循環器トライアルデータベース

FAILS
Failure in Left Main Study

目的 非保護左主幹部(ULM)病変に対する薬剤溶出性ステント(DES)植込み後の再狭窄の発生と管理(治療)について後ろ向きに評価する。
一次エンドポイントは主要な有害心イベント(MACE:死亡,心筋梗塞[MI],標的病変血行再建術[TLR*]再施行)。
* ステント部位または隣接5mm以内の部位における著明な再狭窄に対するPCIあるいはCABG
コメント FAILSは薬剤溶出性ステント (DES) で左主幹部病変が治療された患者718例の多施設レジストリーにおいて6か月以降の追跡造影にて造影上の再狭窄を認めた70例の追跡調査報告である。結論としては,左主幹部病変へのDES留置後,造影上の再狭窄を呈する症例の大部分は低侵襲のPCIで治療され,その中期的予後は良好であったとの報告である。
現在,左主幹部病変に対するPCIへの関心が高いためにJ Am Coll Cardiology誌に掲載されたのであろうが,論文の質としては物足りないと言わざるを得ない。以下に問題点を挙げる。
1) 多施設研究と言いながら参加施設数も明記されていない。
2) 母集団である718例の患者背景や追跡データは論文化されていないようであるが,もしそうであれば本論文できっちりと示す必要がある。特に追跡造影が施行されなかった患者の予後は重要である。
3) 造影上の再狭窄患者を対象としているが,追跡造影を施行された451例全例で定量的冠動脈造影評価が施行されたのかどうか不明であり,また定量的冠動脈造影の方法論の記載もない。
4) 追跡期間中のイベント発生率は,イベント発生患者数を総患者数で除して算出されているようであるが,追跡期間が異なるためKaplan-Meier法を用いて算出しなければならない。
5) 追跡期間のばらつきが大きいようであるが,左主幹部病変の再TLRなどはKaplan-Meier曲線を提示して,1年,2年,3年のリスク保有者数を明記する必要がある。
6) repeat PCI症例の再TLRの頻度は初回の左主幹部病変治療例のTLRの頻度よりかなり高く,一概に予後良好とは言えない。また再TLRの危険因子の評価も必要である。
いずれにしても左主幹部病変に対するDES留置後の再狭窄症例の至適なマネージメントについては,まだまだ多くのデータを必要とすると思われる。(木村
デザイン 後ろ向き,多施設。
期間 追跡期間は6か月以上。
DES施行期間は2002年7月~’06年10月。
対象患者 718例。ULMに対するDES植込み例。
除外基準:保護された左主幹部(左冠動脈への動脈・静脈グラフトが1本以上開存しているもの)。
治療法 対象例のうち,手技後に冠動脈造影上でULMに著明な再狭窄(血管径の>50%の狭窄)が認められ,6か月以上追跡している患者を後ろ向きに選定。PCIは常法により施行し,デバイス,手技(分岐部病変へのステント,キッシングバルーン,後拡張),薬物療法(血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬等)の選択は心臓専門医によった。手技後は全例aspirinを無期限,ticlopidine 250mg×2回/日またはclopidogrel 75mgを6~12か月以上投与。手技後6~12か月後に冠動脈造影を行い,再狭窄の場合の治療(薬剤・インターベンション・手術)は虚血症状・徴候,冠動脈解剖学的特性,手術のリスク,PCI施行の可能性,平均余命等に基づき心臓専門医が決定。来院,電話インタビュー,施設内のデータベース,紹介医,自治体の住民登録(municipal civil registries)よりデータを取得し,一次エンドポイント,Academic Research Consortium(ARC)定義によるステント血栓症(ST)の発生を評価した。
結果 ・追跡血管造影実施は62.8%で,うち心筋虚血の症状/徴候による(clinically driven)ものは16.6%,そうでないルーチンが46.2%。ルーチン実施例は有意に若く(74.5歳 vs 64.0歳,p<0.001),EuroSCORE(心臓手術のリスク評価)が低かった(5.4 vs 2.2,p<0.001)。
・ULMにおけるDES後の再狭窄は70例(9.7%)。ルーチン血管造影時の診断が22.1%,急性冠症候群による入院時が30.8%であった。
・再狭窄の治療は,PCI再施行が59例(84.3%)[DES 34例(48.6%),標準型・カッティングバルーン22例(31.4%),回転式アテレクトミー2例(2.9%),ベアメタルステント1例(1.4%)],CABGが7例(10%。ステント再狭窄のみ),薬物治療のみが4例(5.7%)であった。
PCI再施行例は,糖尿病が多く,EFが高い傾向がみられた。再狭窄部位と治療戦略とに有意な関連はなかった。
・一次エンドポイント
入院中のMACEの発生はPCI再施行例の死亡1例(全体の1.4%)のみであり,周術期のMIおよび緊急CABGの必要は生じなかった。
再狭窄の診断から平均25.6か月後,最初のDES施行からは36.7か月)のMACEは18例(25.7%)[PCI再施行 15例(25.4%),CABG 1例(14.3%),薬物治療2例(50.0%)],このうち死亡が4例(5.7%):PCI再施行 3例(5.1%),薬物治療1例(25.0%),MIが2例(2.9%):PCI再施行 2例(3.4%),ULMに対するTLR 15例(21.4%):PCI再施行 13例(22.0%),CABG 1例(14.3%),薬物治療1例(25.0%),ULM以外のPCI 15例(21.4%):PCI再施行14例(23.7%),薬物治療1例(25.0%)。
・STはPCI再施行例においてのみ発生:definite 0例,probable 1例(1.4%),possible 1例(1.4%)。
★結論★ULMに対するDES植込み後の再狭窄は,ほとんどの症例で最小限の侵襲的アプローチにより管理が可能であり,早期,晩期とも結果は良好である。
文献
  • [main]
  • Sheiban I et al: Incidence and management of restenosis after treatment of unprotected left main disease with drug-eluting stents 70 restenotic cases from a cohort of 718 patients: FAILS (failure in left main study). J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 1131-6. PubMed

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収載年月2010.01