循環器トライアルデータベース

Pre-RELAX-AHF
Relaxin in Acute Heart Failure

目的 急性心不全患者において,リラキシン(relaxin)*の症状緩和,転帰への影響,安全性を検討するphase IIb(用量)試験。
評価項目:呼吸困難の緩和;入院中の心不全の悪化;腎機能障害;最初の入院期間;生存年および退院60日後の生存;心血管死あるいは心不全による再入院あるいは60日後の腎不全;180日後の心血管死。
* 妊娠期に分泌される心血管系の調整を促すペプチドホルモン。血管拡張作用を有し,心臓の圧負荷を軽減,さらに腎臓への血流を増やす。肺動脈楔入圧,NTproBNPを低下,腎血流増加,軽度の心拍出量増加作用を有するため,心不全治療効果が期待される。
コメント リラキシンは体内ホルモンであり,ナトリウム利尿ペプチドやアドレノメジュリンなどと同様に血管拡張作用と利尿作用が期待されるが,本臨床試験は,急性効果(症状の緩和)のみならず入院日数の減少,退院後予後などの臨床転帰の改善効果が示唆された点で注目される。本試験の対象者は,リラキシンの作用が発揮されやすい血圧の維持された心不全患者であったため,近年注目されている拡張性心不全例が多く登録された可能性が高く,リラキシンは本病態に有効な薬剤として,今後期待しうる成績が得られたといえよう。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(8か国54施設),modified intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は122日。
実施期間は2007年12月~2008年8月。
対象患者 234例。18歳以上;急性心不全発症から16時間以内;血圧正常あるいは高値(収縮期血圧[SBP]>125mmHg)例;腎機能障害(推算糸球体濾過量が30~75mL/分/1.73m²)。
急性心不全の定義:安静時または軽度の労作時の呼吸困難,胸部X線検査での肺うっ血,ナトリウム利尿ペプチド上昇(BNP≧350pg/mLあるいはNTproBNP≧1400pg/mL)。
除外基準:強心薬静注例あるいは血管拡張薬(SBP>150mmHgの場合の硝酸薬0.1mg/kg/時静注を除く)静注例;発熱例;重症肺疾患;重大な弁膜症;45日以内の急性冠症候群;トロポニン値>標準上限の3倍。
■患者背景:平均年齢70.3歳,男性56%,SBP 147mmHg。
国別人数(ロシア75例,イスラエル58例,ポーランド37例,イタリア,ハンガリー各15例,ルーマニア14例,米国12例,ベルギー8例)。
治療法 furosemide>40mg静注(あるいは代替ループ系利尿薬同用量)後,下記5群(4用量群,プラセボ群)にランダム化。
relaxin 10μg/kg/日群(40例),30μg/kg/日群(43例),100μg/kg/日群(39例),250μg/kg/日群(50例),プラセボ群(62例)。
投与は48時間静注とした。
結果 有効性の解析例は229例(10μg/kg/日群40例,30μg/kg/日群42例,100μg/kg/日群37例,250μg/kg/日群49例,プラセボ群61例)。
安全性の解析例は230例(40例,42例,38例,49例,61例)。
[投与関連]
発症からランダム化までの時間は平均8.4時間(中央値6.6時間)で,ランダム化から静注までの所要時間は1時間。
平均静注時間は10μg/kg/日群39時間,30μg/kg/日群41時間,100μg/kg/日群41時間,250μg/kg/日群42時間,プラセボ群44時間。
[症状]
・呼吸困難:リッカート尺度(Likert scale)を用いた6時間,12時間,24時間の評価による中等度あるいは著明改善例は,30μg/kg/日群(17例[40%])はプラセボ群(14例[23%])より多かった(p=0.044)。
14日後の100mm visual analogue scale(VAS。痛みの評価尺度の一つで,10cm(100mm)の線に最高の痛みを100mm,痛みなしを0として,その線上に痛みの程度を示す)は,30μg/kg/日群8214mm×時間(曲線下面積) vs 4622mm×時間でプラセボ群より改善した(p=0.053)。
・5日後の心不全悪化:12% vs 21%(p=0.29)。
・5日後の浮腫なし:64% vs 48%,ラ音なし:76% vs 67%,頸静脈圧<6cm:79% vs 67%,ループ系利尿薬静注量:100mg vs 170mg。14日後の体重変化:-3.0kg vs -2.0kg。
・入院期間:30μg/kg/日群10.2日 vs プラセボ群12.0日,60日までの院外生存日数は47.9日 vs 44.2日。
[転帰,有害事象]
投与中止となった低血圧症あるいはSBPの低下は36例。うちSBP低下は25例でrelaxin群の方が多かった。
60日後の心血管死,再入院:30μg/kg/日群2.6% vs プラセボ群17.2%;ハザード比0.13(0.02~1.03,p=0.053)。全死亡,再入院は7.6% vs 18.6%:0.36(0.10~1.29,p=0.12)。180日後の心血管死は0% vs 14.3%(p=0.046)。
死亡例は60日後が15例,180日後が20例。心血管死12例,60日後の再入院43例,うち15例は心不全により,腎不全による入院はなかった。
重篤な有害イベントは両群間差はなかった。
★考察★血圧正常あるいは高値の急性心不全患者において,relaxinは呼吸困難を緩和し,その他の転帰も改善し,安全面も許容できるものであった。
ClinicalTrials. gov No: NCT00520806
文献
  • [main]
  • Teerlink JR et al: Relaxin for the treatment of patients with acute heart failure (Pre-RELAX-AHF): a multicentre, randomised, placebo-controlled, parallel-group, dose-finding phase IIb study. Lancet. 2009; 373: 1429-39. PubMed
    Hernandez AF and Granger CB: Advancing care for acute heart failure--no time to relax. Lancet. 2009; 373: 1401-2. PubMed

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収載年月2009.08