循環器トライアルデータベース

ACTIVE A
Atrial Fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for Prevention of Vascular Events A

目的 ビタミンK拮抗薬(warfarin)不適応で脳卒中リスクの高い心房細動患者において,aspirinへのclopidogrel追加投与の有効性をaspirinと比較する。
一次エンドポイントは主要血管イベント(脳卒中,心筋梗塞[MI],血管死)。

ACTIVE試験は心房細動患者におけるclopidogrel+aspirinの脳卒中,その他の血管イベント抑制効果を検討するもので,ACTIVE Aの他に,ACTIVE W(抗凝固療法[warfarin]は抗血小板療法[clopidogrel+aspirin]より心血管イベント抑制効果が大:2006年発表),ACTIVE I(ARB irbesartanによる降圧の効果を検討)から成る(Am Heart J. 2006; 151: 1187-93.)。
コメント ■コメント 井上  博
■コメント 後藤 信哉

ACTIVE Wにおいて心房細動例の血栓塞栓症予防にclopidogrelとaspirinの併用はwarfarinに劣ることが示されている。両薬剤の併用はaspirin単独に比べて心血管イベント,特に脳梗塞予防に勝っていたが,その反面,重大な出血イベントを増大させるので,臨床的には積極的に推奨することはできない。(井上


加齢とともに心房細動の有病率は増加する。心房細動を発症する症例は動脈硬化のリスク因子を有する症例に多い。多くのランダム化比較試験においてワルファリン(warfarin)による脳梗塞発症予防効果はアスピリン(aspirin)にはるかに優ることが示されているが,強力な抗凝固薬であるwarfarinの使用に躊躇している医師も多い現状にある。さらには純粋な心房細動の症例に対する臨床試験の結果と,臨床医が対象としている複合疾患の重畳した心房細動症例の治療が同一でよいか否かについても疑問があった。実際,薬剤溶出性ステントを留置され,抗血小板併用療法を受けている心房細動症例に,warfarinを追加するか否かについては躊躇する医師が多いのが実態であろう。aspirinにクロピドグレル(clopidogrel)を追加することによりwarfarin並の効果は得られないことが既にACTIVE-Wにおいて示されていた。今回のACTIVE-Aではaspirin単独よりも心血管イベント発症予防効果は若干併用療法が優ることを示した。本試験は全ての重篤な心血管イベントがclopidogrelの追加により影響を受けるか否かが検証され,clopidogrelの追加により影響を受けないとの仮説が否定された。一般の臨床医にとっては,aspirin単独よりはaspirinにclopidogrelを足した方が心房細動症例の心血管イベントは減少するとも評価できないわけではない。しかし,本研究の医療の科学としての目的と結果は上述の通りであるとしても,臨床医が試験結果を臨床応用する場合には試験内容を注意深く読む必要がある。たとえば,本試験では観察期間内にaspirin単独群では93例,clopidogrel追加例では70例の致死性脳卒中イベントがあり,clopidogrelは23例分の心血管死亡を救ったと読める。また,何らかの心血管イベントによる死亡の総数はclopidogrel追加群で600例,aspirin単独群にて599例と全く差がない。しかし,aspirin服用群では27例であった致死性の出血イベントはクロピドグレルの追加により42例に増加している。心血管死亡には差がなく,脳卒中による死亡は23例減少させるものの致死性出血性合併症が15例増加する治療手段を患者集団に対して一般的に推奨することは難しい。ランダム化比較試験は,各治療法を1:1にて比較するわけではあるが,臨床医はこれらの試験を参考にしつつもその結果に縛られることなく,個別の患者のメリットの最大化を目指しつつ十分なインフォームドコンセントのもとに予防介入戦略を考えるべきである。(後藤
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(33か国580施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は3.6年(中央値)。
ランダム化期間は2003年6月~2006年5月,追跡終了は2008年11月。
対象患者 7554例。ビタミンK拮抗薬(warfarin)不適例(warfarin適応例を登録したACTIVE Wの参加者のうち不適と思われるもの)。登録時に心房細動(AF)あるいは6か月以内に2回以上のAF発作を起こしたもの;脳卒中の危険因子(75歳以上;高血圧;脳卒中,一過性脳虚血発作[TIA]あるいは末梢塞栓症の既往;EF<45%;末梢血管疾患;55~74歳で糖尿病あるいは冠動脈疾患)のうち1つ以上を合併しているもの。
除外基準:warfarin, clopidogrelによる治療が必要なもの,出血性素因(6か月以内の消化性潰瘍;脳内出血の既往;重大な血小板減少[血小板数<5×104/μL];アルコール依存症)。
■患者背景:平均年齢(clopidogrel+aspirin群70.9歳,aspirin群71.1歳),男性(58.6%, 57.8%),血圧(136.3/80.9mmHg, 136.2/80.9mmHg),心拍数(75.2拍/分,74.8拍/分),BMI(両群とも28.2kg/m²),CHADS2スコア(両群とも2.0),既往:高血圧(85.3%, 84.9%);脳卒中/TIA(13.2%, 13.0%);心筋梗塞(13.9%, 14.6%);CABG(5.2%, 5.6%),糖尿病(19.5%, 19.2%),うっ血性心不全(32.9%, 33.2%)。
