循環器トライアルデータベース

RACE II
Rate Control Efficacy in Permanent Atrial Fibrillation: a Comparison between Lenient versus Strict Rate Control II

目的 永続性心房細動患者(AF)における心血管合併症および心血管死の抑制に対するゆるやかな(非厳格)心拍数コントロールの厳格コントロールに対する非劣性試験。

一次エンドポイントは心血管死,心不全による入院,脳卒中,全身性塞栓症,大出血,生命を脅かす不整脈の複合エンドポイント。
コメント ガイドラインではAfのレートコントロールにおいて目標心拍数を安静時は60~80/分,軽労作時は110/分以下としている。このような厳格なレートコントロールはしばしば達成困難である。この研究では,ゆるやかなレートコントロール(安静時心拍数<110/分)がガイドラインの厳格なコントロールと比べて,死亡率,心不全,自覚症状において差がないことが示された。この事実が,10年以上の経過でもあてはまるか否か? 比較的若い男性が多いこともこの結果に影響しているかもしれない。いずれにしても,心電図指標を治療目標にするのではなく,自覚症状や健康度といった患者の状態を基に治療をすすめることの重要性が示された。(井上
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(オランダの33施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は2~3年。
登録期間は2005年1月~2007年6月。
対象患者 614例。80歳以下;罹病期間が12か月以内の永続性AF;平均安静時心拍数>80拍/分;抗凝固療法例(血栓塞栓症の危険因子を有していない場合はaspirin投与例)。
■患者背景:平均年齢(非厳格群69歳,厳格群67歳),男性(65.9%, 65.3%),AF罹病期間:全AF(中央値:16か月,20か月);永続性AF(中央値:3か月,2か月),電気的除細動歴(71.1%, 72.6%),高血圧(64.3%, 57.8%),冠動脈疾患(21.5%, 14.5%),心臓弁膜症(20.6%, 19.8%),COPD(11.6%, 14.2%),糖尿病(11.6%, 10.6%),CHADS2;スコア:0~1(57.2%, 64.4%);2(30.2%, 21.5%);3~6(12.5%, 14.2%),症候性(55.6%, 57.8%):動悸(19.9%, 27.4%);呼吸困難(33.8%, 36.0%);倦怠感(27.7%, 32.0%),BMI(両群とも29kg/m²),血圧(137/85mmHg, 135/82mmHg),心拍数(両群とも96拍/分),NYHA心機能分類:I度(66.2%, 64.0%);II度(28.6%, 31.7%)。
治療状況:心拍数コントロール薬;非投与(11.6%, 8.9%),β遮断薬のみ(45.0%, 44.9%),verapamilあるいはdiltiazem(5.8%, 6.3%),digoxinのみ(6.4%, 7.9%),β遮断薬+verapamilあるいはdiltiazem(2.3%, 3.6%),β遮断薬+digoxin(17.0%, 16.2%),digoxin+verapamilあるいはdiltiazem(4.5%, 4.6%),sotalol(5.8%, 4.3%),amiodarone(1.0%, 1.7%)。
その他の薬剤:ARBまたはACE阻害薬(53.4%, 46.2%),利尿薬(43.1%, 37.3%),スタチン系薬剤(33.1%, 24.4%),ビタミンK拮抗抗凝固薬(99.0%, 98.3%)。
治療法 非厳格コントロール群(311例):安静時心拍数<110拍/分を目標とした。
厳格コントロール群(303例):安静時心拍数<80拍/分を目標とした。
用量調節期間中は,目標心拍数を達成するまで陰性変伝導作用薬(β遮断薬,非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬[verapamil, diltiazem], digoxin)を単剤または併用で用量を調節しながら投与。
目標心拍数を達成できない,あるいは症状が残る場合は,心拍数コントロール薬,用量のさらなる調節,電気的除細動,アブレーションを主任医の判断で可とした。
結果 用量調節期間終了時の安静時心拍数は非厳格コントロール群93拍/分vs 厳格コントロール群76拍/分(p<0.001),追跡終了時はそれぞれ85拍/分 vs 76拍/分(p<0.001)。
心拍コントロールに用いた薬剤は,β遮断薬(42.4% vs 20.1%*),Ca拮抗薬(5.8% vs 5.3%),digoxin(6.8% vs 1.7%;p=0.002),β遮断薬+Ca拮抗薬(3.9% vs 12.5%*),β遮断薬+digoxin(19.3% vs 37.3%*),digoxin+Ca拮抗薬(5.8%, 9.6%),β遮断薬+digoxin+Ca拮抗薬(1.0%, 8.9%*)。* p<0.001

