循環器トライアルデータベース

TIME-CHF
Trial of Intensified vs Standard Medical Therapy in Elderly Patients with Congestive Heart Failure

目的 高齢の収縮期機能不全患者において,N末端脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-BNP)ガイド下の治療法が症状に基づく標準治療より優れているかを比較検討する。
一次エンドポイントは,18か月後の入院回避率,QOL。
コメント BNPガイドの慢性心不全治療はその有用性が指摘されてきたが,これまでは,小規模の臨床試験しか実施されていなかった。本試験は,本格的なRCTであり,それだけにその結果が期待されていた。一次エンドポイントは,BNPガイド治療群と標準治療群の間に有意差を認めなかったが,心不全による入院はBNP ガイド治療群で有意に少なく,60~74歳の若年層に限れば,生命予後も心不全入院も標準治療群より有意に優れている成績が得られた。しかし,75歳以上では,BNP ガイドのメリットがないばかりか,かえって副作用が多く高齢者には有用性が示されなかった。これは,NT-Pro BNP値が正常の2倍以上であれば,一律にACE 阻害薬/ARBまたはβ遮断薬を増量するプロトコールになっていたからであろうと思われる。高齢者には,腎機能障害が多く,拡張不全も混在していたと想像されるので,若年層と病態が異なっている可能性も否定できない。BNPガイドの治療は,個々の患者の病態に応じてきめ細かい治療をするのが本来のあり方であるので,一律にプロトコールを決める臨床試験ではその成績も異なる可能性が否定できない。したがって,本試験の結果はBNPガイド治療の有用性を否定する内容とは考えにくく,今後BNP ガイドの有用性を示すサブグループを対象にした検証がなされるものと考えられる。(
デザイン 無作為割付け,多施設(スイス,ドイツの15外来施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は18か月。
登録期間は2003年1月~2008年6月。
対象患者 499例。60歳以上の収縮性心不全(EF≦45%),呼吸困難を伴うNYHA≧II度の治療例,1年以内の心不全による入院歴,NT- BNPレベル:75歳未満≧400 pg/mL,75歳以上≧800pg/mL。
除外基準:心不全が主因でない呼吸困難,手術を要する弁膜症,10日以内の急性冠症候群,Canadian Cardiovascular Society(CCS)分類>II度の狭心症,1か月以内の血行再建術,BMI>35kg/m²,血清クレアチニン>2.49 mg/dL,非血管疾患により余命3年以下のものなど。
■患者背景:平均年齢(NT-BNPガイド群76歳,症状ガイド群77歳),女性(31.9%, 37.1%),BMI (25.4kg/m², 25.3kg/m²),NYHA≧III度(74.1%, 74.6%),心房細動(32.7%, 31.5%),うっ血性心不全の主因;冠動脈疾患(55.0%, 60.1%),高血圧性心疾患(23.9%, 19.0%),拡張型心筋症(18.3%, 16.9%),EF(29.8%, 29.7 %),NT-BNP(中央値:3998 pg/mL, 4657 pg/mL),クレアチニン(1.32 mg/dL, 1.33 mg/dL)。
治療状況:ACE阻害薬,ARB(両群とも94.8%),β遮断薬(76.1%, 81.0%),鉱質(ミネラル)コルチコイド受容体拮抗薬(40.6%, 40.3%),ループ利尿薬(92.4%, 94.4%:用量[中央値:60mg, 80mg;p=0.06]),硝酸薬(28.3%, 29.0%)。
治療法 NT-BNPガイド群(251例):NT-BNPレベルが正常上限値の2倍未満(75歳未満<400 pg/mL,75歳以上<800 pg/mL),NYHA≦II度になるように治療。
症状ガイド群(248例):呼吸困難の症状が軽減(NYH≦II度)するように治療。
60~74歳(若齢)群(210例)と75歳以上(高齢)群(289例)に層別化。
薬物治療はESC,ACC/AHAのガイドラインに基づき,ACE阻害薬,ARB,β遮断薬はガイドライン推奨薬剤のみの適量投与を勧め,利尿薬は必要に応じて投与した。担当医の判断で最初の6か月間でspironolactoneなどの追加投与,増量投与するものとした。
QOLはMinnesota Living with Heart Failure questionnaire(ミネソタ心不全QOL質問票;低スコアほど QOL は良好),Short Form健康調査票(SF-12:高スコアほどQOLは良好),Duke Activity Status Index(Duke 活動状態指標:高スコアほどQOLは良好)で評価。
結果 [症状軽減のための増量投与,併用投与]
増量を勧められたのは,症状ガイド群:ベースライン時77%,1か月後61%,3か月後53%,6か月後52%,NT-BNPガイド群:86%,95%,91%,90%でNT-BNPガイド群の方が多かった(両群間差:各追跡期間p<0.001,ベースライン時p=0.03)。年齢による違いはなかったが,β遮断薬の増量は高齢群の方が少なかった(p=0.01)。spironolactone,eplerenoneの併用投与はNT-BNPガイド群72%,症状ガイド群63%。この6か月間で両群とも有意に呼吸困難が改善,BNP値は増加したが,両群間に有意差はなかった。
[一次エンドポイント]
入院回避率
NT-BNPガイド群41%,症状ガイド群40%で両群間に有意差は認められなかった(ハザード比[HR]0.91;95%信頼区間0.72~1.14,p=0.39)。
QOL
両群とも12か月後にベースライン時と比べ有意に改善した(p<0.001)が,両群間に有意差は認められなかった:
[全生存率]
両群間に有意差はなかった(NT-BNPガイド群84%,症状ガイド群78%:HR 0.68;0.45~1.02,p=0.06)が,心不全入院回避率(二次エンドポイント)はNT-BNPガイド群(72%)のほうが症状ガイド群(62%)よりも有意に高かった(HR 0.68;0.50~0.92,p=0.01)。
[年齢別結果]
若齢群ではNT-BNPガイド群で症状ガイド群よりも転帰が有意に改善したが,高齢群では両群間に有意差はなかった。
若齢群:入院非発生生存率(HR 0.70;0.49~1.01,p=0.05),全生存率(HR0.41;0.19~0.87,p=0.02),心不全入院回避率(HR0.42;0.24~0.75,p=0.002)。
高齢群:入院回避率(HR 1.10;0.82~1.47,p=0.54),全生存率(HR 0.88;0.54~1.44,p=0.61),心不全入院回避率(HR 0.87;0.60~1.26,p=0.45)。
★結論★心不全患者において,NT-BNPガイド下治療の症状ガイド下治療を凌ぐ転帰およびQOLの改善は認められなかった。
International Standard Randomised Controlled Trial Number (ISRCTN)org. Identifier: ISRCTN43596477
文献
  • [main]
  • Pfisterer M et al for the TIME-CHF investigators: BNP-guided vs symptom-guided heart failure therapy: the trial of intensified vs standard medical therapy in elderly patients with congestive heart failure (TIME-CHF) randomized trial. JAMA. 2009; 301: 383-92. PubMed
    Piña IL, and O'Connor C: BNP-guided therapy for heart failure.JAMA. 2009; 301: 432-4. PubMed

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収載年月2009.06