AF:永続性(64.0%, 63.7%);発作性(22.4%, 21.8%);持続性(13.5%, 14.5%),罹病期間:<6か月(25.4%, 25.2%);6か月~2年(20.8%, 22.2%);>2年(53.8%, 52.6%)。治療状況:warfarin(8.3%, 8.8%),aspirin(83.0%, 82.4%),clopidogrel(1.9%, 2.1%),抗不整脈薬(22.5%, 23.5%)。
試験参加理由:出血リスク(INRモニタリング不能,転倒,出血の既往など)(23.5%, 23.0%),医師がwararin不適と判断(両群とも50.4%),患者の拒否(26.1%, 26.6%)。
治療法 clopidogrel+aspirin群(3772例):clopidogrelは75mg/日,aspirin群(3782例)。
aspirin用量は 75~100mg/日投与を推奨。
結果 投与中止率はclopidogrel+aspirin群:1年後16.3%→ 4年後39.4%,aspirin群:15.2%→ 37.1%。aspirinはランダム化時は全例投与されていたが,1年後は92.9%,4年後は81.1%。試験薬投与中止後に最も多く投与された抗血栓薬はwarfarin(clopidogrel+aspirin群29.4%,aspirin群31.0%),aspirin単独投与(25.1%, 23.6%)。
一次エンドポイント(脳卒中,MI,末梢塞栓症,血管死)
clopidogrel+aspirin群832例(6.8%/年)vs aspirin群924例(7.6%/年):相対リスク0.89;95%信頼区間0.81~0.98(p=0.01)。各イベントは脳卒中(clopidogrel+aspirin群296例[2.4%]年 vs aspirin群408例[3.3%/年]:0.72;0.62~0.83, p<0.001),MI(90例[0.7%/年] vs 115例[0.9%/年]:0.78;0.59~1.03, p=0.08),血管死(600例[4.7%/年] vs 599例[4.7%/年]:1.00;0.89~1.12, p=0.97),末梢塞栓症(54例[0.4%/年] vs 56例[0.4%/年]:0.96;0.66~1.40, p=0.84)。
脳卒中:脳梗塞(1.9%/年 vs 2.8%/年:0.68;0.57~0.80, p<0.001),脳出血(0.2%/年 vs 0.2%/年:1.37;0.79~2.37, p<0.001)。介護の必要なもの/致死的(1.6%/年 vs 2.1%/年:0.74;0.62~0.89, p=0.001),介護不要のもの(0.9%/年 vs 1.2%/年:0.70;0.54~0.89, p=0.004)。
重大な出血:251例(2.0%/年) vs 162例(1.3%/年):1.57;1.29~1.92(p<0.001)。
★結論★warfarin投与が適しない心房細動患者では,aspirinにclopidogrelを併用すると主要血管イベント,特に脳卒中を抑制できるが,重大な出血リスクが増大する。
ClinicalTrials. gov No: NCT00249873
文献
  • [main]
  • The ACTIVE investigators: Effect of clopidogrel added to aspirin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med. 2009; 360: 2066-78. PubMed
    Alan S: The ACTIVE pursuit of stroke prevention in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med. 2009; 360: 2127-9. PubMed
  • ACTIVE試験のプロトコール(The ACTIVE steering committee on behalf of the ACTIVE investigators: Rationale and design of ACTIVE: the atrial fibrillation clopidogrel trial with irbesartan for prevention of vascular events. Am Heart J. 2006; 151: 1187-93. PubMed
  • [substudy]
  • ACS,心房細動患者において,clopidogrelの有効性にCYP2C19機能喪失型対立遺伝子は関連しない。
    ACTIVE Aと統合して解析:CYP2C19の主要な対立遺伝子を規定する 3 つのSNP(*2,*3,*17)について,遺伝子型を同定した(ACS 5,059例,心房細動[AF]1,156例)。
    ACS:代謝能の表現型にかかわらず,clopidogrel群はプラセボ群より第1一次エンドポイントを有意に抑制した(異質性のp=0.12)。
    clopidogrel群の有効性は機能喪失型対立遺伝子(*2,*3)のヘテロ接合またはホモ接合の保有例と非保有例とでは同程度であった(保有例:clopidogrel群8.0% vs プラセボ群11.6%:ハザード比0.69;95%信頼区間0.49~0.98,非保有例:9.5% vs 13.0%:0.72;0.59~0.87)。
    一方,機能獲得型対立遺伝子(*17)の保有例では非保有例に比べ,clopidogrel群のより大きな有効性がみられた(保有例:7.7% vs 13.0%:0.55;0.42~0.73,非保有例:10.0% vs 12.2%:0.85;0.68~1.05;交互作用のp=0.02)。
    出血に関してはclopidogrel群の遺伝子型による差はみられなかった。
    AF:イベント抑制と出血のいずれも,治療群と,代謝能の表現型,機能喪失型あるいは機能獲得型対立遺伝子の保有状況とに交互作用は認められなかった:N Engl J Med. 2010; 363: 1704-14. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2009.04
更新年月2010.11