循環器トライアルデータベース

PACE
Pacing to Avoid Cardiac Enlargement

目的 正常心機能の徐脈患者における左室機能低下および心臓リモデリング予防において,両室ペーシングが右室心尖部ペーシングより優れているかを検討する。
一次エンドポイントは12か月後のEF,左室収縮末期容積。
コメント 右室ペーシングが左室機能に悪影響を及ぼすことはこの報告以前にも知られていたが,本研究でも確認された。両室ペーシングによって左室機能低下,左室拡大が抑制できるが,房室ブロック例の全例に最初から両室ペーシングを行うことは現実的ではない。一方,洞不全症候群の例に対しては右室ペーシングを極力避けることが治療の原則である。(井上
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(4施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は12か月。
登録期間は2005年3月~2008年7月。
対象患者 177例。EF>45%のペースメーカー植込み適応(洞機能不全,高度房室ブロックに伴う徐脈)例。
除外基準:持続性心房細動,不安定狭心症,急性冠症候群;3か月以内のPCI,CABG施行例など。
■患者背景:平均年齢(BiVペーシング群69歳,RVAペーシング群68歳),男性(53%,56%),血圧(148/73mmHg,143/69mmHg;拡張期血圧p=0.01),心拍数(両群とも59拍/分),QRS間隔(両群とも107msec),dyssynchrony index(14.0msec,12.4msec),ペースメーカー植込みの適応:高度房室ブロック(55%,62%),洞機能不全(45%,38%)。合併疾患:高血圧(70%,62%),糖尿病(26%,30%),冠動脈疾患(21%,23%),心不全(11%,14%)。
治療法 両室ペースメーカー植込み後,両室ペーシング群(BiVペーシング群:89例),右室心尖部ペーシング群(RVAペーシング群:88例)にランダム化。
試験期間中,治療薬,特に神経液性因子に影響する薬,抗不整脈薬の同量維持投与を奨励した。
左室容積および機能の評価はリアルタイム3D心エコー(90%),二方向Simpson法(10%)で行った。
結果 一次エンドポイント解析例はBiVペーシング群87例,RVAペーシング群86例。
RVAペーシング群からBiVペーシング群へのクロスオーバーはなかった。
[一次エンドポイント]
EFはRVAペーシング群では61.5%→ 54.8%,BiVペーシング群では61.9%→ 62.2%(12か月後の絶対差7.4%,p<0.001)。
12か月後のEF<45%例はRVA群で多かった(8例 vs 1例,p=0.02)。
左室収縮末期容積はRVAペーシング群(28.6mL→ 35.7mL)でBiVペーシング群(28.6mL→ 27.6mL)に比べ有意に大きかった(12か月後,p<0.001;ベースライン時からの変化の相対差25%,p<0.001)。
[二次エンドポイント]
・拡張機能不全,ペーシング適応疾患,年齢,性,合併疾患,QRS間隔のいずれのサブグループでも,一次エンドポイントの結果に違いはみられなかった。
・二次エンドポイント:6分間歩行距離は両群とも30m以上延長したが,両群間に差はなかった。
QOLは全尺度項目で群間差はなかった。
心不全による入院も両群間差は認められなかった(RVAペーシング群6例 vs BiV群5例[p=0.74]。EF<45%であったのはRVAペーシング群2例)。
[有害事象]
周術期の死亡例はなく,RVAペーシング群の1例が尿路感染,敗血症のため12か月以内に死亡。
急性冠症候群による入院がRVA群3例,脳卒中による入院がBiV群2例。
★結論★正常左室収縮機能の徐脈患者において,右室心尖部ペーシングは左室リモデリングを悪化させ左室機能を低下させたが,これらは両室ペーシングによって抑制できた。
文献
  • [main]
  • Yu CM et al: Biventricular pacing in patients with bradycardia and normal ejection fraction. N Engl J Med. 2009; 361: 2123-34. PubMed
    Lindsay BD: Deleterious effects of right ventricular pacing. N Engl J Med. 2009; 361: 2183-5. PubMed

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収載年月2010.01