循環器トライアルデータベース

CACTUS
Coronary Bifurcations: Application of Crushing Technique Using Sirolimus-Eluting Stents

目的 新規 true分岐部(本幹,側枝入口部両方に50%以上の狭窄を有する)病変に対するsirolimus溶出ステント(SES)留置戦略として,クラッシュステント法と本幹のみへのステント+暫定的側枝Tステント(provisional stenting)とを比較する。最終kissing balloon法による拡張*を必須とした。
血管造影の一次エンドポイントは6か月後のセグメント内再狭窄。
臨床の一次エンドポイントは6か月,12か月後の主要有害心イベント(MACE:心臓死,心筋梗塞[MI],標的血管血行再建術[TVR])。
* プラークシフトを防ぐため両枝へのバルーンによる同時拡張を行う。
コメント 本データベースには珍しいプラクティカルな話題である。分岐部病変に対するPCIはDESの時代になっても議論の多い命題の一つだが,CACTUS studyはcrush stentingとprovisional T-stentingとを比較した多施設無作為化試験である。
本幹と枝両方に動脈硬化性病変を有する真の分岐部病変では,本幹へのステント留置による枝方向へのプラークシフトによりさらに枝入口部の狭窄が増悪する。かといって枝方向へ追加拡張すると本幹ステントの変形・狭小化をきたす。また側枝にステントを留置した場合でも,分岐角によってはカバーされない病変が残ったり,逆に本幹にステントが突出したりするため技術的にも難しい。両枝へのステント留置法にはcrush stenting・T-stenting の他に,V-stenting,kissing-stenting,culottes techniqueやY-stenting,skirt techniqueなどさまざまな方法が考案されているが,最も単純な方法がT-stentingであり,複雑な手法の代表格がcrush stentingである。さらにprovisional T-stentingは必要な症例のみT-stenting を行う,つまり側枝へのバルーン単独治療(kissing balloon)を前提とした,よりシンプルな治療法である。
CACTUS studyからの重要なメッセージは2つある。provisional群で側枝へのステント留置が必要だったのは1/3の症例のみであったことと,両治療群でのエンドポイントに差がなかったことである。crush stentingは側枝へのre-wiringが難しく,手技時間・透視時間が長くなり,造影剤やコストも割高となる。final kissing balloonを励行することで以前の成績より改善してはいるものの,労多くして益は少ないようである。
pressure wireを用いた検討では,側枝の狭窄度は過大評価されるという指摘があるという。解剖学的には有意に見えても機能的には血行再建を要する病変は少ないということである。本トライアルでのTLRの基準は明確にされていないが,provisional群の晩期損失径は予想以上に少なく十分にacceptableと考えられる。
DES 時代の分岐部戦略は“simple is better”,余計なことはしないほうが良さそうだ。ただし,本試験には左冠動脈主幹部の分岐部病変(前下行枝と回旋枝)は含まれておらず,この最も重要な分岐部病変に関しては別に検討する必要がある。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,多施設(イタリア,ドイツの12施設)。
期間 追跡期間は12か月。
登録期間は2004年8月~2007年6月。
対象患者 350例。18歳以上の男性,妊娠していない女性で,安定/不安定狭心症(Braunwald分類class B,C I~II),無症候性虚血の記録があるもの。
本幹,側枝とも>TIMI grade I,目視で最大病変長≦28mm,参照血管径:本幹2.5~3.5mm,側枝2.25~3.5mm。
除外基準:手技前24時間以内の心筋梗塞(総クレアチンキナーゼ(CK)>正常値の2倍,CK-MB>正常値の3倍),グラフトによりプロテクトされていない左主幹部病変,血管造影で確認できる標的病変内の血栓,慢性完全閉塞など。
■患者背景:平均年齢(クラッシュステント群65歳,provisional ステント群67歳),男性(80%,76%),糖尿病(23.7%,22.0%),高コレステロール血症(63.8%,70.5%),高血圧(70.6%,79.8%;p=0.05),喫煙例(20.3%,16.8%),EF(55%,57%;p=0.08),既往:MI(44.6%,35.3%;p=0.07);PCI(31.1%,26.6%);CABG(4.5%,5.8%),冠動脈疾患家族歴(46.9%,35.8%),不安定狭心症(44.0%,47.4%),安定狭心症(31.1%,36.4%),無症候性虚血(17.5%,13.3%;p=0.08)。
[true分岐部病変背景(328病変。治療した分岐部病変の94%)]
Medina分類:type 1.1.1(本幹近位部. 遠位部. 側枝に病変あり)75%,type 1.0.1(本幹近位部に病変あり. 遠位部に病変なし. 側枝に病変あり)3%,type 0.1.1(本幹近位部に病変なし. 遠位部に病変あり. 側枝に病変あり)16%<Medina分類と結果>
・位置:左前下行枝/対角枝(74%,70%),左回旋枝/鈍角枝(19%,25%),右冠動脈遠位部/後下行枝(7%,5%)。
治療法 クラッシュステント群(177例):本幹,側枝に前拡張後,sirolimus溶出ステント(SES)を植込んだ。この際,クラッシュステント法(図参照*を用いた。kissing balloon techniqueにより後拡張を行った。
* 本幹側をより近位に配置するように両枝にステントを導入し,最初に側枝へのステントを拡張。ワイヤーとバルーンを抜去して本幹側へのステントを拡張し,本幹へ突出した側枝ステントを平板に(クラッシュ)する。次に重なったストラットを通して側枝方向のワイヤーを通し拡張。最後にkissing balloonで仕上げる(解説:中野)。

