;4.4%がそれを物語る。症例数が少ないため有意差は出ていないが,死亡・心筋梗塞合併はオフポンプで多い傾向にあり,側壁へのグラフト数はオンポンプで有意に多かった。
個人的には二つの術式を“無作為”に比較することには懐疑的である。両者は対立的なものではなく相補的なはずである。またこれまでの幾多の検討で,両者の長所・欠点は十分に理解されている。従って,患者のさまざまなリスクや血行再建部位を考慮して,短期リスクの回避・長期予後/開存性達成のための最適は,術式の選択に役立つ“層別化”こそが目指されるべきだと考える。(中野中村永井
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded-endpoint),単施設(デンマーク),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は30日。
登録期間は2002年4月~’06年3月。
対象患者 341例。CABG単独初回施行例;55歳以上;EuroSCORE≧5;側壁への枝がグラフト可能な3枝病変;待機的・準緊急手術。
除外基準:心臓手術の既往;EF<30%,インフォームド・コンセント非獲得,術前の状態が不安定(手術当日の強心薬の持続注入等)。
■患者背景:平均年齢(オフポンプ群76.1歳,オンポンプ群75.6歳),女性(35%, 36%),高血圧(48%, 53%),糖尿病(両群とも18%),90日以内の心筋梗塞(56%, 58%),大動脈疾患(31%, 33%),慢性閉塞性肺疾患(11%, 8%),喫煙(21%, 17%),脳卒中(12%, 17%),EF>50%(両群とも51%), EuroSCORE(両群とも6.9),平均STS(Society of Thoracic Surgeons)リスクスコア(3.1, 3.0),CCS class 3~4(28%, 26%),NYHA III~IV度(両群とも29%)。
治療法 オフポンプ群(177例):OctopusおよびStarfish heart stabilizer(Medtronic社)を使用,heparin 100 IU/kgをACT>200秒を達成するよう静注,Bair Hugger system(Augustine Medical社)により正常体温を維持。
オンポンプ群(164例):正常体温下に大動脈遮断および局所心筋冷却法での心停止を行った。heparin 300 IU/kg(ACT>480秒)。
性別,年齢(55~65歳・66歳以上),糖尿病,EuroSCORE(5~7・8~10・11~13・14~16)により層別化。退院後,Danish National Registryデータベースを通じてエンドポイントを追跡した。
結果 クロスオーバーはオフポンプ群8例(4.5%) vs オンポンプ群6例(3.7%)(p=0.79)。
1患者あたりの平均グラフト数は両群間に有意差はなかった(3.22 vs 3.34:平均差-0.13;95%信頼区間-0.28~0.03, p=0.11)が,左室側壁のグラフト数のみオフポンプ群で有意に少なかった(0.97 vs 1.14:-0.16;-0.29~-0.04, p=0.01)。

一次エンドポイント(30日後の全死亡,AMI,心停止後の蘇生,低心拍出量症候群・心原性ショック,脳卒中,冠インターベンション再施行の複合エンドポイント)は,オフポンプ群27例(15%) vs オンポンプ群30例(18%):相対リスク0.83;0.52~1.34(p=0.47)で両群間に有意差は認められなかった。
複合一次エンドポイントを構成する各エンドポイントについても両群間に有意差がなく(全死亡3.4% vs 6.7%[p=0.21];AMI 5.1% vs 9.2%[p=0.20];心停止後の蘇生1.1% vs 1.8%[p=0.67];低心拍出量症候群4.0% vs 6.1%[p=0.46];脳卒中4.0% vs 3.7%[p=1.00];冠インターベンション再施行0.6% vs 1.8%[p=0.36]),EuroSCORE>5の患者に限定した場合も同様であった。術後30日の合併症も群間で有意差がなく,新規の心房細動発生は75例(43%)vs 71例(44%)であった(p=0.91)。抜管までの時間(中央値:8時間 vs 9時間),長期の人工呼吸器使用(4%, 6.7%),入院期間(中央値:両群とも7日),集中治療室滞在>1日(11%, 15%)も両群間に有意差がなかった。
★結論★高リスク患者でのオフポンプCABG術,オンポンプCABG術のいずれも30日の死亡率およびその他の合併症の発生率は低い。
ClinicalTrials.gov No: NCT00120991
文献
  • [main]
  • Møller CH et al: No major differences in 30-day outcomes in high-risk patients randomized to off-pump versus on-pump coronary bypass surgery: the best bypass surgery trial. Circulation. 2010; 121: 498-504. PubMed

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収載年月2010.07