循環器トライアルデータベース

SORT OUT III
Danish Organisation for Randomised Trials with Clinical Outcome III

目的 通常のルーチン治療を受けている冠動脈疾患(CAD)患者において,zotarolimus溶出ステント(ZES)とsirolimus溶出ステント(SES)の有効性と安全性を比較するall-comer試験。
一次エンドポイントは9か月後の主要有害イベント(MACE:心臓死,心筋梗塞[MI],標的血管血行再建術[TVR]の複合)。
コメント BMS後の再血行再建術の必要性はDESの出現により半減以下になったが,安全性の面では晩期血栓症のリスクに対して不安が残る。ステント表面に新生内膜が十分に生成されないことや炎症・リモデリングを伴うステントの不安定な装着により,ステントストラットが露出したままで血栓症が生じやすくなることが危惧される。このため,DESでは安全性を担保するため長期の抗血小板療法が推奨されている。ZESは新生内膜でステントストラットを一様に覆い,ステントの不完全な装着が生じにくい。さらに,ZESをコーティングしているポリマーは赤血球外膜のリン脂質を合成して作っているので,より安全でより炎症を生じにくい。本研究は第2世代DESのZESがSESよりもreal-worldでより安全で有用かを明らかにするために企画された。
結果としては,9か月後においてZESはSESよりも主要有害イベントが有意に多かった。18か月後においてもSESの優位性は保たれていた。SESの有用性は,標的病変血行再建術,心筋梗塞,ステント血栓症の頻度の低下に表れていた。本研究では再狭窄を生じやすいハイリスク症例が多く,ZESでは内膜増殖抑制作用が弱く再狭窄率の増加と関連し,複雑病変に対してはSESよりも有用性は低下するかもしれない。
ZESでは植込み後1週間以内に薬剤溶出は終了するがSESでは3か月間溶出する。ZESの早期の薬剤溶出は血管壁の治癒過程を抑制し,血液と血管壁プラークとの接触が多くなり,9か月間のステント血栓のリスクが高くなる。薬剤溶出動態を変化させたEndeavor Resoluteステントの臨床的有用性に期待したい。1年以上の晩期ステント血栓に対する両DESの相違に関しては8,800例を3年間追跡する PROTECT studyの結果を待つ必要がある。
2009年ACCで韓国のグループが冠動脈造影(CAG) follow upをルーチンに行いSESとZESを比較し,12か月後には主要有害イベントは同等と報告している。複雑病変を除外したENDEAVOR IVではZESとPESを比較し両者の同等性を示している。
対象病変の複雑性だけでなくエンドポイントの評価方法はイベント発生率に大きく影響する。本研究はデンマークの5施設で行われているが,follow upとしてCAGをルーチン化せず,PCIを受けた病院での定期的な外来受診や電話での臨床状態の確認をするのではなく,それぞれの地域の病院で一般の患者と同様に1~3か月ごとにfollowされている。デンマークでは個人個人に生誕時に番号がついており,デンマーク国内ではどこで診察・加療しても診療データを後日に中央のデータベースから評価することが可能である。この方法は臨床研究のコスト削減に貢献するがイベントを過小評価するリスクがある。どのfollow up評価方法が最適かはエビデンスがないのが現状である。(星田
デザイン 無作為割付け,単盲検,多施設(デンマークのPCI手技を多く施行している5施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は18か月。
試験期間は2006年1月~2007年8月。
対象患者 2,332例・3,230病変。18歳以上;慢性安定CADあるいは急性冠症候群;薬剤溶出性ステント(DES)植込みが必要な標的病変数≧1。治療病変数,治療血管数,病変長の上限は設けず。
除外基準:インフォームドコンセントを獲得できないもの;aspirin, clopidogrel, ticlopidine, sirolimus, zotarolimusのアレルギーなど。
■患者背景:平均年齢64.3歳,男性(ZES群73%, SES群74%),CAD家族歴(42%, 44%),喫煙率(30%, 29%),糖尿病(15%, 14%),BMI(両群とも27.3kg/m²),高血圧(52%, 49%),高コレステロール血症(67%, 65%),既往:MI(25%, 26%);PCI(20%, 17%);CABG(7%, 6%),PCI適応:ST上昇型MI(6%, 9%);非ST上昇型MIあるいは不安定狭心症(両群とも38%);安定狭心症(53%, 51%),1患者当たりの標的病変数:1(70%, 71%);2(20%, 22%);3(8%, 5%);>3(両群とも2%),1患者当たりの治療血管数(両群とも1.2)。
■手技背景:1患者当たりのステント数(両群とも1.7),標的病変位置:左前下行枝(42%, 40%);左回旋枝(24%, 27%);右冠動脈(31%, 30%),病変タイプ:Type A(20%, 17%);B(44%, 47%);C(35%, 34%),病変長(13.0mm, 14.0mm),ステント長(両群とも18.0mm),ステント径(両群とも3.2mm),stent delivery failure(2%, 3%),手技時間(両群とも26分),GP IIb/IIIa受容体拮抗薬使用(188/1,162例[16%], 221/1,170例[19%])。
治療法 ZES群(1,162例・1,619病変):zotarolimus溶出ステント。
SES群(1,170例・1,611病変):sirolimus溶出ステント。
バルーンで前拡張しないdirect stentingも可。ベアメタルステントの使用は不可。試験ステントが植込めない場合はその他のステント,あるいはステントは植込まないバルーン血管形成術とした。TVR時には試験ステント使用を奨励した。
手技前薬物治療:aspirin 75mg以上,clopidogrelを300~600mgローディング投与,未分画heparin 5000IUあるいは70~100IU/kgを投与。GP IIb/IIIa受容体拮抗薬投与は手技者の判断とした。
抗血小板薬の併用はaspirin 75mg/日を無期限+clopidogrel 75mg/日を1年投与。
結果 ランダム化されたステント植込み率はZES群1,589病変(98%),SES群1,569病変(97%)。18か月の追跡終了例は2,200例(94%)。

