循環器トライアルデータベース

BATTLESCARRED
NT-proBNP-Assisted Treatment to Lessen Serial Cardiac Readmissions and Death Trial

目的 症候性の慢性心不全(CHF)患者においてN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)-guided therapyの臨床転帰に対する効果を,集中的な臨床管理(clinically-guided therapy:CG),通常治療(UC)と比較する。
一次エンドポイントは全死亡,死亡+心不全による入院の複合エンドポイント。
コメント BNPガイドの心不全診療は,わが国では普及してきているが,海外ではその有用性について否定的な意見も多い。本研究は,BNPガイドはないが臨床的な強化診療(CG) 群および家庭医による通常診療(UC) 群に分けて3群比較した点と比較的長期(3年)の追跡をしている点で特徴がある。75歳以下でBNP ガイド診療の有用性が示されたが, CG群は3年後にはUC群と差がなくなっている。おそらく,BNPガイド下では,BNPの上昇に応じて利尿薬の増量や生活管理の徹底など心不全の増悪を未然に阻止するきめ細かい診療が,好成績をもたらしたものと考えられる。TIME-CHF試験でも,BNPガイドの有用性がそのサブ解析で75歳以下に認められており,本試験結果と符合する。高齢者における薬剤反応性の低下,腎機能低下によるBNP値上昇のバラツキ,拡張性心不全の頻度の増加などがその要因として推察されよう。最近のBNPガイドに関する臨床試験のメタ解析でもBNPガイドの有用性が示されており,75歳以下での有用性はほぼ確立したものと考えられる。(
デザイン 無作為割付け,二重盲検,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は3年。
スクリーニング期間は2001年7月1日~’06年8月31日。
対象患者 364例。>18歳。Framinghamの診断基準およびEuropean Society of Cardiologyの診断ガイドラインによる症候性CHF,心不全悪化による入院,ランダム化直前のNT-proBNP>50pmol/L。
除外基準:活動性心筋炎・心膜炎,心血管疾患以外の原因により生存の見込み<24か月,重度の肝・肺疾患,重度の腎障害,重度の弁膜疾患,心移植の候補。
■患者背景:年齢(中央値:NT-proBNP群76歳,CG群76歳,UC群75歳),男性(63%, 67%, 62%),糖尿病(23%, 20%, 22%),高血圧(55%, 42%, 62%),冠動脈疾患(70%, 72%, 73%),心筋梗塞の既往(42%, 47%, 44%),拡張型心筋症(19%, 23%, 27%),脳卒中(23%, 20%, 21%),COPD(23%, 20%, 16%),EF(40%, 39%, 37%),NYHA心機能分類II度(68%, 66%, 67%),心不全による入院1回以上(31%, 32%, 29%),血漿NT-proBNP(238 pmol/L, 236 pmol/L, 238 pmol/L),治療状況:furosemide(94%, 98%, 91%),ACE阻害薬/AII受容体拮抗薬(84%, 84%, 77%),β遮断薬(65%, 70%, 71%),spironolactone(12%, 12%, 17%)。
治療法 入院期間中の通常の治療を経て退院後2週以内にランダム化。
NT-proBNP群(121例):NT-proBNP>150pmol/L・心不全スコア2.0以上で薬物治療およびフォローアップの調整,CG群(121例):enalapril 10mg×2回/日,carvedilol 25mg×2回/日(標準的な2週ごとに漸増投与),徐放性metoprolol 190mg/日を目標とし心不全スコア2.0以上で増量,UC群(122例):3か月ごとの薬物治療・再入院・死亡に関する書類作成以外はプライマリーケアにおいて管理。
年齢(75歳以下,>75歳)により層別化。NT-proBNP群およびCG群では3か月ごとの来院により心不全スコア,NT-proBNPおよび生化学検査,NYHA心機能分類,血圧,心拍数,6分間歩行距離(6,12か月後),Minnesota Living with Heart Failure QOLスコア(6,12か月後)を評価し,生活習慣(体重管理,減塩,利尿薬投与後の休息,運動,甘草・NSAID・アルコール摂取の回避,インフルエンザワクチン接種)について指導。
治療期間は2年とし,その後は通常の管理を再開。
結果 1年後の死亡率はUC群(18.9%)に比べNT-proBNP群(9.1%)およびCG群(9.1%)で有意に低かった(p=0.03)。3年後の死亡率は75歳以下の患者で,NT-proBNP群(15.5%)がCG群(30.9%)およびUC群(31.3%)より有意に低かった(各p=0.048, p=0.021)。
1年後の死亡+心不全による再入院は75歳以下の患者で,UC群よりNT-proBNP群およびCG群で有意に低く(各p=0.05, p<0.043),3年後は各39%, 51%, 55%とNT-proBNP群で有意に低かった(p=0.044)。
心不全による3年間の入院率はNT-proBNP群(36%),CG群(40%),UC群(34%)で治療群間に有意差はなかったが,75歳以下の患者ではNT-proBNP群で低い傾向にあった(各29%, 40%, 36%)。死亡+心血管イベントによる入院,全入院には治療群間差はなかった。心不全スコア2.0以上の患者の割合はNT-proBNP群およびCG群で有意に低下し(p<0.001),低下はNT-proBNP群で顕著であった(p=0.03)。
★結論★CHFの集中的な管理は通常治療に比べ1年後の死亡率を改善し,NT-proBNP-guided治療は臨床による治療および通常治療より,75歳以下の患者における3年の死亡率および死亡,入院の複合エンドポイントを改善した。
文献
  • [main]
  • Lainchbury JG et al: N-terminal pro-B-type natriuretic peptide-guided treatment for chronic heart failure: results from the BATTLESCARRED (NT-proBNP-assisted treatment to lessen serial cardiac readmissions and death) trial. J Am Coll Cardiol. 2009; 55: 53-60. PubMed

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収載年月2010.06