循環器トライアルデータベース

Naples II
Novel Approaches for Preventing or Limiting Events

目的 スタチン系薬剤治療歴のない待機的PCI例において,手技前24時間以内のatorvastatin単回高用量ローディング投与による周術期心筋梗塞(MI)抑制効果を検討する。
一次エンドポイントはCK-MB*値が正常上限値の3倍以上の上昇単独あるいは胸痛やST-T変化を伴う周術期MI。
* クレアチンキナーゼ心筋アイソザイム
コメント PCIに伴う心筋障害はその後の心血管イベントに関連する。その障害を高用量スタチンで軽減できないか,という疑問に答えるためにまずARMYDAシリーズがデザインされた。ARMYDA試験は安定型狭心症にアトロバスタチン(atorvastatin)40mg/日を7日間投与しPCI後の心筋障害マーカー上昇の抑制を示した。ARMYDA-RECAPTUREはスタチン内服中の安定型狭心症・非ST上昇型心筋梗塞に対し,ARMYDA-ACSはstatin-naiveの非ST上昇型ACSに対してatorvastatin 80mg/40mgをPCI前12時間/2時間前に投与,ともに30日間40mg/日を継続したが,プラセボ群に比して心筋障害マーカー上昇の抑制,主要心イベントの減少が示された。
今回のNaples II trialはatorvastatin (80mg) の急性効果をstatin-naive症例を対象として検討した試験である。ほとんどが安定型狭心症でしかも単回投与であったにも関わらず,また造影所見には差がなかったにも関わらず,周術期心筋梗塞をプラセボ群の約 2/3に抑制した。スタチンの高用量投与はLD-CL低下作用とは別に,抗炎症作用・NO産生作用・白血球接着分子抑制/血小板活性化抑制作用などの多面的作用を介して血管に保護的に働くと言われ,その効果発現も24時間以内に確認されている。Naples IIで高CRP群でのみ心保護効果が認められたことから,プラークの質による効果の差が示唆される。また単回投与での急性効果は,「プラーク安定化」といった質的変化よりもPCIによって引き起こされる局所の血小板活性化や末梢塞栓の予防効果を想定させる。
上記in vitroの効果はatorvastatin以外のスタチンでも数多く報告されているが,臨床試験はatorvastatinのみである。PCIに際しての心保護作用がatorvastatin固有の作用なのかスタチンのクラスエフェクトかも興味深い。なお,現在日本でもACS-PCIへのatorvastatinの介試験; SAMIT (Statin Acute Myocardial Infarction Trial) が進行中である。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,多施設(2施設)。
期間 登録,ランダム化期間は2005年1月~2008年12月。
対象患者 668例。スタチン系薬剤の投与経験がなく,固有冠動脈の新規病変へのPCI施行予定例。
■患者背景(すべて有意差なし):平均年齢(atorvastatin群64歳,対照群65歳),男性(78.7%, 79.7%),無症候性(13.3%, 10.3%),安定狭心症(84.3%, 87.3%),CAD家族歴(30%, 34%),BMI(27.8kg/m², 27.4kg/m²),糖尿病(38.6%, 36.8%),既往:MI(33.4%, 29.4%);CABG(7.1%, 8.1%);PCI(異なる血管,病変)(12.1%, 9.4%),高血圧(72.5%, 74.2%),現在の喫煙例(24%, 20%),β遮断薬(38.5%, 39.1%)。検査値:GFR<60mL/分/1.73m2(36.6%, 42.4%),総コレステロール(211mg/dL, 210mg/dL),LDL-C(126mg/dL, 129mg/dL),HDL-C(両群とも48mg/dL),トリグリセライド(159mg/dL, 151mg/dL)。
CAG背景:1枝病変(両群とも37.9%),2枝病変(35.8%, 35.5%),3枝病変(26.3%, 26.6%),治療血管:左前下行枝(50.1%, 50.5%);左回旋枝(19.5%, 19.4%);右冠動脈(28.8%, 28.5%),病変部位:入口部(10.7%, 11%);近位部(44.2%, 44.4%);中間部(36.9%, 40.4%),治療血管数(両群とも1.1本/患者),治療病変数(両群とも1.3/患者),複雑病変(B2/C)(51.3%, 53.7%),分岐部病変(16.7%, 16.6%),石灰化(23.7%, 26.8%),慢性完全閉塞(18.9%, 17.9%),病変長(18mm, 19mm)。
手技時のCRP高値(>6mg/L)(25.4% vs 29.4%)。
治療法 PCI(ステント植込み)前日に次の2群にランダム化。
atorvastatin群(338例):PCI前24時間以内に80mgを単回投与,対照群(330例):atorvastatin非投与。退院後は両群ともatorvastatin 20mg/日。
CAG成功の定義:最終CAGで残存狭窄が目測<20%。
手技成功の定義:CAG成功および入院中の主要合併症(急性心筋梗塞,CABGあるいはPCI再施行,死亡)非発生。
結果 [手技,CAG結果]
ダイレクトステント:atorvastatin群28.5%,対照群30.3%(p=0.51),アテレクトミー除去術:1.5%, 2.1%(p=0.54)。術後の血管造影所見の異常は4.7%, 6.6%。
狭窄率:atorvastatin群;手技前85%→手技後2%,対照群;84%→ 2%,
参照血管径:3.16→ 3.34mm, 3.23→ 3.37mm,最小血管径:0.51→ 3.36mm, 0.51→ 3.41mm,
TIMI grade:0/1;16%→ 0.3%, 16.5%→ 0%, 2/3;84%→ 99.7%, 83.5%→ 100%。

[一次エンドポイント]
周術期MI(CK-MB値が正常上限値>3倍):atorvastatin群32例(9.5%) vs 対照群52例(15.8%);atorvastatin群の対照群と比べたオッズ比0.56(95%信頼区間0.35~0.89, p=0.014)。
[二次エンドポイント]
トロポニン I 値の正常上限値の>3倍:90例(26.6%) vs 129例(39.1%);0.56(0.40~0.78, p<0.001)。
入院中の主要有害心イベント(死亡,MI,再血行再建術施行):34例(10%) vs 52例(15.7%);0.63(0.39~0.95, p=0.029)。
[サブグループ解析:post-hoc]
atorvastatin群の心保護効果はベースライン時にCRPが高値だった例で大きかった。
・CK-MB値上昇:正常CRP例(atorvastatin群11.1%,対照群15%;p=0.18) vs CRP高値例(4.6%, 16.5%;p=0.016)。
・トロポニンI値上昇:31%, 39.5%(p=0.056) vs 15.6%, 38.1%(p=0.002)。
治療戦略とベースライン時のCRP値には有意な相互作用が認められた(共分散分析モデルによるF=8.12, p=0.004)。
★結論★待機的PCI例において,手技前24時間以内のatorvastatin単回高用量投与は周術期の心筋梗塞を抑制した。
文献
  • [main]
  • Briguori C et al: Novel approaches for preventing or limiting events (Naples) II trial: impact of a single high loading dose of atorvastatin on periprocedural myocardial infarction. J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 2157-63. PubMed

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収載年月2010.05