[一次エンドポイント:9か月後の主要有害イベント]
ZES群:72例(6%) vs SES群:34例(3%):ハザード比2.15;95%信頼区間1.43~3.23(p=0.0002)。
[その他]
・30日後の結果
全死亡:4例(<1%) vs 4例(<1%):1.01;0.25~4.02(p=0.99)。
心臓死:4例(<1%) vs 4例(<1%):1.01;0.25~4.02(p=0.99)。
MI:9例(1%) vs 2例(<1%):4.53;0.98~21.0(p=0.053)。
TVR:10例(1%) vs 8例(1%):1.26;0.50~3.19(p=0.63)。
標的病変血行再建術(TLR):8例(1%) vs 5例(<1%):1.61;0.53~4.92(p=0.40)。
・9か月後の結果
全死亡:25例(2%) vs 18例(2%):1.40;0.76~2.56(p=0.28)。
心臓死:12例(1%) vs 6例(1%):2.01;0.76~5.36(p=0.16)。
MI:18例(2%) vs 4例(<1%):4.55;1.54~13.4(p=0.006)。
TVR:62例(5%) vs 28例(2%):2.25;1.44~3.51(p=0.0004)。
TLR:50例(4%) vs 12例(1%):4.25;2.26~7.97(p<0.0001)。
・18か月後の結果
MACE:113例(10%) vs 53例(5%):2.19;1.58~3.04(p<0.0001)。
全死亡:51例(4%) vs 32例(3%):1.61;1.03~2.50(p=0.035)。
心臓死:18例(2%) vs 12例(1%):1.51;0.73~3.14(p=0.27)。
MI:24例(2%) vs 11例(1%):2.22;1.09~4.53(p=0.029)。
TVR:92例(8%) vs 39例(3%):2.42;1.67~3.52(p<0.0001)。
TLR:71例(6%) vs 20例(2%):3.66;2.23~6.01(p<0.0001)。
・ステント血栓症
30日後:8例(1%) vs 3例(<1%):2.66;0.70~10.0(p=0.15)。
9か月後:13例(1%) vs 4例(<1%):3.28;1.07~10.1(p=0.048)。
12か月後:13例(1%) vs 4例(<1%):3.28;1.07~10.1(p=0.048)。
18か月後:13例(1%) vs 6例(1%):2.19;0.83~5.77(p=0.13)。
・ステント内再狭窄
9か月後:37例(3%) vs 6例(1%):6.28;2.65~14.9(p<0.0001)。
18か月後:58例(5%) vs 12例(1%):4.98;2.68~9.28(p<0.0001)。
★結論★日常臨床現場において,sirolimus溶出ステントはzotarolimus溶出ステントより優る。
ClinicalTrials.gov No: NCT00660478
文献
  • [main]
  • Rasmussen K et al: Efficacy and safety of zotarolimus-eluting and sirolimus-eluting coronary stents in routine clinical care (SORT OUTIII) : a randomised controlled superiority trial. Lancet. 2010; 375: 1060-2. PubMed
    Mark W I Webster and John A Ormiston: Sorting out drug-eluting stents. Lancet. 2010; 375: 1090-9. PubMed

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収載年月2010.03