provisional ステント群(173例):バルーン前拡張後に本幹にSESを植込みkissing balloonで仕上げる。その際,側枝には次のうち1つ以上が該当する場合のみTステントの植込みを可とした。残存狭窄率≧50%,type B以上の冠動脈解離,TIMI grade≦2。
両群とも6か月後に追跡血管造影を実施した。
全例にaspirin,ticlopidine/clopidogrelを前投与。clopidogrelを前投与しない場合は手技前に300mgを投与。手技中に未分画heparinを活性化凝固時間が250~300秒を維持するよう静注。GP IIb/IIIa受容体拮抗薬の投与は担当医に委ねた。退院後,aspirinを無期限,ticlopidine/clopidogrelを6か月以上投与した。
結果 [手技背景]
provisional ステント群の側枝への追加ステントを必要としたのは病変の31%だった。
手技成功率はクラッシュステント群90.4%,provisional ステント群91.3%。造影上の成功率は98.9%, 97.7%。
前拡張(クラッシュステント群:本幹89.8%;側枝89.8%,provisional ステント群:90.8%;90.8%),IVUS(3.4%;2.8%, 4.1%;2.3%),ステント数/1病変(1.23;1.02, 1.14;1.07),総ステント長(23.8mm*;17.9mm, 22.2mm*;18.1mm;* 本幹の両群比較p<0.05 ),最大拡張圧(15.7atm;13.4atm*, 16.4atm;12.0atm** 側枝の両群比較p<0.05),final kissing balloon(92.1%, 90.2%)。
[血管造影背景の変化。追跡血管造影率は両群とも86%]
・クラッシュステント群:参照血管径(本幹:ベースライン時2.85mm→手技後2.99mm→ 6か月後2.98mm,側枝:2.30mm→ 2.43mm→ 2.37mm),最小血管径(本幹:0.90mm→ 2.71mm→ 2.24mm,側枝:0.84mm→ 1.94mm→ 1.66mm),狭窄率(本幹:68%→ 12%→ 25%,側枝:63%→ 16%→ 30%)。
急性期獲得径:本幹1.47mm,側枝1.41mm,晩期損失径:0.14mm, 0.29mm。
・provisional ステント群:参照血管径(本幹:ベースライン時2.74mm*→手技後2.87mm*→ 6か月後2.91mm,側枝:2.16mm*→ 2.24mm*→ 2.36mm),最小血管径(本幹:0.83mm→ 2.58mm*→ 2.19mm,側枝:0.83mm→ 1.65mm*→ 1.52mm*),狭窄率(本幹:69%→ 13%→ 25%,側枝:61%→ 27%→ 31%)。
急性期獲得径:1.1mm, 0.81mm*),晩期損失径:0.06mm, 0.13mm。
* p<0.05 for 両群比較
[一次エンドポイント]
6か月後の再狭窄率:クラッシュステント群(本幹4.6%,側枝13.2%)とprovisional ステント群(6.7%, 14.7%)間に差はなかった。
6か月後のMACE:両群間差はみられなかった(クラッシュステント群15.8%,provisional ステント群15.0%)。心臓死は両群とも0例,MIは10.7%, 8.6%,TVRは7.9%(標的病変再建術[TLR]7.3%を含む),7.5%(6.3%を含む)。
[その他の転帰]
kissing balloon非実施例はクラッシュステント群14例,provisional ステント群17例で,実施例に比べ再狭窄率,MI,TLR,ステント血栓症が増加した。
ステント血栓症はARC定義のdefiniteのみでクラッシュステント群1.7%,provisional ステント群1.1%。
★結論★true分岐部病変において,側枝へのステント留置を必要とする症例は1/3程度と考えられる。両枝へのステント留置の重大な問題が惹起されることはなく,クラッシュステントとprovisional ステントの血管造影,臨床転帰は同等に有効であった。
文献
  • [main]
  • Colombo A et al: Randomized study of the crush technique versus provisional side-branch stenting in true coronary bifurcations: the CACTUS (coronary bifurcations: application of the crushing technique using sirolimus-eluting stents) study. Circulation. 2009; 119: 71-8. PubMed

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収載年月2009.05