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German Epidemiological Trial on Ankle Brachial Index

目的 ドイツのプライマリケア施設で実施されている末梢血管疾患(PAD)に関する観察研究。
高齢者における症候性・無症候性PADの有病率の検証,PADの有無および症候性・無症候性PADによる全死亡,主要な血管イベントの長期リスクを比較し,従来の危険因子と比較したPADと転帰との関連を定量化する。
コメント 末梢血管疾患は,すでに心血管病を発症した状態と考えられるので,心筋梗塞,脳卒中のイベント発症リスクが高まっていることは間違いない。診療上必要と思われる情報は,1000人・年あたりのイベント発生数であろう。死亡+重度の血管イベントは,ABIが0.5未満の末梢血管疾患で146.3例/1000人・年であったとしている。(中村中野永井
デザイン 前向きコホート観察研究。
期間 追跡期間は5年。
2001年10月に開始され,現在も継続中。
参加者 6,821例。65歳以上。ドイツ国内の34名の血管医の教育・監督下にある各区域のプライマリケア施設(一般開業医344名)から平均20例を登録。
除外基準:生存の見込み6か月以下。
患者背景:年齢72.5歳,女性58.0%,非喫煙者54.1%,BMI 27.3kg/m²,足関節-上腕血圧係数(ABI)1.03,糖尿病25.4%,高血圧69.2%,脂質代謝異常83.0%,重度の心血管あるいは脳血管イベントの既往16.0%。
調査方法 ベースライン時に簡単な理学的検査,既往歴の評価(心血管イベント,脳血管イベント,下肢末梢血管イベント,間歇性跛行[IC],危険因子[高血圧,糖尿病,脂質代謝異常,喫煙等]),AHA推奨に準じた血圧およびABIの測定を行い,無症候性PAD(安静時ABI<0.90,下肢末梢血管疾患イベント既往なしあるいはICの臨床症状なし),症候性PAD(ABI値不問,IC,下肢末梢血管の血行再建の既往・PADによる切断)に分類。
6か月,1,3,5年後の一般開業医(GP)による症例報告書から,死亡および血管イベント(重度の血管イベント:心血管イベント[心筋梗塞;MI,血行再建術],脳血管イベント[脳卒中,頸動脈血行再建],下肢末梢血管イベント[末梢血行再建,PADによる切断]を確認した。
結果 [PAD,非PAD患者背景]
非・不明PAD群5,392例(79.0%),PAD群1,429例(無症候性836例[12.3%];症候性593例[8.7%]):平均年齢(非・不明PAD群72.2歳,PAD群73.9歳:無症候性73.9歳;症候性73.9歳),女性(59.1%, 54.0%:59.6%;46.2%*),非喫煙率(57.2%, 42.3%:48.2%;33.9%*),BMI(27.3kg/m², 27.4kg/m²:27.7kg/m²;27.1kg/m², p=0.006),ABI(1.08, 0.81:0.79;0.85*[症候性PDA群は末梢血行再建術,PADによる切断を除く431例]),糖尿病(22.6%, 35.8%:34.0%;38.3%, p=0.095),高血圧(65.5%, 83.1%:83.7%;82.1%),脂質異常症(82.3%, 85.7%:84.8%;86.8%),重度の心血管あるいは脳血管イベントの既往(13.1%, 26.9%:21.2%;34.9%*)。
* p≦0.001(症候性PAD vs 無症候性PAD)
[全死亡,主要な血管イベント]
全死亡+重度の血管複合イベント(MI,血行再建術,脳卒中,頸動脈血行再建術,末梢血管血行再建あるいは切断)のリスクはPAD患者で非PAD患者に比べ有意に高く(無症候性PAD:ハザード比1.81;95%信頼区間1.53~2.14,症候性PAD:2.66;2.25~3.15),症候性PAD患者の方が無症候性PAD患者より有意に高かった(1.48;1.21~1.80)。
全死亡のリスクもPAD患者の方が非PAD患者に比べ有意に高かったが(無症候性PAD: 1.66;1.38~2.00,症候性PAD:1.89;1.55~2.30),症候性・無症候性PADの間に有意差はなかった(1.13;0.89~1.43)。
症候性・無症候性PADの比較では,全死亡+MI+脳卒中(1.18;0.92~1.52),心血管イベント(1.20;0.89~1.60),脳血管イベント(1.33;0.80~2.20)のリスクには有意差は認められなかった。
死亡+重度の血管イベントはABI値の低下に伴って上昇し,ABI 1.1~1.5の患者で最も低く(24.3例/1000人・年),<0.5の患者では146.3例/1000人・年であった(調整後リスク4.65倍;3.57~6.05)。調整後モデルでは,死亡+重度の血管イベントと独立して有意に関連する因子(PAD,男性,心血管・脳血管イベントの既往,糖尿病,高齢,喫煙,ホモシステイン高値)のうち,関連性が最も高かったのはPADであった(2.17;1.90~2.48)。
★結論★プライマリケアにおける通常のスクリーニングで診断される無症候性PAD患者の死亡・血管イベントのリスクは高く,死亡のリスクは症候性および無症候性PADで同等で,非PAD患者に比べ有意に高かった。

[主な結果]
  • Diehm C et al: German epidemiological trial on ankle brachial index study group: Mortality and vascular morbidity in older adults with asymptomatic versus symptomatic peripheral artery disease. Circulation. 2009; 120: 2053-61. PubMed

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収載年月2010.04