[一次エンドポイント:]
3年後の一次エンドポイント累積発生率は非厳格コントロール群12.9%,厳格コントロール群14.9%で(絶対差-2.0%;90%信頼区間-7.6~3.5, p<0.001,ハザード比0.84;0.58~1.21, p=0.001),一次エンドポイント予防において厳格コントロール群に対する非厳格コントロール群の非劣性が認められた。
一次エンドポイントのうちわけは,心血管死(2.9% vs 3.9%:ハザード比0.79;0.38~1.65),心不全(3.8% vs 4.1%:0.97;0.48~1.96),脳卒中(1.6% vs 3.9%:0.35;0.13~0.92),出血(5.3% vs 4.5%:1.12;0.60~2.08)。
[その他]
非厳格コントロール群は厳格コントロール群よりも用量調節期間終了時の目標心拍達成率が高く(97.7% vs 67.0%, p<0.001),総受診回数が少なかった(75回 vs 684回,p<0.001)。
[有害事象]
入院頻度および有害事象は両群で同等であった:失神(1.0% vs 1.0%),薬剤による生命を脅かす有害事象(1.1% vs 0.7%),ペースメーカー植込み(0.8% vs 1.4%)。
★結論★永続性心房細動患者において,心拍数の非厳格コントロールの有効性は厳格コントロールと同等で,心拍数の目標達成はより容易であった。
ClinicalTrials. gov No: NCT00392613
文献
  • [main]
  • Van Gelder IC et al for the RACE II Investigators: Lenient versus Strict Rate Control in Patientswith Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2010; 362: 1363-73. PubMed
    Dorian P: Rate Control in Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2010; 15: 1439-41. PubMed
  • [substudy]
  • レートコントロールとアウトカム-厳格コントロール達成によるアウトカムの改善はみられない。
    用量調節期間(目標脈拍数達成,あるいは達成不可能/不要となるまでの期間)終了から追跡終了までの2.9年(中央値)の,厳格なレートコントロール達成例(203例・平均年齢68歳),非達成例(98例・66歳),非厳格コントロール例(307例・68歳)のアウトカムの違いを検証するpost hoc解析結果:用量調節期間終了時の心拍数は,達成例72拍/分,非達成例86拍/分,非厳格例93拍/分(p<0.001)。追跡期間終了まで心拍数の差は有意であった。非厳格コントロール群ではレートコントロール薬非投与例,β遮断薬単独投与例が多く,併用投与例はほとんどなく,β遮断薬およびverapamilの用量が有意に少なかった。
    一次エンドポイントは達成例27例(Kaplan-Meier推定14.2%),非達成例14例(15%),非厳格例35例(12.1%)で群間差はなく,複合エンドポイント構成イベント,QOLにも群間差はみられなかった:J Am Coll Cardiol. 2013; 61: 741-8. PubMed
  • 永続性心房細動患者において厳格なレートコントロールによるQOLの改善は認められず。
    QOL評価を実施した437例(平均68歳,男性66%)において,レートコントロールのQOLへの影響を評価した結果(追跡期間3年[中央値]):QOL評価はベースライン時,1年後,試験終了時にMedical Outcomes Study 36-item Short-Form Health Survey(SF-36)質問票,University of Toronto AF Severity Scale(AF severity scale),Multidimensional Fatigue Inventory-20(MFI-20)を用いて実施。試験終了時に心房細動症状が認められたのは48%(呼吸困難32%,疲労25%,動悸11%)で,治療群間差はみられなかった。
    ベースラインスコアはどのQOL評価スケールも治療群間で同等。SF-36については一部のサブスケールで試験終了時にベースラインからの有意な変化が認められたが,治療群間差はなかった。AF severityとMFI-20では,ベースラインからの変化も試験終了時のスコアも両群間に差がなかった。また心拍数とQOLスコアとの有意な相関関係は認められなかった。
    QOLの改善と関連した因子は,ベースライン時の症状,若年齢,基礎疾患の重症度が軽度(高EFなど),一方,QOL悪化と関連したのは,女性と試験中の心血管エンドポイント:J Am Coll Cardiol. 2011; 58: 1795-803. PubMed
  • 永続性心房細動患者において,ゆるやかなレートコントロールは心リモデリングに影響を及ぼさず。リモデリングと独立して関連したのは,女性。
    心エコーを実施した517例(ゆるやかなレートコントロール群261例,厳格コントロール群256例)において,ゆるやかなレートコントロールが有害な心リモデリングに及ぼす影響を検討した結果(追跡期間3年[中央値]):ベースラインから追跡時までの有意な心リモデリングの進展は両群ともに認められず,心エコーパラメータの変化に有意な群間差もみられなかった。per-protocol解析(安静時心拍数80~110拍/分vs <80拍/分)でもリモデリングの差はみられなかった。
    ゆるやかなレートコントロールは心エコーパラメータ変化と有意に関連せず(調整後の左房径に対する影響:1.6mm;95%信頼区間-0.2~3.4[p=0.09],左室拡張末期径:1.0mm;-0.8~2.8[p=0.27])。心リモデリングと独立した関連が認められたのは女性であった(左房径:2.4mm;0.5~4.3[p=0.02],左室拡張末期径:6.5mm;4.6~8.4[p<0.0001]):J Am Coll Cardiol. 2011; 58: 942-9. PubMed

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収載年月2010.03
更新年月2013.04